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#0089『蜘蛛巣城』黒澤明監督 1957年日本

蜘蛛巣城

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スクリーンに狂気とか、妖しさなどの漂う映画はめちゃくちゃ好きです。

ヒッチコック作品などの日常世界にふと生まれる狂気のシチュエーションとか、一部の優れたSF映画が持つダークな未来像なども魅力的。『吸血鬼ノスフェラトゥ』や『魔人ドラキュラ』などの怪物的異次元世界なども良い。

その中でも、日本人的な感性による幻のような妖しさ、陰々とした世界観には、DNAに直接働きかけてくるような一種独特の魅力を感じます。ちょっと抵抗し難いくらい。

今まで記事を書いた中では、吉田喜重監督の『嵐が丘』などがまさにそういう世界観で楽しめました(難もありましたが)。そして、吉田監督は、ほぼ間違いなくこの『蜘蛛巣城』の影響を受けて『嵐が丘』を作っただろうと思われます。

妖しい、妖しい~、はじめから最後まで妖しい。霧の中に蜘蛛巣城が浮かび上がるオープニング(バックの笛の音がまた素晴らしい)。すべての愚かしい物語が終わって再び城が霧の中に消えていくエンディング。”妖しいもの好き”の私の心を思い切りわしづかみにしてくれました。絶賛。

風が吹きすさび霧が立ち込める荒地に立つ山城、蜘蛛巣城。人を惑わす迷路のような森。森の奥に降りしきる雨。ラスト近くの霧の中から迫りくる森の木々。ぞくぞくしますねぇ。屋敷の板間の寂しいばかりの簡潔さ。障子に流れ映る松明の人魂のような怪しさ。武士たちの装束。物の怪。そして、浅茅。

浅茅の能面のような顔。うすら笑い。一歩踏み出した時の鼓の響き。歩くに連れた衣擦れの音。痺れ薬の入った酒を持ち、襖の奥の闇から浮かび上がってくる。

ああ、すべてが妖しい。素晴らしい。

物の怪に城主となるべく未来を予言された鷲津武時(三船敏郎)は、話を聞いた妻浅茅(山田五十鈴)にそそのかされ、主君を殺して城主の座を奪い取る。だが、結局は罪悪感に押しつぶされて自滅していく。

浅茅を演ずる山田五十鈴三船敏郎の二人の演技の妙にしばし呆然。黒澤監督は、武時と浅茅の二人の関係を見事に映像化します。

物腰静かでありながら、浅茅はあくまで理論的で野心的で。しゃべってもほとんど唇を動かさない。表情も変えない。身じろぎひとつせず、瞬きすらしない。

それに対して、豪胆に見えながら実は欲に目がくらみ小心物の武時。そんな自分の本性を隠すかのように常に声が大きくアクションも表情も派手。一見豪胆な大言や大笑が虚しい。三船敏郎の演技はもともと大げさ気味ではあるのですが、ことこの武時の性格を表現するには、これしかないというくらいの名演技。

浅茅が武時をそそのかす場面、静かに語る浅茅と騒々しく動き回る武時の対比が、浅茅に操られる武時の愚かさをこれでもかというくらい鮮明に描写します。特に浅茅のせりふをバックに武時一人が画面で動作するシーンになると、もう哀れで見ていられないほどにその関係が如実になります。

北の舘のがらんとした板間で見せる主君謀殺にいたる二人のやりとりは、双方の演技がぴしゃりと噛みあってこその名場面。操る浅茅も踊らされる武時も、共に強欲で浅ましく愚かです。

武時の最後は、言わずもがなの例の場面。主君を殺し、友を殺し、その罪の意識から乱心の末、ついに家臣の忠誠を失くした武時。まさに、宿敵が寄せてこようという城内で、裏切った家臣たちから雨あられと矢を見舞われるシーンは、思わず身を乗り出すほどの大迫力。弓の名人を多数集めて本物の矢を射たそうです。三船敏郎が不眠症になったという話もあるそうです。そりゃそうでしょうね。動き回る三船を掠めるように矢が突き刺さります。悲鳴を上げ、目を吊り上げ、刺さった矢を掻きとろうとする動作が壮絶でした。形相が変わっていました。

良いなぁ。脚本、演出、演技、映像、音楽、美術、編集・・・、すべてから醸し出されるこの雰囲気。なんと、妖しい。これぞ映画。これこそが映画ですねぇ。しびれた。良かった。★★★★★

<スタッフ&キャスト>
監督:黒澤明
製作:本木荘二郎/黒澤明
原作:ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』
脚本:小国英雄/橋本忍/菊島隆三/黒澤明
撮影:中井朝一
美術:村木与四郎
音楽:佐藤勝
記録:野上照代
照明:岸田九一郎
特殊技術:東宝技術部
出演:三船敏郎/山田五十鈴/志村喬/久保明/太刀川洋一
    千秋実/佐々木孝丸/三好栄子/浪花千栄子

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グリーンベイさん、こんばんは。

この作品は黒澤監督独特の”妖気”を十分堪能した映画で、生涯ベスト10に入るほど好きです。今日、溝口監督の『雨月物語』を観たのですが、こういう作品は日本より外国の評価の方が高いようですね。いかにも日本的な情念の世界を、最近トンと映画では見かけなくなりました(最新の撮影技術ではこういう雰囲気を出せないのかもしれない)が、日本人としてきちんと観るべき映画ではないのか、などとも思う次第です。

「蜘蛛巣城」・・・。

 FROSTさん・・・今晩は。
うーーーん。「蜘蛛巣城」(57)・・・「七人の侍」(54)かた3年経てこの作品に取り組んだ。黒澤監督も気力充実の時期だった。この作品はシェイクスピア劇の映画化では傑作の一本と世界的にも高い評価を受けている・・・。作品の成功は筋書きの確かなこと・・・脚色スタッフ陣が揃いもそろっていたことを上げねばならない。(監督・小国英雄・菊島隆三・橋本忍)
 西洋劇を日本の封建時代に移し変えているが、全く違和感もなく・・・それがまた原作に近い形で映画化されている。又、流石、監督の演出は登場人物の心理状況を憎いほど巧みに描き出していた・・・。浪速千栄子の魔女、山田五十鈴の浅茅役は熱演であった・・・。城の中も能の要素を意識した様式美は黒澤監督ならではの豊かな感性としか云い様がない。映画少年もこの辺が堪らなく好きなのである・・・。
最後のシーン・・・無数の矢が射られ、その一本が三船の首を貫通する・・・この衝撃的な死のシーンは名場面として強く記憶に残っている・・・。
57年度のキネ旬ベスト10では・・・今井正の「米」と「純愛物語」が1位と2位にランクされた・・・「蜘蛛巣城」は5位であった・・・。このスケールの面白い作品だがインターテイメントはこの種のベスト10選出には弱い側面が確かにあるようです・・・。
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