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#0075『非情の罠』スタンリー・キューブリック監督 1955年アメリカ

非情の罠
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監督:スタンリー・キューブリック
製作:モリス・ブーゼル
脚本:スタンリー・キューブリック/ハワード・O・サックラークレジットなし)
撮影:スタンリー・キューブリック
編集:スタンリー・キューブリック
音楽:ジェラルド・フリード
録音:スタンリー・キューブリック
出演:フランク・シルヴェラ/ジャミー・スミス
   アイリーン・ケイン/ジェリー・ジャレット
   ルース・ソボトゥカ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

実に不勉強にして、スタンリー・キューブリックが1950年代にこういうノワール作品を作っていたことを知りませんでした。alllcinemaによると、キューブリックの長編作品第二弾で商業映画ではデビュー作にあたるとか。27歳で撮った作品です。

ストーリーは、アパートの窓越しにすむ下り坂のボクサーと場末の劇場の踊り子のサスペンスがらみの恋愛劇。いくつかのレビューで述べられている通り取り立ててどうということもない脚本に思えます。クライマックスのマネキン工場での格闘シーンも、実に粘っこく丁寧に描いているがそれもそこそこと言う感じ。

キューブリックの作品の主だったものは観ていますが、一番好きなのは、画面から異常性を感じることでしょうか。異常な行動、異常な心理、異常なシチュエーション、そういったものが映像からにじみ出てくるようなところがお気に入りです。

この作品の前半部分は、あまりにも平凡に見えて「ふーん、キューブリックも若い頃はごく普通だったのね」と思っていました。まじかに向かい合ったアパートの窓を通して男の様子と向こうの部屋の女の様子を同時に見せたりするあたりちょっとおもしろいかなと思えた程度。

しかし、後半女が姉の思い出を語る、バレリーナをバックにした回想シーンあたりから、急に映像は凝り始めます。劇場の市松模様の階段を女が上っていくシーンや、男と間違えられたボクシングマネジャーが路地に追い詰められる場面の路地と影の怖さ、道端でおどけるトルコ人の二人組みの違和感、隣の部屋をうかがう男の手の影がブラインドに映る不気味さ、ビルの屋上のチェイスシーン、それに極めつけは冒頭写真にもある物陰に隠れて様子を伺う男の頭上にぶら下がるマネキンの手首。観る側の感性にビンビン響いてくるような凝った映像が繰り出されてきます。しかも、どれも他のノワール作品にはないようなちょっと狂った感覚。これぞ、キューブリック。キューブリックは20代の頃からすでにキューブリックであったか。

何気ない映像にもなにか引っかかるものがあるなと思ってよく観てみると、最後の駅のシーンでストーリーに全然関係のないエキストラが主人公を凝視していたりして、こういうものもサブリミナル効果よろしく観る側に異常な雰囲気を感じ取らせるのかなとも思いましたが、考えすぎでしょうか。

絶品!とは言えませんが、後のキューブリックの名作にも思いをはせながら観ると実に興味深く楽しめる作品であることは間違いないと思います。★★★★☆

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