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#0100『椿三十郎』黒澤明監督 1962年日本

椿三十郎

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森田芳光監督のリメイク版『椿三十郎』が公開中ですね。そちらはまだ公式サイトの予告編しか見てません。リメイク話を聞いた時に「織田裕二が椿三十郎???」という感じだったのですが、若侍たちの隠れる床板を踏んでニヤついてる表情なんかは結構サマになってますね。でも、最新作に疎い川越名画座ですので、この記事は当然オリジナルの黒澤版。リメイク版はDVDになるまで楽しみに取っておきますか。

肩をグリグリッと回すところも、人を切ったらそそくさと刀を納めて帰ってしまうところも『用心棒』と同じ。「桑畑」から「椿」に名前が変わっても三十郎は三十郎。「もうそろそろ四十郎ですが」という間抜けなボケも健在。このキャラ好きなんだなぁ。たまらん。のですが・・。

藩の不正を告発しようとする血気盛んな青年武士たちを、いきがかりで手助けすることになってしまった三十郎。不正に絡んで誘拐監禁された城代家老の救出をめぐり、偶然隣同士の屋敷に陣取った、黒幕・次席家老黒藤一派と頭脳戦を繰り広げます。

ごく素直に『用心棒』の続編だとばっかり思っていたのですが、主人公が三十郎であるという以外に物語としての共通点はないらしく、時代設定からして大幅に違うのだそうです。東宝からの続編依頼と、黒澤監督が執筆していた山本周五郎の「日々平安」をもとにした脚本が落ち着くところに落ち着いて(この辺の経緯は、ウィキペディア参照)、三十郎を主人公とした別の物語が出来上がったということのようですね。

今回『用心棒』と『椿三十郎』を続けて観て改めて感じたのですが、三十郎の大きさが違う。これ客観的な事実に基づいた話をしているわけではなくて、観終えた後、”桑畑三十郎”は遠景で捉えられているイメージが印象に残り、”椿三十郎”はアップのイメージが印象に残っているということなのです。

『用心棒』では、宿場を騒がす博徒一味の対立を、たまたま通りすがった三十郎が外側から引っ掻き回すわけですが、前の記事にも書いたとおり舞台設定・人物設定・ストーリーの巧みさの中に絶妙に三十郎の魅力が位置づいている印象でした。その魅力は、知略・豪胆・剣の腕・人情。に加えてなんとも言えない、お茶目ぶり。

『椿三十郎』ではその辺のバランスが微妙に変わったような気がします。確かに敵が隣にいるという舞台設定は面白い。宿敵室戸半兵衛(仲代達也)を初めとして、いわゆる”茶室の三悪人”とか押入れ侍、城代家老陸田一家などの人物設定も魅力的。それにストーリーも凝りに凝って素晴らしいのですが、どうもその全部が椿三十郎その人を盛り立てることを目的に配置されているような気がするのです。このあたりの違いが、どうも印象に残った三十郎の大きさの違いの原因ではないかと思います。

これって、実は続編の一般的なありようかなとも思うんですね。第一作で好評だった主人公は続編ではよりわかりやすくデフォルメされることが多い。三十郎の知略縦横ぶり、居合いの腕の冴え、それになんだかんだ言いながら人助けをしないと気がすまない人情深い性格。そのあたりは『椿三十郎』でははるかにわかりやすく強調されていると思います。

若侍たちに「ありゃ、化け物だぞ」と言わせた三十郎の強さを最も魅力的に見せるための宿敵の存在もやはりパワーアップ。『用心棒』では、丑寅一家随一の切れ者卯之助として途中参戦した仲代達也が、今作では悪の大目付菊井の懐刀・室戸半兵衛としてフル出場。触れなば切れん鋭い刃の風情で、三十郎の好敵手として大いにドラマを盛り上げてくれます。

『用心棒』の時とは違い、対立する片方の中心人物にしっかり位置づいた三十郎と、敵方の中心人物室戸半兵衛の対決がかの有名なラストシーンまで集約していくつくりは、三十郎の強さを堪能するには、実に素晴らしく、間違いなく傑作中の傑作。

でも、『用心棒』の時の、なんだか正体のわからない胡散臭い感じや、やることなすこと楽しくてしょうがない、いたずらっ子のような三十郎の茶目っ気は、若干控えめになってしまったような気がするんですね。そのあたりが大のお気に入りだったので、それだけがすこーし寂しい感じ。ごく個人的な感想ですけどね。

森田監督は、リメイクをオリジナルに忠実なストーリーに仕上げたそうですが、賢明だったんじゃないかと思いますね。『用心棒』から『椿三十郎』で三十郎のキャラは十分練り上げられていますから、ここからさらに続編的なつくりにしていたら、ほぼ間違いなくその辺に転がっている”駄”続編の一つに成り下がっていたのではないかと思います。森田版も楽しみにしたいと思います。★★★★★

<スタッフ&キャスト>
監督:黒澤明
製作:田中友幸/菊島隆三
原作:山本周五郎『日々平安』
脚本:菊島隆三/小国英雄/黒澤明
撮影:小泉福造/斎藤孝雄
美術:村木与四郎
音楽:佐藤勝

出演:三船敏郎/仲代達矢/小林桂樹
    加山雄三/団令子/志村喬
    藤原釜足/入江たか子/清水将夫
    伊藤雄之助/久保明/太刀川寛
    土屋嘉男/田中邦衛/江原達怡
    平田昭彦/小川虎之助/堺左千夫
    堤康久/山田彰/松井鍵三
    樋口年子/波里達彦/佐田豊
    清水元/山口博義/広瀬正一
    大友伸/大橋史典/峯丘ひろみ
    河美智子/爪生登喜/伊藤実
    宇留多耕司

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#0097『用心棒』黒澤明監督 1961年日本

用心棒

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映画は、"見せぬが華"ってところがあると思うのです。見せないことが観客のイマジネーションを掻き立てて、実際に見えているものより何倍も奥深く面白い物語を作り上げる。最近の映画は、このあたりのニュアンスが違うようで、見せることこそが価値観。大金を惜しみなく投入し、最新鋭のコンピューターを駆使して、世の中に存在しないものだってなんだって、とにかく力づくで見せる。もちろん、例外もありますが、マスを巻き込むメジャー作品は大体”見せる映画”が多い。しかし、それが必ずしも作品の質の向上につながらないのがつらいところです。

黒澤作品では、前回アップした『羅生門』などは観客に考えさせ想像させる見せない映画の類ではないかと思います。黒澤監督は、登場人物の顔にかかる木々の影まで計算し、非常に微妙な形で彼らの心象を表現します。同じ出来事が何通りにも再現され、観客は一生懸命それらをつなぎ合わせたり照らし合わせたりしながら映画の意図を読み取ろうとするのです。『羅生門』における黒澤監督の見せない手腕は超一流。

ところがこの『用心棒』。何から何までまる見え。まる出し。

人物の後ろにも場面の後ろにも出来事の後ろにも、スクリーンに見えるもの以外の要素はまるでなし。そして、驚くべきはこの映画が、それにもかかわらず、最高に面白いということです。良い映画とか素晴らしい名作とかそんな言い方じゃなくて、これ、面白い!実に痛快な時代劇

痛快とは、痛いほど快いと書きますが、なにがそんなに痛いほど快いのかというと・・・。

舞台設定がまず傑作。宿場大通りの目と鼻の先に、敵同士の博徒一家が陣取っています。右手に女郎夜清兵衛、左手には新興やくざ新田の丑虎。そのちょうど中間点に、桑畑三十郎(三船敏郎)が居座る居酒屋。道向かいには、腰ぎんちゃくのおかっぴきがいて、こいつが『ここのつでござ~い~』とか、時を告げると、両サイドからわらわらとヤクザ者が出てきてにらみ合う。居酒屋の窓を開けるとその様子がパノラマ劇場みたいに見渡せる仕掛けになっています。

つまり、観客はボクシングの特等席でかぶりつきになって試合観戦するようなもの。

そして登場人物はというと、実に見事にデフォルメな面々。品性のかけらもない博徒の親分と、絵に描いたような凶悪ヅラの手下ども。主要人物でも、丑寅の弟亥之吉(加藤大介)の眉毛なんかつながってるし、末弟の卯之助(仲代達也)は、見た目は優男ながら、マフラーに懐手その手には6連発の短銃と、漫画などに登場する典型的な悪役風情。

現実感などまるで無視した舞台設定と人物設定。黒澤監督の腕によりをかけたセッティングで、万全に仕込まれた極上のエンタテインメントをトコトン見物する。『用心棒』はそんな映画。

で、その画竜点睛、桑畑三十郎その人と言えば・・・、これがまた最高に魅力的。二つの博徒一家を片付けて町に平和を取り戻す。大義名分はそういうことですが、そのプロセス自体が楽しくて仕方がない様子。自分の作戦とことの展開にワクワクドキドキの様子がまあかわいい。

両の手を懐に突っ込んで、肩をグリグリって回す姿とかね、丑寅の屋敷に乗り込んで上がりがまちにどかっと腰掛けてチラッと奥を流し見たときの目元の魅力。極めつけは、クライマックスで卯之助の短銃(ピストル)と対峙した時。恐れもせず、すたすたと卯之助の前まで歩き、ニカっと笑うと、おもむろにススッと横移動。射撃をかいくぐると懐の出刃包丁をドカッっと投げてピストル封じ! この一連の動作、びりびり来ますねぇ。

通常は女優さんのグッとくるような仕草を見つけるのが映画鑑賞の楽しみの一つなんですが、この『用心棒』では三船敏郎にグッときっぱなし。強いわ、茶目っ気あるわ、知恵も働くし、色気もあるわで言う事なし。最高。

完成した作品を鑑賞する立場からすると、なんにも考えずに大喜びしてれば良いんですが、作る側にとっては、観客のイマジネーションに頼らずに、一方的にこれだけの面白さを提供するのってそんなに簡単に出来ることじゃないと思うのです。

黒澤監督の作品は一作観るごとに驚かされますが、『用心棒』のような作品も見せれば『羅生門』のような作品も見せる。実に様々なスタイルを見せてくれるところが本当に凄い。次の作品を観るのが楽しみです。

で、次はなにって、『椿三十郎』に決まってるじゃないですか^^。★★★★★

■映画評の宝庫:オカピーさんの『用心棒』評

<スタッフ&キャスト>
監督:黒澤明
製作:田中友幸
菊島隆三
脚本:黒澤明
菊島隆三
撮影:宮川一夫
美術:村木与四郎
振付:金須宏
音楽:佐藤勝
監督助手:森谷司郎/出目昌伸/吉松安弘/和田嘉訓
記録:野上照代
照明:石井長四郎

出演:三船敏郎/仲代達矢/東野英治郎/司葉子
    山田五十鈴/加東大介/河津清三郎/志村喬
    太刀川寛/夏木陽介/藤原釜足/沢村いき雄
    渡辺篤/藤田進/山茶花究/西村晃
    加藤武/中谷一郎/大橋史典/堺左千夫
    千葉一郎/谷晃/土屋嘉男/清水元
    佐田豊/大友伸/天本英世/大木正司
    寄山弘/大村千吉/本間文子/羅生門

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#0093『羅生門』黒澤明監督 1950年日本

羅生門

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お久しぶりでございます。ちょっと更新の間が開いてしまいました。。。

妖気漂う『蜘蛛巣城』『雨月物語』に惹かれて、行き着いた作品が黒澤明監督の『羅生門』。観てから一ヶ月以上もたってしまいましたが・・・。


山中で武士金沢武弘(森雅之)が変死していた事件に関して、捕らえられた盗人多襄丸(三船敏郎)は、山中で出会った武弘とその妻真砂(京マチ子)を騙し真砂を強姦、決闘となった武弘を悠々切り捨てたと証言する。

ところがその後、検非違使庁に出廷した真砂の証言はまったくこれと異なっていた。彼女は、多襄丸が立ち去った後、犯された自分を蔑む武弘の視線に耐え切れず、短刀で自害しようとしたが気を失った、気がついたときには武弘に短刀が突き刺さり絶命していたと述べ、池に身を投げようとしたが死に切れなかったと嘆き悲しむ。

さらに、霊媒師の口を借りて武弘自身が語る真相は、このどちらとも異なっていた。真砂は、妻になれと迫る多襄丸の誘いに艶然と応じ、その前に夫を殺してくれと頼んだ。多襄丸は真砂のあまりに冷酷な言葉に興ざめし、これを殺すか否かを武弘に問うが、真砂は隙を突いて逃げ出してしまう。一人取り残された武弘は、あまりの絶望のため自ら命を絶ったという。


芥川龍之介の原作「藪の中」で語られるのはここまで。事件を発見した杣売(志村喬)と、武弘・真砂の二人連れを目撃した旅法師(千秋実)、及び多襄丸を捕らえた放免の尋問が行われた後、上記3名の証言が続き、食い違った証言内容をそのまま放り出した形で話は終わってしまいます(→原作参照)。

原作の幕切れは取り付く島もないほどあっけなく、作者の意図や事件の真相は読者の解釈にゆだねられており、それゆえに様々な解釈論が飛び交ってるわけです。それが、原作の素晴らしさでもあります。しかし、黒澤監督は『羅生門』を製作するにあたり、原作よりはるかに明確な”作者の意図”を盛り込んでいるようです。

「人間の心の底に潜むエゴイズムは醜悪無残である。しかもなお、人間は、人間の善意を信じないでは生きていくことはできない。その心の戦いを、この映画は描かんとするものである。」(都築政昭著「黒澤明一作一生全三十作品」より)

そして、黒澤監督の意図に従い、映画『羅生門』には原作「藪の中」に登場しない、杣売(志村喬)による第四の証言が追加されることになりました。この証言内容の位置取りが絶妙。


杣売は、事件と係わり合いになることを恐れて一度は「何も見ていない」と証言したものの、実は事件の一部始終を目撃していた。しかし、その後の成り行きに人の心が信じられなくなり、雨宿りをする羅生門の下で、居合わせた旅法師(千秋実)と下人(上田吉二郎)に目撃した内容を語り出した。曰く・・・、

事に及んだ後で、多襄丸は真砂に土下座して謝っていた。心惹かれたからこその暴挙であり、ぜひ自分の妻になって欲しいと懇願している。真砂は女の口からは何も言えないと拒否するが、暗に主人武弘を殺して自分を奪い去るよう多襄丸を仕向ける 。しかし、縄を解かれた武弘は、他の男に犯された女などに命を賭けるつもりはないから、欲しくばくれてやると言い放つ。

このままでは二人の男に恥を見せた真砂の立場はなくなってしまう。真砂は口汚く男たちをなじりだす。やがて、彼女に煽られた男たちは憑りつかれたように闘い始める。しかし、双方ともに勇猛さの微塵もなく、腰も抜けんばかりの怯えた闘いようであった。多襄丸はやっとの思いで無様に命乞いする武弘に止めを刺す。しかし、決着を見届け、自らも錯乱気味となった真砂は、多襄丸の手も振り払い森の中へ逃げていってしまった。


原作では三つどもえとなって決着のしようもない三人の証言。杣売の証言が加わったことにより、それとの対比で、三人が隠そうとしたものが炙り出されます。

奇しくも羅生門の下人が「人間は自分にとって都合の良い嘘を真実だと信じ込みたがる」と言ったとおり。

事実を曲げた証言により、多襄丸は己の臆病さを隠して勇猛さを、真砂はずるがしこさを隠して貞淑さを、武弘は酷薄さを隠して潔さを最大限誇張しようとしていたことがわかります。

しかし黒沢監督の制作意図を実現するにはもう一工夫必要。それは、果たして杣売の証言は真実なのか、という疑問が残るからですね。彼の話を信じて、それを中心に全体を眺めると上記のような位置づけになりますが、彼も自分に都合のいいような嘘をついているのかもしれません。

「醜悪無残なエゴイズムで、自分に都合の良い嘘を真実だと信じ込む人間の性」を前提としているのですから、いかにして杣売の証言が真実であると証明するのか、これは結構難しい。

そもそも、羅生門で雨宿りする三人の関係は、絶対善の旅法師、絶対悪の下人、善悪の間を揺れ動く杣売という関係になっています。旅法師にとっては、心の支えを失ってしまうほどに狼狽する武弘殺害事件の経緯も、下人にとっては、どこにでも転がっている面白くもない話。その二人の中間に位置するのが杣売で、善も働けば悪も働く一番人間らしい存在。その杣売が最後に善の心に傾くか悪の心に傾くかで彼の話の真偽も決まるという様相となります。

そこに挿入される、同じく芥川原作の「羅生門」のエピソード(かなり趣を変えてありますが)が効いてますねぇ。羅生門に捨てられていた赤ん坊の衣服を、無慈悲にも剥ぎとろうとする下人。その悪党ぶりを激しく非難する杣売。しかし、実は武弘殺害の現場から真砂の短剣を盗んでいたことを下人に見抜かれて言葉もなく立ち尽くします。

杣売は、下人に衣服を剥ぎ取られて肌着だけとなった赤ん坊を自分の子どもとして育てようと決心します。旅法師に感謝されつつ雨上がりの羅生門から立ち去る杣売の姿。

このわずかなシーンにより、杣売の証言の信憑性をゆるぎないものにし、その結果として三人(多襄丸、真砂、武弘)の証言の醜悪さを暴きだす。同時に、ラストシーンの杣売の姿を通して、人間の善意を観客の心に刻みつける。まあ、見事ですよね。オリジナル原作ならともかく、完成された名作短編にこれだけ解釈を加えることができるとは、恐れ入るばかりです。また、映画ってこれヴィヴィッドに物語を伝えることができるのだと改めて感心することしきり。

この作品、そればかりではなく、もちろん独創的な映像も満載(冒頭の羅生門のセットは圧巻、人物と影の使い方は秀逸)、加えて主役級の役者たちの演技も素晴らしい。特に京マチ子は、それこそ魔物でもついているんじゃないかと思えるほどの名演技でした。そのあたりのことは、他に解説してくださっている素晴らしいブログがたくさんあります。

世界の黒澤恐るべし。★★★★★

ちょいと、このごろ、感想書けない病が深刻ですが、まああせらず急がずゆるゆると行きたいと思います。邦画特集のはずでしたが、しばらく気ままに観たい映画を観るということで。。。
まあ、そういうこともあるさ^^;


<スタッフ&キャスト>
監督:黒澤明 / 製作:箕浦甚吾
企画:本木荘二郎 / 原作:芥川龍之介「藪の中」
脚本:黒澤明、橋本忍 / 撮影:宮川一夫
美術松山崇 / 音楽:早坂文雄
装置:松本春造
出演:三船敏郎/京マチ子/志村喬
    森雅之/千秋実/本間文子
    上田吉二郎/加東大介

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#0089『蜘蛛巣城』黒澤明監督 1957年日本

蜘蛛巣城

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スクリーンに狂気とか、妖しさなどの漂う映画はめちゃくちゃ好きです。

ヒッチコック作品などの日常世界にふと生まれる狂気のシチュエーションとか、一部の優れたSF映画が持つダークな未来像なども魅力的。『吸血鬼ノスフェラトゥ』や『魔人ドラキュラ』などの怪物的異次元世界なども良い。

その中でも、日本人的な感性による幻のような妖しさ、陰々とした世界観には、DNAに直接働きかけてくるような一種独特の魅力を感じます。ちょっと抵抗し難いくらい。

今まで記事を書いた中では、吉田喜重監督の『嵐が丘』などがまさにそういう世界観で楽しめました(難もありましたが)。そして、吉田監督は、ほぼ間違いなくこの『蜘蛛巣城』の影響を受けて『嵐が丘』を作っただろうと思われます。

妖しい、妖しい~、はじめから最後まで妖しい。霧の中に蜘蛛巣城が浮かび上がるオープニング(バックの笛の音がまた素晴らしい)。すべての愚かしい物語が終わって再び城が霧の中に消えていくエンディング。”妖しいもの好き”の私の心を思い切りわしづかみにしてくれました。絶賛。

風が吹きすさび霧が立ち込める荒地に立つ山城、蜘蛛巣城。人を惑わす迷路のような森。森の奥に降りしきる雨。ラスト近くの霧の中から迫りくる森の木々。ぞくぞくしますねぇ。屋敷の板間の寂しいばかりの簡潔さ。障子に流れ映る松明の人魂のような怪しさ。武士たちの装束。物の怪。そして、浅茅。

浅茅の能面のような顔。うすら笑い。一歩踏み出した時の鼓の響き。歩くに連れた衣擦れの音。痺れ薬の入った酒を持ち、襖の奥の闇から浮かび上がってくる。

ああ、すべてが妖しい。素晴らしい。

物の怪に城主となるべく未来を予言された鷲津武時(三船敏郎)は、話を聞いた妻浅茅(山田五十鈴)にそそのかされ、主君を殺して城主の座を奪い取る。だが、結局は罪悪感に押しつぶされて自滅していく。

浅茅を演ずる山田五十鈴三船敏郎の二人の演技の妙にしばし呆然。黒澤監督は、武時と浅茅の二人の関係を見事に映像化します。

物腰静かでありながら、浅茅はあくまで理論的で野心的で。しゃべってもほとんど唇を動かさない。表情も変えない。身じろぎひとつせず、瞬きすらしない。

それに対して、豪胆に見えながら実は欲に目がくらみ小心物の武時。そんな自分の本性を隠すかのように常に声が大きくアクションも表情も派手。一見豪胆な大言や大笑が虚しい。三船敏郎の演技はもともと大げさ気味ではあるのですが、ことこの武時の性格を表現するには、これしかないというくらいの名演技。

浅茅が武時をそそのかす場面、静かに語る浅茅と騒々しく動き回る武時の対比が、浅茅に操られる武時の愚かさをこれでもかというくらい鮮明に描写します。特に浅茅のせりふをバックに武時一人が画面で動作するシーンになると、もう哀れで見ていられないほどにその関係が如実になります。

北の舘のがらんとした板間で見せる主君謀殺にいたる二人のやりとりは、双方の演技がぴしゃりと噛みあってこその名場面。操る浅茅も踊らされる武時も、共に強欲で浅ましく愚かです。

武時の最後は、言わずもがなの例の場面。主君を殺し、友を殺し、その罪の意識から乱心の末、ついに家臣の忠誠を失くした武時。まさに、宿敵が寄せてこようという城内で、裏切った家臣たちから雨あられと矢を見舞われるシーンは、思わず身を乗り出すほどの大迫力。弓の名人を多数集めて本物の矢を射たそうです。三船敏郎が不眠症になったという話もあるそうです。そりゃそうでしょうね。動き回る三船を掠めるように矢が突き刺さります。悲鳴を上げ、目を吊り上げ、刺さった矢を掻きとろうとする動作が壮絶でした。形相が変わっていました。

良いなぁ。脚本、演出、演技、映像、音楽、美術、編集・・・、すべてから醸し出されるこの雰囲気。なんと、妖しい。これぞ映画。これこそが映画ですねぇ。しびれた。良かった。★★★★★

<スタッフ&キャスト>
監督:黒澤明
製作:本木荘二郎/黒澤明
原作:ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』
脚本:小国英雄/橋本忍/菊島隆三/黒澤明
撮影:中井朝一
美術:村木与四郎
音楽:佐藤勝
記録:野上照代
照明:岸田九一郎
特殊技術:東宝技術部
出演:三船敏郎/山田五十鈴/志村喬/久保明/太刀川洋一
    千秋実/佐々木孝丸/三好栄子/浪花千栄子

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#0088『天国と地獄』黒澤明監督 1963年日本

天国と地獄

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ネタバレです。

最近テレビのリメイクドラマが話題になりましたが、この記事はオリジナル作品について。実はリメイクドラマは見ておりませんのですが、ネットで評判を見る限りは残念ながらオリジナルには及ばずということのようですね(まあ、当然か)。映画とテレビドラマの違いについて諸々考えるところもあり、ホントはドラマの方も見て比較してみたかったのです。思い出したときにはすでに終わってました・泣。

"全編手に汗握る”と言われる黒澤監督の『天国と地獄』。エド・マクベインの原作(キングの身代金)を大胆に拡張したストーリーは、確かにスリルもサスペンスもてんこ盛り。しかも、物語が4つに分かれていて、それぞれのパートで性格の違う味付けがされているように思えます。くるりくるりとドラマの様子が変わるものの、それぞれに見ごたえあり(大有り)。

(1)権藤(三船敏郎)邸での会社のゴタゴタと誘拐事件勃発から権藤が身代金支払いを決断するまで
実は誘拐されたのは権藤の息子と間違えられた運転手青木の子。しかし、3000万の身代金要求は権藤あて。権藤の手元には5000万の小切手がある。だが、この金は会社買収のために全財産をはたいて用意した金。ここで買収に失敗すれば権藤は築き上げてきたものすべてを失くしてしまうんですねぇ。この状況で繰り広げられる身代金用立てをめぐる権藤と関係者の究極の葛藤が(1)の要。舞台は権藤邸の中限定。一見冷酷なビジネスの鬼に見える権藤ですが、実は人一倍人情に厚い。頭では身代金など払えるものかと割り切りながら、なかなか最後の決断をくだせない。その権藤を中心に、息子をさらわれて千々に心乱れる無力な運転手青木(佐田豊)と、苦労知らずの無垢なヒューマニズムで身代金支払いを主張する妻(香川京子)。我が身大事で権藤を裏切る切れ者秘書河西(三橋達也)。そして、成り行きを見守るしかない仲代達也を中心とする警察陣。無骨な三船敏郎が苦悩の果てに身代金支払いを決意する、見事な心理劇を見せてくれます。

(2)身代金準備から、特急こだまを使った仕掛けでまんまと身代金を奪われるまで
電話での身代金要求のやりとりからも大胆な知能犯ぶりを匂わせていた犯人ですが、一番危険な身代金受け渡しに関して、あっと驚く発想で警察と権藤を出し抜きます。当時最新鋭の特急列車こだまを使った酒匂川における15秒間の身代金奪取は、(1)の静的な緊迫感とは打って変わって、スピード感みなぎる迫真の名場面。特急こだまをまるまる借り切り、実際に鉄橋に列車を走らせての一発勝負の撮影だったそうです。スタッフと役者たちのプロ根性と情熱が伝わってきます。

(3)警察の公開捜査開始から犯人竹内が特定されるまで
黒澤監督は児童誘拐犯罪に激しい憤りを感じていたそうで、仲代達也演じる戸倉警部はまさにそういう黒澤監督の分身。戸倉率いる捜査本部の執念の犯人追跡を描く刑事ドラマが(3)の見せ場。わずかな手がかりを手繰りに手繰って犯人にたどりつくプロセスとかけひきは実に緻密で、ロジカル。そして、決定的な手がかりとなる例のピンクの煙。映画的ですねぇ。このくだりは、原作にはないオリジナルストーリー。

(4)竹内を追い詰め、犯人逮捕、そしてラストまで
犯人竹内(山崎努)は、丘の上の権藤邸を見上げる貧困街のボロアパートに住むインターン医師。「夏は暑くて眠れない。冬は寒くて眠れない。」貧しさから来るやりばのない怒りが、いつしか毎日見上げる屋敷の主権藤に向けられ。。。と、逮捕後竹内自身が語りますが、その真偽のほどはどの程度なのでしょう。竹内の不気味な様子からは、従来の常識がまったく当てはまらない極めて不条理な犯人像が伺えます。社会的にも得体の知れない(と上の世代から思われた)若者世代が跋扈しだしたころでもあり、そういう社会不安的なものを体現したのが犯人竹内なのかもしれません。刑務所で面会する権藤の目の前で突如暴れ出す竹内とピシャリと閉められたシャッターが、犯人の本性について不気味な謎を含んだままの幕切れを見事に演出していました。伊勢佐木町の酒場や麻薬窟・黄金町の描写も含め、サイコチックな趣が(4)の見せ場であったと思います。

2時間半に及ぶ長尺作品ですが、これだけいろいろ詰め込んでバラけてしまわないのは、さすが黒澤明というところなのでしょうか。個人的には、(1)の三船敏郎演じる心理劇が強く印象に残りました。また、髪をなでつけ、髭を蓄え、カーデガン姿ながら引き締まった体型が伺える三船敏郎の容姿の魅力も目にとまりましたね。何度も見直したい映画。重厚で計算されつくした演出と、三船、仲代を中心とするカリスマ性を備えた役者の名演技。。。現代のテレビドラマがどの程度までこれに迫ることが出来たものか、ドラマもやっぱり見比べたかったなぁ。再放送期待。★★★★☆


<キャスト & スタッフ>
監督:黒澤明/製作:田中友幸/菊島隆三
原作:エド・マクベイン『キングの身代金』
脚本:小国英雄/菊島隆三/久板栄二郎/黒澤明
撮影:中井朝一/斎藤孝雄
美術:村木与四郎/音楽:佐藤勝
監督助手:森谷司郎/松江陽一/出目昌伸/大森健次郎
記録:野上照代/照明:森弘充

出演:三船敏郎/香川京子/江木俊夫/佐田豊/島津雅彦/仲代達矢/石山健二郎/木村功/加藤武/三橋達也/伊藤雄之助/中村伸郎/田崎潤/志村喬/藤田進/土屋嘉男/三井弘次/千秋実/北村和夫/東野英治郎/藤原釜足/沢村いき雄/山茶花究/西村晃/浜村純/清水将夫/清水元/名古屋章/菅井きん/山崎努

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黒澤明


天国と地獄天国と地獄
(2003/02/21)
三船敏郎、山崎努 他

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