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#0083『ガラスの墓標』ピエール・コラルニック監督 1970年フランス

ガラスの墓標
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監督:ピエール・コラルニック
原作:F・S・ジルベール
脚本:フランツ・アンドレ・ブルジョ
撮影:ウィリー・クラン
音楽:セルジュ・ゲンズブール
出演:セルジュ・ゲンズブール/ジェーン・バーキン
    パウル・ニコラス/クルト・ユルゲンス
    ガブリエル・フェルゼッティ

   詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレです

セルジュ・ゲンズブールを一度観てみたかった。この作品を観た動機。

原題は「Cannabis」。フランス語で大麻のことらしい。ただし、麻薬の映画ではなく”愛とアクションの映画である”と最初に断り書きが入る 。

1970年の作品なので、ゲンズブールとバーキンが出会った二年後。一番いい頃でしょうか。ゲンズブール42歳、バーキン22歳のとき。

そのゲンズブールは、なんかヨレヨレで眠そうで無精ひげである。どの写真を見てもそうだが、この作品の役柄もそのまんまだった。毛皮のコートが怪しげだ。彼の音楽も特に意識して聞いたことはなく、スチル写真とバイオグラフィ以外でははじめて接するゲンズブールだが、彼の魅力を少しでも理解することができるだろうか。

この映画は三角関係の物語。若い男と中年の男、そして女が一人。三角関係の中心にいるのは若い男でも女でもなく、中年男のゲンズブールである。

彼が演じるのは、ロシア人の殺し屋セルジュ。デトロイトの組織で若いポール(ポール・ニコラス)と組んで仕事をしている。冒頭は、二人が殺し現場の後始末をしているシーン。あたりに転がる女の死体にシュールさが際立っている。転がっている若い女の死体をソファに座らせるようポールに指示するセルジュ。これはやさしさか?

ゲンズブールは、取引関係にあるフランスマフィアの手助けをするためにパリに送り込まれるが、空港についたとたんに敵対組織に拉致され重傷を負う。なんとか敵から逃れてパリ郊外にたどり着き、意識朦朧とするセルジュを大使令嬢のジェーン(ジェーン・バーキン)が助ける。二人は、いきさつをほとんど省いていきなり恋仲になる。が、そんないきさつはこの際どうでもよい。彼女の家で愛し合うセルジュとジェーンの姿が艶っぽくて良い。それで十分である。

ポールはセルジュの負傷を聞きつけてパリにやってくる。着いてみると、兄貴分のセルジュはジェーンにべったりである。二人はホモセクシュアルな関係ではなさそうだが、幼いところのあるポールはいたたまれない嫉妬心にさいなまれる。うまく自己表現ができず、床をぐるぐる転げ回ったりして嫉妬心をあらわにする。バーキンに対しても露骨に邪険な態度に出る。

しかし、ワンシーンだけ、麻薬窟に潜入したセルジュの身を案ずるジェーンをポールがいたわルシーンがある。心配そうなジェーンの後ろに立つポールが彼女に深呼吸をさせる。不安定なポールの心理を知っているだけに、肩越しに並ぶジェーンとポールの顔が妙にスリリングで印象的な場面だ。同じ中年男を慕う若い男女のツーショットは同時に、二人から慕われるセルジュの存在を強く意識させる。

ゲンズブールは作中で自分について「世の中のすべてに退屈している」と言っている。また、ポールは、セルジュのことを「何にも興味を示さず夢を見るように生きてきた。」人間だと言う。劇中のセルジュだけではなく本物のゲンズブールのことも言っているのだろうか。

この虚無的かつ刹那的な感じがゲンズブールの魅力なのだろうか?

バーキンは振り向いてニッコリ笑う風情がなんともいえず魅力的。この映画の中ではひたすらゲンズブールに対して従順である。 ゲンズブールを心配し、気遣い言われるとおりにして、抱かれる。やきもちポールに怒鳴られたりののしられても言い返すでもない。これはひょっとして無償の愛というやつか。

やさしさを秘めつつ虚無的に生きる男。ゲンズブールの魅力はそういうことか?

いやいや、これはこの映画の主人公”セルジュ”の魅力であってゲンズブールの魅力は違うところにあるらしい。

この映画、役はほぼ実名だし、わざわざ冒頭で愛の映画だと断ってるし、ゲンズブールとバーキンの熱愛ぶりも実生活そのままだろう。二人の仲に嫉妬する若者ポールをわざわざ配して、ラストシーンではセルジュをなくしたバーキンに号泣させて見せる。「どうだ、まいったか!」と言わんばかりに二人の愛を見せつけているのだ。臆面もなくおおっぴらにそんなことを映画にできてしまうその傲慢さがゲンズブールの本当の魅力なのかもしれないな。などと、ふと思った次第。

ゲンズブールの魅力なんて、たかだか映画ひとつ観ただけでつかみきれるようなしろものではないようだ(音楽聞かないと、音楽!)。が、”チョイ悪”とか言ってるようでは永遠に達することのできない中年の魅力の境地は確かに存在するらしい。★★★★☆

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