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#0151『担え銃』チャールズ・チャップリン監督 1918年アメリカ

担え銃
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1918年10月に封切られたファースト・ナショナル社第三作。『犬の生活』と本作の間に、『公債(THE BONDS)』という戦時自由公債の宣伝用短編がありますが、本格的な作品としては6ヶ月ぶり。

第一次大戦最後の年に戦争を茶化した映画を撮ることに、チャップリンの周辺は危険を感じており、セシル・B・デミルなどが反対したと自伝には記されています。しかし、チャップリンはこのアイデアに夢中だったらしく、最初は三部構成の五巻もの長編として企画されていました。

軍に入隊したチャーリーは、基本の行進も満足にできず苦労するが、何とか前線に参加することができるようになった。塹壕での共同生活を経て、ついに敵塹壕の攻撃命令が下される。そこでチャーリーは、たったひとりで13人の敵兵を捕らえるという武功を立てる。その後、敵地深く潜入し、捕虜を助け、民間人の娘エドナや同僚シドニーらと大活躍、最後は敵のカイザーを生け捕りにして連合軍陣地に凱旋を果たし、軍のヒーローとして祝福される。。。と思ったら・・・。

一見して、感じたのが、もはや笑いに対するドタバタの占める割合って、半分以下になったんだなぁということでした。チャップリンの身体芸はもとより素晴しいのですが、軍隊の中で一人だけ銃のとり回しも行進もできないチャップリンの姿は、その存在のずれ自体で笑える。塹壕生活のあれこれなども、細かい個人芸はちりばめられているものの、水浸しの中で眠る兵隊たちの様子や家族からの便りに一喜一憂する姿など、悲惨な状況なんだけどおかしみがある。その辺は、前作の『犬の生活』からさらに一歩進んだんだなという感触を受けました。

今回、初めてリアルな戦争を扱った作品となったのですが、敵のドイツ軍の描き方やカイザー拉致と言うストーリーにしても、はっきりと戦意高揚の意図が読み取れます。チャップリンは、その後『チャップリンの独裁者』を撮ったことから、ナチスと戦うロシアを支援する演説を行うことになり、それがきっかけとなっていわゆる赤狩り、国外追放という道をたどるわけですが、思えばこの作品がその源だったのかもしれません。

チャップリン自身、完成した『担え銃』には非常に懐疑的だったそうで、試写を見た親友ダグラス・フェアバンクスが太鼓判を押すまで、この傑作をボツにしようか悩んでいたのだそうです。今でも『担え銃』が見れるのは、フェアバンクスが爆笑してくれたおかげと言うことですね。★★★★☆

<スタッフ&キャスト>
監督:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン
   シドニー・チャップリン
   エドナ・パーヴィアンス


参考文献:チャールズ・チャップリン著「チャップリン自伝~栄光の日々」

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#0144『犬の生活』チャールズ・チャップリン監督 1918年アメリカ

犬の生活
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ネタバレを含みます。ご注意ください。

今回は新作記事のアップです。

12本の作品を発表し、チャップリンはミューチュアル社との契約を終えます。マネジャーを勤めていた兄シドニーは、ファースト・ナショナル社と”二巻もの8本で120万ドル”というこれまた破格の契約を締結。その知らせを聞いたときに、チャップリンは風呂上りで腰にタオルを巻いたまま、部屋の中を行ったりきたりしながらバイオリンを弾いていたそうです。

チャップリンは、作品作りの自由を手に入れるため、ハリウッドに、現像所・編集室・撮影所まで完備した自分のための撮影所、チャップリン・スタジオを建設します。そして、このファースト・ナショナル社において、『犬の生活』や『担え銃』、そしてあの『キッド』などの名作が誕生したのでした。これ以降の作品は"短編”といっても十分長編並みのクオリティの作品ばかりになりますので、一作品ずつ記事をアップして行きたいと思います。

『犬の生活』は、1918年4月9日に発表された、チャップリンのファースト・ナショナル社初作品。自伝では、「この作品ではじめて喜劇を建築構造的に考えるようになった」と語っており、チャップリンのフィルモグラフィの中でも重要な位置を占める作品。

キーストンをはじめ、これまでのスラップスティック・コメディは、ギャグが全てであり最優先。役者の個性もシナリオもたいして重視されていなかったんですね。シナリオなどと言うものは無くて、面白いギャグを思いついたらまず撮る。そこから、次々ギャグを連想して撮りまくり、最後を追いかけっこにして適当にストーリーをつける。キーストンでチャップリンのデビュー作を監督したヘンリー・レアマンなどは、「コメディは追いかけっこがすべてだ!」と言って聞かなかったそうです。

こういう映画作法に、チャップリンははじめから反発していました。チャップリンの”コメディ改革”のツボは、1.ギャグの切れと質を劇的に向上させたこと、2.コメディに計算されたシナリオを持ち込んだこと、3.笑いに涙を取り入れたこと。その他にもたくさんあるとは思いますが、この3つがやはりすごい。ミューチュアル時代ですでに、2.は試行錯誤され、かなりのレベルに達していますが、ファースト・ナショナル社で自由な製作環境を得、『犬の生活』でついに完成領域に至ったと言えます。このあと、製作期間もぐっと長くなり、会社と争いながら莫大な製作費をかけて作品を発表していきます。

ストーリーもご紹介。
ベッドもパンもない野良犬同然の生活のチャーリー。ある日、気弱な犬コロが野良犬たちに襲われているところに遭遇する。必死の思いで犬を助けだし、似たもの同士とばかりすっかり仲良しになるチャーリーと犬コロ。絶妙なコンビネーションで屋台のソーセージやパイをくすねてご機嫌のひとりと一匹は、さらに食べ物を求めてバーに潜入する。そのバーの中では、歌はうまいが、お客に媚を売れないばっかりに支配人にこき使われいる歌姫エドナがいる。哀れな身の上が互いに呼び合うのか、二人は仲良くダンスを踊ったりして楽しくすごす。しかし、無一文のチャーリーは一杯のビールを注文することができず、バーテンにたたき出されてしまう。

そのころ、通りでは2人組みの悪党が、酔っ払いの金持ち紳士から大入りの財布を強奪。警察に追われた彼らは、たまたまチャーリーのねぐらの空き地に財布を埋めて、バーにやってくる。その悪党にちょっかいを出されて逃げ出してしまったエドナは、あえなくクビを言い渡され、おまけに支配人は給料も払わない。

一方、ねぐらに戻ったチャーリーは犬コロと一緒に眠りにつくが、ピピッときた犬コロが財布を掘り出し一躍大金持ちになる。かわいいエドなのことが忘れられずにバーに戻ったチャーリーは、今度は札びらきってエドナと2人でいざ祝杯。しかし、居合わせた悪党たちは財布を取られたことに気づき、悪党とチャーリーの財布争奪戦に発展。結局、ここでも大活躍の犬コロが財布を取り戻し、悪党は警察に逮捕される。

場面変わって、畑で野良仕事に精を出すチャーリー。仕事が終わってうちに帰るといそいそと炊事に励むかわいいエドナとベビーベッド。その中には、かわいい子供と犬コロが。2人と犬コロたちは幸せに暮らしてハッピーエンド。

ソーセージやパイをくすねる屋台の主人は、実兄のシドニー・チャップリンが演じていますね。マネジャー業を一手に引き受けながら、ちょいちょいチャップリン映画にも出ていたようです。それぞれのシーンで、絶品のギャグがふんだんに味わえますので、それはぜひご自身の目で。★★★★☆

<スタッフ&キャスト>
監督:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン
    エドナ・パーヴィアンス
    チャック・ライスナー
    ヘンリー・バーグマン
    シドニー・チャップリン
    アルバート・オースティン

参考文献:チャールズ・チャップリン著「チャップリン自伝~栄光の日々」

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#0132ミューチュアル時代のチャップリン短編映画-2(1917年)

チャップリンの勇敢
『チャップリンの勇敢』


ミューチュアル時代1917年の短編作品をお届けします。破格のサラリーで契約し、月に一本のペースで製作を続けてきたチャップリン。「ミューチュアル社で働いていた頃が、今にして思うと一番幸福だったかもしれない」と語っていますが、一方で彼の作品に対する完璧主義はますます顕著になり、アイデアを得るために一日考え続けることなどもざら。週1万ドルのサラリーの上に、製作費をすべて負担していたミューチュアル社社長は心配でしょっちゅう撮影所を訪れ、これがチャップリンの頭痛の種だったようです。

『チャップリンの勇敢』EASY STREET 1917年1月22日 チャールズ・チャップリン監督 
チャップリンの勇敢貧乏な境遇から一念発起して警官になったチャーリー。あの”キーストン・コップス”の頃から、おまわりさんには追い掛け回されるのが専門だったチャーリーが、今作品では珍しく警官役。赴任早々町を牛耳る乱暴者エリック(エリック・キャンベル)との対決となったチャーリーは、街灯のガスを吸わせて首尾よくエリックを逮捕し、一躍町の英雄に。教会の娘エドナ(エドナ・パーヴィアンス)とも仲良くなります。しかし、そこにエリックが戻ってきて大乱闘に。エドナの身にも危険が迫りますが、チャーリーの大活躍で再びエリックをノックアウト。町には平和が戻り、チャーリーとエドナはハッピーエンド。
市民社会に適応できないことを笑いとしてきたチャップリンが警官役になり、しかも町の平和を取り戻すヒーロー役。最後は街の人々に慕われ、エドナとも相思相愛という、およそチャップリン映画らしくない作品でした。相変わらず極悪ヅラのエリック・キャンベルに街灯のガスを吸わせてやっつけるところが最高。そういえば、チャップリンは本人も共演者も撮影中に怪我をしたことがないことが自慢だったそうですが、唯一このガス灯がチャップリンの顔にあたり、数針縫う怪我をしたのだそうです。

『チャップリンの霊泉』THE CURE 1917年4月16日 チャールズ・チャップリン監督
チャップリンの霊泉飲んで効く霊泉が売り物の湯治場にアル中の治療に現れたチャーリー。いつもの姿ではなく、白っぽいジャケットにカンカン帽で少しスマート。アルコール禁止の湯治場にトランクいっぱいの酒を持ち込んだチャーリー。それを盗み飲んでベロベロになったボーイが、残った酒を霊泉に投げ込んだため、湯治場中が酔っ払いの大混乱に陥ります。
酔っ払い芸のドタバタ劇。チャップリンをはじめかなりの人数が登場しますが、エドナ、エリックは言うに及ばずすべての脇役が名演技を繰り広げ、個人がというより”場”全体が大いに面白い。その中で繰り広げられるチャップリンの芸にも磨きがかかり、マッサージ師(ヘンリー・バーグマン)との格闘、回転ドアなどの”物がらみ”から微妙な顔芸まで見事の一言に尽きます。ついに笑いの空間全てを掌握したという感じですね。

『チャップリンの移民』THE IMMIGRANT 1917年6月17日 チャールズ・チャップリン監督
チャップリンの移民さて、有名な『チャップリンの移民』。淀川長治氏がこの作品で始めてチャップリンを面白いと思ったという作品です。アメリカに渡る移民船はすし詰め状態。老いた母と二人で乗船していた娘(エドナ・パーヴィアンス)は、虎の子のお金を盗まれて悲嘆にくれているところをチャーリーに助けられる。ニューヨークのカフェで再会しラブラブで食事をする二人だが、一文無しのチャーリーは食事代が払えず四苦八苦。偶然金持ちの画家に気に入られて窮地を脱し、モデル代の前払い金も得てエドナと結婚することになる。
涙に暮れるエドナのポケットに、そっとお金を入れてあげるチャーリー。でも、やっぱり思い直して自分のために札1枚残してまた彼女のポケットに。。。人情味あふれるチャーリーの人物像が完成に近づいたと言われる作品。参考文献(「チャップリンのために」大野裕之他著)によると、2巻143ショットのこの作品のために、54巻1264ショット分の撮影が行われたそうです。配役を変えたりセットを変えたり、撮影をしながらより完璧なイメージを追及していくチャップリンの完璧主義が冴える作品。

『チャップリンの冒険』THE ADVENTURER 1917年10月22日 チャールズ・チャップリン監督
チャップリンの冒険開巻するといきなり、チャーリーは警官隊に追われています。一見して脱獄囚とわかるシマシマ服で逃げ回るチャーリーですが、海へ逃げ込んだところで、溺れる母娘(エドナ・パーヴィアンス)と連れの男(エリック・キャンベル)を発見。三人を救ったことで、エドナの住む邸宅で世話になることに。しかし、彼女をチャーリーに奪われて嫉妬に狂うエリックが、チャーリーのことを脱獄囚だと気づき通報したことで、警官隊がやってくる。。
ミューチュアル社最後の作品は、まるでキーストンコメディのような警官隊との追っかけシーンが目を引きます。実はチャップリン、マック・セネットの下で働いていた頃から「追っかけは役者の個性をつぶす」といって嫌っていたらしいんですね。それが原因でキーストンの監督たちともかなりもめたそうで、ミューチュアルの頃になると、追っかけを見かける機会も少なくなります。心境の変化か新境地か。。少し中途半端なエンディングも含めて、疑問符がつく作品(と思ったら、NHKで放送されたこのバージョン(フランス語字幕のもの)はエンディング直前で中断されてしまっているようです。ちゃんとFINマークは出ているのですが・・・。実生活でチャップリンの秘書を勤めた日本人高野虎一さんが運転手役で出演しています(高野氏の出演はこの作品のみ)。

(参考文献:「チャップリンのために」 大野裕之編集 とっても便利出版部発行)
(参考文献:「チャップリン自伝-栄光の日々- チャールズ・チャップリン著 新潮文庫)

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#0107ミューチュアル時代のチャップリン短編映画-1(1916年)

チャップリンの消防夫
『チャップリンの消防夫』

1916年、ミューチュアル社に移籍したチャップリンのサラリーはなんと週給1万ドル+ボーナス15万ドル。当時、国王でもなければ、この半分の収入を得る人間もいなかっただろうといわれたほどの高給取りとなります。1916年はきちんきちんと月に一本のペースで作品を製作し、『消防夫』『番頭』『スケート』など傑作を送り出します。もともとのドタバタギャグアクションについては名人芸の域に達しており、中には特殊撮影ではないかと見まごうシーンも多々あり。加えて、『放浪者』にあるような人情味も姿を見せはじめます。

『チャップリンの替玉』THE FLOORWALKER 1916年5月15日 チャールズ・チャップリン監督 
後に多くの映画を監督するロイド・ベーコンが売り場主任役でチャップリンのそっくりさんを熱演。作品の雰囲気はキーストン調のドタバタ劇。別名を『チャップリンのエスカレーター』とも言い、デパートのエスカレーターがギャグアクションのキーアイテムになっており、目いっぱい活用して大笑いさせてくれます。しかし、1910年代にもうエスカレーターってあたんですね。
不正を働いているデパート支配人と売り場主任。本社から探偵が派遣されて来ると聞き、大金をカバンに詰めて逃げ出そうとしますが、なかなか逃げられない。たまたま売り場主任とそっくりだったチャップリンは、何も知らずに身代わりを務めますが・・・。大金の入ったバッグをめぐって、支配人、売り場主任、チャップリンの大騒ぎ。

『チャップリンの消防夫』THE FIREMAN』 1916年6月12日 チャールズ・チャップリン監督
ダメダメ消防夫のチャップリンは消防隊長の悩みの種。何をやらせてもろくに働かないチャップリンには手を焼きっぱなし。そこにやってくるのが、金持ち紳士とその娘エドナ・パーヴィアンス。エドナは消防隊長の婚約者らしいのですが、父の方は火災保険詐欺を計画中で、娘との結婚をダシにして、隊長に消防の手抜きを約束させます。しかし、金持ち紳士は、あろうことか二階に愛娘エドナがいることに気づかず自宅に放火。駆けつけたチャップリンの大活躍によってエドナは助け出され、二人は相思相愛となってハッピーエンド。
フィルムの逆回転などの工夫も見られる有名な短編。この頃のチャップリンは、すでに世界一高給取りの超売れっ子コメディアンですから、役者としての演技の切れも最高。頭の先から足の先まできっちりと筋の通ったアクションで魅せてくれます。また、監督としてのチャップリンの演出も見所。こちらも小道具の配置からチームアクションの演出まで、笑いに対して無駄がありません。気絶している消防隊長の巨体が疾走する消防馬車から転げ落ちてすっぽり道路の穴にはまるところなど傑作。

『チャップリンの放浪者』THE VAGABOND 1916年7月10日 チャールズ・チャップリン監督
これまでの作品と趣が変わって、どちらかと言えばギャグよりストーリー重視。しかも、後のチャップリンの真髄と言うべきペーソスに溢れた筋立て。今までのドタバタシチュエーションと切れの良いギャグアクションで笑わせる作品から、明らかに新しいスタイルへの挑戦が見えます。ラストがハッピーエンドになっているところが後々の作品と違うところ。
酒場でバイオリンの弾き流しをしているチャップリン(バイオリンを弾く小指一本でも笑わせるところがさすが)。酒場で一騒動起こした後、あてもなく歩くうちにジプシーの一家と出会います。父に殴られこき使われているかわいそうな娘(エドナ・パーヴィアンス)を救出して二人で逃げ出したチャップリン。汚れた彼女の顔や髪を洗ってやるやさしいシーンもあり少し驚き。しかし、チャップリンに洗ってもらってきれいになった娘エドナは、水を汲みに行って、その美しさに目を留めた画家のモデルとなり相思相愛になってしまいます。展覧会で発表されたエドナの絵をきっかけに、実は彼女が幼い頃誘拐された金持ちの一人娘であることがわかり、迎えに来る実の母と画家。恋心を隠して彼女を見送るチャップリン。一人残されて悲嘆にくれる彼の元に、やはりチャップリンと別れ難いエドナ戻ってきて、最後はチャップリンも一緒にお金持ちの車で去っていき、一件落着。

『午前一時』One AM
 1916年8月7日 チャールズ・チャップリン監督
チャップリン一人芸の極致。ベロンベロンに酔っ払ったチャップリンは、午前一時(どう見ても真昼間ですが)にタクシーでご帰還。自室で、足ふきマット、トラの敷物、山猫の剥製、コート掛け、収納ベッドなどと絡みまくります。今や名人芸となった階段落ちや、出たり引っ込んだりする収納ベッドとの格闘は、これぞチャップリンという至芸。

『チャップリンの伯爵』 The Count 1916年9月4日 チャールズ・チャップリン監督
ペーソス溢れる『放浪者』、一人名人芸を見せる『午前一時』に続く9月の作品は、いったんキーストン調のドタバタ劇に戻ります。懐かしい拳銃乱射シーンも復活。しかし、ストーリーにしてもシチュエーションにしてもキーストンの頃より丁寧に豊かになっているところがさすがチャップリン。
洗濯屋のドジ店員チャップリンは、預かりもののシャツをアイロンで焦がしてしまって、あえなくクビ。昔馴染みの女中を頼ってお金持ちの屋敷にやってきます。屋敷では娘エドナのために伯爵を招いてパーティの準備中。そのころ、チャップリンをクビにした洗濯屋の主人は、伯爵から預かったシャツからパーティの招待状を発見。ちゃっかり正装してパーティに乗り込んできますが、居合わせたチャップリンに偽伯爵の座を横取りされてしまいます。こうして、偽伯爵のチャップリン、秘書役にされた洗濯屋主人、エドナにその父、それに遅れてやってきた本物の伯爵が参加していつものどたばた大騒ぎが展開。

『チャップリンの質屋』 The Pawnshop 1916年10月2日 チャールズ・チャップリン監督
チャップリン人気をさらに高めたミューチュアル時代の傑作短編。『チャップリンの番頭』という邦題もあります。客が持ち込んだ時計をチャップリンが壊してしまい、結局一銭も貸さずに追い返してしまうシーンは中でも評判になった場面。淀川長治氏はチャップリンの意地悪さが怖くてイヤだったと書いていました。傑作なシーンですが確かに後のチャップリン作品に見られるような人情味はかけらもありません。その他にも、見事な脚立使いやパイ投げ(パン生地ですけど)などギャグ満載。
質屋の店員チャップリンは、今日も遅刻。店主にしかられ、そりの合わない先輩社員とは店主の目を盗んで小競り合いの連続。見るからに仕事はいい加減、客あしらいも適当。しかし、押し入った強盗をやっつけて万事OK

『チャップリンのスケート』 The Rink 1916年12月4日
11月に『チャップリンの舞台裏』という作品があるのですが、映像がないため12月作品のこちらを。この作品もミューチュアル時代を代表する作品ですが、ギャグよりもストーリーよりも何といってもチャップリンのローラースケートテクニックがすごい。
前半はレストランでのドタバタ。チャップリンがレストランの給仕を勤める作品はいくつかありますが、このシーンも定番のギャグで笑わせてくれます。しかし、本番は仕事を抜け出したチャップリンがとなりのスケート場に行ってから。かわいいエドナを追い回す仇敵スタウト氏(エリック・キャンベル)との絡みはすごいの一言ですね。つま先からてっぺんまで笑わせる動作を研究し尽くしているチャップリンですが、その基礎となる技術も半端じゃない。このあたりがプロのプロたるべきところ。
(参考文献:「チャップリンのために」 大野裕之編集 とっても便利出版部発行より)

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#0051 エッサネイ時代のチャップリン短編映画-3(1915年~1918年)

改心
”チャップリンの改心”

1915年後半から1916年までのエッサネイ社作品。チャップリンの芸では『清掃係』で見せる、恋に破れたチャップリンの放心の表情や、『改心』の泣き芸が印象に残ります。作品の発表間隔も1ヶ月~2ヶ月近くとなり、ストーリーも良く練りこまれた傑作が多く。ここでの実績を踏まえていよいよ空前のサラリーでミューチュアル社に移るチャップリンの実力を十分にうかがい知ることが出来ます。にほんブログ村 映画ブログへ

『チャップリンの清掃係』THE BANK 1915年8月9日 チャールズ・チャップリン監督
銀行の清掃係のチャップリン。今日は銀行位置のエリート、出納係のチャールズの誕生日。秘書のエドナもチャールズに首っ丈で、ネクタイに手紙をつけてデスクの上に準備万端。それを見つけたチャップリンは「チャーリーへ」という手紙を自分宛と勘違い。返事の手紙と花束をエドナのデスクに置きます。しかし、それが清掃係のチャップリンからだと知ったエドナは花束と手紙をゴミ箱へ。影から見ていたチャーリーは、すっかり落ち込んで捨てられた花束を拾ってどうしようか思案するうちに寝込んでしまう。夢の中で、チャップリンは銀行強盗団を撃退した大ヒーローになり、エドナの心もしっかりつかむが、言いところで目が覚めてモップに抱きついているところで幕。
この頃のチャップリン作品には良くある内容のドタバタ劇が中盤まで続き、特に見るべきものもないかと思ったのですが、捨てられた花を見つけたチャーリーの表情が哀しくてあわれで最高。これも、後のチャーリー像につながる表情ですね。特に泣きも怒りもしないのですが、見ているほうにはチャップリンの悲しみが痛いほど伝わってきます。この表情と夢オチでチャップリン映画らしい哀愁と笑いに満ちた秀作となりました。

『チャップリンの船乗り生活』SHANGHAIED 1915年10月4日 チャールズ・チャップリン監督
自分の船を沈めて保険金を騙し取ろうとする悪徳船主とその手下の船長。チャップリンはその娘(エドナ・パーヴィアンス)と恋仲。沈める船の船員探しに協力したチャップリンは自分も騙されて船員としてこき使われることになるが、チャップリンとの仲を父親に反対されたエドナも密かに船に忍び込んでいた。作品全体としては平均的な内容だが、船上でチャップリンと船員たちが繰り広げる大騒ぎ、特にクレーンを使ったドタバタはストレートに笑えます。タイミングといいアクションといいすでに神業の域に近づいている(まだまだ、パワーアップしていくはずだが)。最後は、船長が船にダイナマイトを仕掛けて逃げようとするが、チャップリンの活躍で船もエドナも救われ、エドナとチャップリンのハッピーエンド。ちなみに、このDVD-BOXの他の作品と比べてフィルム状態が非常に悪い。件のクレーンシーンが暗くて見にくいのが残念。

『チャップリンの寄席見物』A NIGHT IN THE SHOW 1915円11月20日 チャールズ・チャップリン監督
チャップリンが映画界に入る前に活躍していた、イギリスの喜劇団カノー一座の出し物を映画化した作品。コメディ見物に来た金持ちの酔っ払いと労働者風の男の二役を演じています。同じようなドタバタを演じているものの、金持ちと貧乏人の演じ分けがうまい。常連のエドナ・パーヴィアンスもチャップリンに流し目を送る美女の役で登場。パイ投げ合戦を見ていると、ドリフを思い出すなぁ。

『チャップリンの改心』POLICE 1916年5月27日 チャールズ・チャップリン監督
本当は、『寄席見物』とこの作品の間に、『チャップリンのカルメン』という、セシル・B・デミルなどが競作した作品をパロッた作品があるのですが、DVD-BOXには収録なし。

刑務所から出てきたチャップリン。やってきた偽牧師に虎の子の1ドルをすられてしまいます。安宿に泊まる金もないチャップリンは、偶然であったムショ仲間と意気投合し、不審を感じてつけて来た警官を殴り倒してエドナの家に泥棒に入ります。室内を物色するうちに、エドナが二人に気づき警察署に通報。時間稼ぎのために泥棒に食事を振舞います。相棒がエドナに暴力を振るおうとしたため、チャップリンはエドナを守って相棒と大立ち回り。警官も到着し、相棒は窓から逃亡。チャップリンは捕まりますが、エドナが彼を夫だとかばい事なきを得ます。エドナはチャップリンに1ドルを贈り、チャップリンは感謝の心でまっすぐに伸びる一本道を歩いていき・・・と思ったら、冒頭で殴り倒した警官が向こうから追ってきてチャップリンはユーターン。警官に負われつつ幕。

牧師が実はすりであったりという皮肉な設定も話題になった作品。エドナの家に忍び込もうとする二人を壁に映る影で演出したり、エドナの指輪を狙う相棒のたくらみを顔のクローズアップと指輪のアップでつないで表現したり、映像面で面白い工夫が多々観られます。物陰から二人を伺う警官の登場を、胸につけた星型のバッジから出現させるというのもありました。
冒頭、偽牧師に説教されて、チャップリンが目を潤ませ泣くのですが、本格的な泣き芸は初めて観るのではないかと思います。『キッド』の見事な泣きに通じるものを感じました。秀作。

『三つどもえ事件』TRIPLE TROUBLE 1918年8月11日 チャールズ・チャップリン監督
エッサネイ社による最後の作品は、チャップリンがとっくにやめてしまった後の作品。1918年のこの頃チャップリンはファースト・ナショナル社で『公債』(The Bond)を公開しています。権利関係はわかりませんが、チャップリンが残した未使用フィルムをつなぎ合わせて一本の映画を作ったという珍しい作品。今回ご紹介した『チャップリンの改心』のフィルムが多く使われています。ちなみにチャップリンはこの作品を認めておらず、正式なチャップリン作品には数えられないそうです。

遠隔爆破装置を発明した発明家宅の掃除係がチャップリン。発明を狙う亡国外交官に雇われた泥棒(『改心』の相棒と同じ人物)や、発明家宅警護の警官団が大騒ぎを起こす。内容的には特にとっぴつすべきものはないようです。

(参考文献:「チャップリンのために」 大野裕之編集 とっても便利出版部発行より)

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#0042 エッサネイ時代のチャップリン短編映画-2(1915年)

失恋
『チャップリンの失恋』のエドナ・パーヴィアンスとチャップリン

作品一つ一つをじっくりと作り上げ、ストーリー・ギャグのどれをとってもかなりの完成度を感じるこの頃の作品。『チャップリンの失恋』という記念すべき作品も生まれました。個人的には、ようやく見ていて素直に笑えるようになってきました。

『チャップリンの駆け落ち』THE JITNEY ELOPEMENT 1915年4月1日 チャールズ・チャップリン監督
富豪の娘エドナ(エドナ・パーヴィアンス)と恋仲のチャップリン。エドナに伯爵との結婚話が持ち上がり、チャップリンは彼女と結婚したさに伯爵になりすましてエドナの父に会う。うまくことは運んでいたが、途中で本物の伯爵が現れチャップリンは追い出されてしまう。傷心を抱えてやってきた公園で見合い中の伯爵とエドナに遭遇。警官も交えたドタバタの末、チャップリンとエドナは車で駆け落ちし、伯爵たちも警官の車で追いかける。最後は伯爵たちの車を海に落としてハッピーエンド。

公園のドタバタシーンが、キーストンコメディぽくて良いのですが、なんといっても見せ場は中盤以降のカーチェイス。この頃のチャップリン短編喜劇は自動車レースをモチーフにした作品が多いのですが、チェイスはこれが初めて。走る車の横からカメラを併走させて撮影するシーンがありますが、かなりのスピード感です。彼女と結ばれてハッピーエンドの作品もこの頃には結構あります。チャップリンの帽子芸が増えている!。

『チャップリンの失恋』THE TRAMP 1915年4月11日 チャールズ・チャップリン監督
これは、後のチャップリン映画の原型となる貴重な作品。。キーストン時代の『チャップリンの画工』で、少しそれらしい役をやっていましたが、この作品では失恋し本格的に一本道を去っていくチャップリンが初めて登場します。途中まではトボトボと、そして元気を取り直して足早に去っていくところも後の作品と同じですね。
強盗に襲われたエドナ(エドナ・パーヴィアンス)を助けたことがきっかけでエドナの家に居候することになったチャップリン。すっかりエドナと相思相愛。と思っていたのはチャップリンだけで、実は彼女には婚約者がいた。すべてを知ったチャップリンは、急用が出来たと家を出て行こうとする。選別も断り、エドナと握手して出て行くのだが、エドナはチャップリンの置手紙で彼の気持ちを知る。

浮浪者”スタイル”と言っているのでうっかりしていましたが、本格的な浮浪者を演じるのもこの作品が初めてなのだそうです(衣装も普段よりボロボロ)。音声担当の永井一郎氏が、”ペーソス”と言う言葉を使っていますが、まさにペーソスに溢れたホロリとくる名作。興行的にも成功し、チャップリンの道を決めたと言われています。

余談ですが、これまでの作品ではいくら派手な銃乱射でも人に当たることはなかったのですが、この作品ではチャップリンが撃たれましたね。ちょっと驚きでした。

『アルコール先生海水浴の巻』BY THE SEA 1915年4月29日 チャールズ・チャップリン監督
ストーリー、キャラ、ギャグともに1年前から見るとかなりスマートになっていますが、この作品ではまたまた美人にちょっかいをだしてドタバタに発展するパターンに逆戻り。『チャップリンの失恋』のような人情派の作品はまだまだ定着していないようです。
海辺で過ごす夫婦。妻が用足しに出かけた間に、つまらないことから夫とチャップリンが大喧嘩になり、チャップリンは夫をノックアウトしてナンパに出かけます。出会ったのはエドナ・パーヴィアンスですが、彼女には大男の夫がいて、図らずも二組の夫婦と関わったチャップリンは海辺でドタバタの末、最後は全員すわったベンチが後ろにすっころんで幕。また、帽子の芸が増えてますね。

『チャップリンのお仕事』THE WORK 1915年6月21日 チャールズ・チャップリン監督
チャップリンはペンキ屋の丁稚。馬の代わりに馬車を引きながら登場。坂道や踏み切りなどのシチュエーションで、馬車をフルに使いこなして笑わせてくれます。その後、壁紙の張替えに向かった家で、ペンキ道具を使って恒例のドタバタ騒ぎになりますが、道具の使いこなしや動作の一つ一つまで計算されつくしたすごみを感じますな。

『チャップリンの女装』A WOMAN 1915年7月12日 チャールズ・チャップリン監督
いつものごとく公園を散歩中のチャップリン。エドナ一家の父親と美人の取り合いでひとモメしたあと、首尾よくオヤジを池に叩き込んで、そうとは知らずエドナと懇意になります。家まで上がりこんだチャップリンは、帰ってきたオヤジと遭遇し、乱闘中にズボンを取られて逃げるに逃げれなくなる。進退窮まってエドナの部屋に逃げ込んだチャップリンは見事に女装。これにイチコロになたオヤジと三回戦。最後は家からたたき出されて幕。
チャップリンの女装は、キーストン時代にも『多忙な一日』という作品がありました、まあ、もとが美男子ですから良く似合います。今回は着替えシーンもあり。

(参考文献:「チャップリンのために」 大野裕之編集 とっても便利出版部発行より)

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#0035 エッサネイ時代のチャップリン短編映画-1(1915年)

アルコール先生公園の巻
『アルコール先生公園の巻』のエドナ・パーヴィアンスとチャップリン

キーストン社社長のマック・セネットに社長以上のサラリーを要求して会社をやめたチャップリン。結局、8倍以上の1250ドルの週給を獲得してエッサネイ社に移籍します。キーストン時代よりもかなり恵まれた環境で映画作りが出来たのではないかと思うのですが、よく出来たストーリーの秀作が続きます。
しかし、なんといってもこの時代のトピックは、エドナ・パーヴィアンスのデビュー。エドナは、チャップリンの映画にしか出演しなかった女優で、一時チャップリンと恋仲にありましたが結局結婚することはありませんでした。しかし、1923年の『巴里の女性』でチャップリン映画を引退した後も、かたくなに他社からのオファーを断るエドナを、チャップリンは生涯面倒を見ていたと言います。

『チャップリンの役者』HIS NEW JOB 1915年2月1日 チャールズ・チャップリン監督
第一作の『チャップリンの役者』はキーストン社を皮肉った作品と言われているそうです。
この作品のチャップリンは、売れない役者。映画会社の面接にむかうものの、プロデューサーはかわいい女優にしか興味がなく、いきがかりで小道具係に。しかし撮影中の映画の現場でうろうろしているところを、監督に適当に抜擢されて役者として出演することになります。ここで、衣装のないチャップリンはスター俳優の楽屋に入り込み、勝手に衣装を拝借してしまうわけですが、これは1年前の『ヴェニスにおける子供自動車競走』で、チャップリンが実際にやったことですね。結局、チャップリンは役に立つはずもなく、監督や衣装を取られた大スターも加わって大騒ぎになって幕となります。
また、この作品では驚くべきことが一つ。カメラが移動している!。この時期のチャップリン短編映画はほとんど固定カメラによる全景撮影ですが、この作品の1シーンでわずかながらチャップリンの動きにあわせてカメラが前後するんですね。特に目立った撮影効果が出ているわけでもなく、いかにもためらいがちな移動撮影ですが、妙に感動してしまいました。
グロリア・スワンソンが端役で登場しており、参考文献によると役はステノグラファー(速記者)と言うことになっています。このフィルムで文章を作成している女性はプロデューサー事務所の隅でタイプを打っている女性しかいません。別に秘書という役がありアグネス・エアーズという女優が演じているのですが、グロリア・スワンソンがこのタイピングしている女性かどうか不明です(見た目違うような気もするのですが・・・)。スワンソンが、チャップリンのスクリーンテストで落とされたことは有名ですが、ほんの端役ながら共演もしていたんですね。

『酔いどれ2人組』(アルコール夜通し転宅)A NIGHT OUT
 1915年2月15日 チャールズ・チャップリン監督
エドナ・パーヴィアンスが初登場する記念すべき作品。彼女はこの作品以降、1923年の『巴里の女性』で引退するまでチャップリン映画一筋。他の映画には一度も出演しませんでした。
チャップリンと相棒ベン・タービンは、洒落た金持紳士が気に入らずちょっかいを出すが、警官ににらまれて酒場に退避。ついつい飲みすぎて、泥酔状態でとなりの高級レストランに迷い込みます。そこで、もう一度金持紳士に遭遇して、大騒ぎを起こし給仕長にたたき出された二人はホテルの部屋に戻りますが、その向かいは怖い給仕長と妻(エドナ・パーヴィアンス)の部屋。再び給仕長に追い出されたチャップリンは別のホテルにお引越し。しかし、給仕長夫婦もホテルが気に入らず、よりによってチャップリンの引越し先の向かいの部屋に移ってくる。取り残されたベン・タービンは公園で散歩中のチャップリンに再会し、諸々文句を言うがレンガで殴り倒される。ホテルに戻ったチャップリンはお休みの準備中。しかし、向かいの部屋で犬と遊んでいたエドナが逃げた犬を追いかけて部屋に迷い込んできて・・。戻った給仕長と意識を取り戻したタービンも参加して大騒動で幕。
後半のドタバタはキーストン時代の『メーベルの奇妙な苦境』とそっくりですが、ギャグのキレははるかに上達していますね。相棒のベン・タービンは、このフィルムのナレーションの永井一郎氏が”かわうそ”と呼んでいるとおり、見た目も演技もチャップリンに引けをとらない面白さ。扮装にはチャップリンの影響が見られるかもしれません。エドナ・パーヴィアンスは、例のグロリア・スワンソンが落とされたスクリーンテストで合格しての初登場ですが、なかなかの好演。パジャマ姿でベッドの下からちょこっと顔を出すシーンが良かったですねぇ。

『チャップリンの拳闘』THE CHAMPION 1915年3月11日 チャールズ・チャップリン監督
犬を散歩中にスパーリング相手募集の張り紙を見かけたチャップリンは、ボクシングジムに乗り込みます。いかにも強そうな連中が次々とノックアウトされる中、チャップリンはグローブに仕込んだ蹄鉄でジムの強豪ボクサーをノックアウト。チャンピオンへの挑戦者となります。八百長の誘いもきっぱりと断り、試合を向かえたチャップリンは大男のチャンピオンを相手に大健闘、最後は愛犬の助けを借りてついにチャンピオンをノックアウトします。
チャップリンのボクシングシーンは、キーストン時代の『ノックアウト』でロスコー・アーバックルの試合の審判で登場しただけ。選手としてはこの作品が初めてですね。しかし、相変わらずロープを使った切れのよいギャグを見せてくれます。大男相手に一歩も引かないところが人気のポイント。散々パンチを食らってへろへろになりながらも勝利を収めます。試合シーンのチャップリンの体術は見ものであります。
観客の一人としてエッサネイ社の創立者G.M.アンダーソンが出演しているらしいのですが判別できず。彼は、『ブロンコ・ビリー』シリーズの大ヒットで、初の西部劇役者として有名になりました。

『アルコール先生 公園の巻』IN THE PARK 1915年3月18日 チャールズ・チャップリン監督
キーストン時代のチャップリン初監督作品『恋の20分間』のリメイク版。全体の感じもキーストン映画に良くあるドタバタ調。公園のカップルを狙うスリのチャップリン。かわいいこと見るとちょっかいを出します。そこに一人、本(何故結婚したのか?)を読みながらニタニタと楽しそうなエドナ・パーヴィアンス。チャップリンとエドナ、洒落者フランス人カップル、エドナの恋人、公園警備の警官などが入り乱れてスリとナンパを繰り返し、最後は池にドボンして幕。
やはり会社を変わっても急激に作風が変わるわけではありませんね。お得意のレンガ投げも入って、"良くある”どたばたコメディ。エドナのアップが何度か入りますが、これは映像としては新しいかもしれません。しかもエドナの笑顔が屈託なくてよい。ドタバタコメディ作品としては、『恋の20分間』の方が面白かったかな。
エッサネイ社に移ってから作品の間隔が長くなっているのですが、この作品は前作(『チャップリンの拳闘』)の1週間後。内容がリメイクであり、出来もそう良くないので何かの都合で早撮りの必要があったのかもしれません。

(参考文献:「チャップリンのために」 大野裕之編集 とっても便利出版部発行より)

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#0034 キーストン時代のチャップリン短編映画-5(1914年)

原始時代
『アルコール先生 原始時代の巻』

いよいよ、キーストン時代はこれで終わり。終盤の作品はどれもストーリー展開が特に面白くて、ギャグの切れも格段に良くなっています。なにより、初期の悪辣さが影を潜めつつあるため安心して笑えるコメディになってきました。キーストンとは週給150ドルで契約していたチャップリンですが、人気もうなぎのぼりだったのでしょうね、給与のことでもめたらしくエッサネイ社に移ることになります。エッサネイ社とは週給1250ドルの契約だったそうです。

『恋の痛手 』(髭のあと)THOSE LOVE PANGS 1914年10月10日 チャールズ・チャップリン監督
女主人を争う女たらしの下宿人チャップリンとチェスター・コンクリン(この人もよく出ますね)。一時休戦して公園に出かけますが、チャップリンは途中でかわいい娘に目移りします。しかし、娘の恋人が現れ、チャップリンは公園に逃げますが、そこには下宿の女主人と仲睦まじくいちゃつくコンクリンの姿が・・・。二組のカップルにちょっかいをだすチャップリンと、コンクリンたちのドタバタ劇。見ていてへぇっと思ったのが、女主人と話すチャップリンを狙って、コンクリンがカーテンの向こうからフォークで突こうとチャップリンを狙うシーン。コンクリンが狙っているのを知っていて、女主人と立居地を変わるチャップリンが、思い直してもう一度自分が突かれる位置に変わるシーン。はっきりと人に対する思いやりを示すシーンは今までほとんどありませんでした。

『チャップリンのパン屋』DOUGH AND DYNAMITE 1914年10月26日 チャールズ・チャップリン監督
キーストン時代の代表作品。1年間で13万ドル稼いだそうです。『恋の痛手』と一本の映画だったのが、後半の企画が膨らみ別の作品に。パン屋の職人たちはストライキ中。それでもウェイターのチャップリンたちが四苦八苦しながらお店を開けています。いらだった職人たちは食パンにダイナマイトを仕掛けて店のパンに紛れ込ませますが、チャップリンたちがそうと知らずにダイナマイトに火をつけてしまいます。宿敵コンクリンとのケンカやぐにゃぐにゃのパン生地を使ったドタバタがとにかく面白い。この頃の作品は素直に面白いと感じるようになってきました。

『アルコール先生 自動車競争の巻』GENTLEMEN OF NERVE 1914年10月29日 チャールズ・チャップリン監督
”アルコール先生”って何のことだろうと不思議でしたが、淀川長治氏の何かの本でチャップリンが「日本に紹介された頃、"チャップリン”と発音できずにアルコール先生という呼び名になったと書かれていました。内容は、久々にメーベル・ノーマンドとの競演。これも良く見かける自動車レース場でのメーベルをめぐるチャップリン、チェスター・コンクリン、マック・スウェイン三人の争い。チャップリンの演技には余裕のようなものが見えますが、展開もスウェインとコンクリンが警官に捕まって連れて行かれ、チャップリンとノーマンドの二人がハッピーエンド。チャップリンのステータスも上がってきてるんですねぇ。

『逢いびきの場所』(他人の外套)HIS TRYSTING PLACE 1914年11月9日 チャールズ・チャップリン監督
チャップリンとマック・スウェインが酒場でお互いのコートを取り違えたことから起きるドタバタコメディ。当時は台本もなく即興でギャグをつないで映画を作っていたと解説されていますが、なかなかどうして短いながらも良く出来たシナリオです。 この時代の脚本がどうなっていたのか詳しく知りたいところだなぁ。
ギャグの切れもよく、公園のゴミ箱から頭を出すチャップリンをメーベルが殴りまくるシーンは大いに笑えます。最後は誤解が解け、赤ん坊を含めて家族三人で楽しそうに笑う家族のショットで終わりますが、そういえばこの頃のチャップリン映画では、彼に幸せな家族がいるものも結構ありますね。このあたりも後々の作品と違うところです。

『メーベルとチャップリン』(夫婦交換騒動)GETTING ACQUAINTED 1914年12月5日 チャールズ・チャップリン監督
公園ものの一本。この作品も『逢いびきの場所』と同じく、話の展開がとてもよく出来ている。チャップリン/フィリス・アレン夫婦とマック・スウェイン/メーベル・ノーマンド夫婦。それぞれの亭主が互いの妻をナンパするという状況になり、公園警備の警官を含めてのハイテンション・コメディ。これまでの作品よりカット切り替えがずいぶん早く、めまぐるしいほどの展開です。チャップリンの露骨なナンパぶりが笑えますが、最後にズボンのベルトを奥さんにひっつかまれて退場するチャップリンの姿が最高。

『アルコール先生 原始時代の巻』HIS PREHISTORIC PAST 1914年12月7日 チャールズ・チャップリン監督
キーストン映画最後の出演作品。グリフィスの『Men's Genesis』のパロディなのだそうです。原始時代の王様マックス・スウェインの妻にちょっかいを出すチャップリン。獣の皮こそ着ているものの、山高帽にステッキはここでも健在。女たらしも変わりません。マック・スウェインを崖から突き落として王となり、かわいこちゃんも独占と思いきや、這い上がってきたスウェインに石で殴られ・・・、目を覚ますと公園で警官にたたき起こされているところでした。この時代に夢オチがあったとは驚き。マック・スウェインがチャップリンの敵役としてよく登場しますが、チャップリンよりもはるかに大柄なスウェイン相手の喧嘩だと初期の頃のような弱いものいじめの様相になりません。良いコンビだったと思います。


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