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#0091『雨月物語』溝口健二監督 1953年日本

雨月物語

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ネタバレです。

妖しい映画の虜になってしまったので、もう一本。。

溝口健二監督の『雨月物語』。1953年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を獲得してますね。この年は、最高賞である金獅子賞は該当なし。同じく銀獅子賞受賞作には、フェリーニの『青春群像』やマルセル・カルネの『嘆きのテレーズ』などの名が見えます。また、銅獅子賞にはイヴ・アレグレの『狂熱の孤独』。うーん、これは確か植草甚一氏が著書で紹介していた映画ではなかったか。これも見たい、なぁ。

さて、『雨月物語』。ラストの宮木(田中絹代)の語りで不覚にも泣いてしまった。作品評をいろいろ見ていると、やはりそこで泣いた人はいるようで、少し安心。

上田秋成の「雨月物語」は9つのお話からなる連作物語だが、溝口版『雨月物語』は、その中の二編をミックスして映画化したもの。

貧しい陶工源十郎(森雅之)は、戦のドサクサに紛れて粗製濫造の焼き物を高値で売りさばき、商売の味を占める。貧乏から抜け出したい、妻宮木(田中絹代)にもきれいな着物を買ってやりたい。その一心で源十郎は、妻の心配をよそに、義弟藤兵衛・阿浜夫婦も伴って二度目の商いのため長浜へ向かう。しかし、戦が激しく道中が危険となったため妻宮木と息子源市を引き返させる。あとの三人は旅を続け、ついに商いは大成功をおさめる。

源十郎は、陶器を買い求めた良家の姫君若狭(京マチ子)に誘われるまま、彼女と侍女右近(毛利菊枝)が住む朽木屋敷に長逗留し、ついに若狭と相愛の仲となる。しかし、実は彼女らは無念の思いから甦ってきた死霊たちであった。老僧の助けを借りてからくも逃げ出した源十郎は、すべてを失って故郷の我が家に帰りつくが。。。

若狭を演じている京マチ子は大映の看板。美しい顔立ちと抜群のプロポーションで海外でも人気があり、カンヌやヴェネチア、米国アカデミー賞でも名を知られた大女優であった。先日観た溝口監督の『赤線地帯』(56)では、横紙破りだが憎めない娼婦役を演じ、その肢体の魅力をふりまいたが、今回は能面のような化粧にあでやかな着物を着こなし、その雰囲気と存在感だけでも十二分に魅力的。

あの世とこの世が交じり合い、生きている者と死んでいる者が同様に存在するという世界観は、日本独特のものではないのだろうが、少なくとも西欧風の即物的モンスター世界などとは一線を画して、非常にスピリチュアルかつ幻想的で日本人の感性に訴えかけてくるものがある。

死霊若狭は、織田信長に攻め滅ぼされた一族の姫。女としての幸せを知らぬまま死んだ若狭を不憫に思った侍女右近(こちらも死霊)が、せめて一度だけでも男に愛される幸せを味あわせたいと願い、若狭を連れてあの世から舞い戻ってきたのである。死んでもなお癒せない悲しみや無念が迷いとなって、死者を生前と同じ美しさでこの世に存在させている。その危うい存在を演じる京マチ子妖しさは素晴らしい。

しかし、迷いがあるのはなにも死んだものばかりではない。生きている人間も同様で、金儲けに目のくらんだ源十郎、武士にあこがれるばかりで地に足の着かない藤兵衛、娼婦に身を落とす阿浜と、登場人物みんなが煩悩を抱えている。

その中で宮木だけが、夫の身を案じ、息子を守り、ただただ家族の幸せを願っている。田中絹代の素朴な容姿と台詞回しが実に甲斐甲斐しく映って彼女に感情移入することはなはだしい。生きている者、死んだ者の煩悩が入り乱れる中で、唯一私欲のない宮木はこの世界を超越した存在である。そしてその宮木こそが死霊の誘惑から目覚めた源十郎の、唯一帰るべき先であった・・・はずだった。

源十郎が足取り覚束ず、宮木の名を呼びながらようやく自宅に戻ってくる。久々の我が家は荒れ果て、廃屋となっている。源十郎が家の入り口をくぐる。妻宮木の名を何度も呼び、”誰もいない囲炉裏端”を過ぎ、裏口に出る。

源十郎の姿を、溝口流長回しでカメラが追う。裏口を出た源十郎は、宮木を呼びつつ、もう一度家の外を表口に向かう。カメラは室内から窓外を狙い、表に回る源十郎を途切れることなく捉え続ける。そして源十郎が再び表口から入ってくる。宮木の名前を呼んでいる。

カメラがもう一度囲炉裏端に差し掛かると・・・、炉端には灯がともり、そこに宮木がいて、温かい鍋を煮ながら夫を出迎える。もうこの時点で、私は涙目状態。この場面はすごすぎる。

源十郎は、大いに喜び宮木を抱き、子を抱き、何度も詫びつつ、酒に酔う。宮木は甲斐甲斐しく鍋をよそい、源十郎の世話を焼く。。。

もちろん、この宮木は幽霊である。

彼女は源十郎と別れて国に帰る途中、わずかな握り飯を狙って襲ってきた落武者に、槍で突き殺されていた。しかし、彼女は、自らの無念のためではなく、自分を忘れて帰らなかった夫を出迎えるために甦ってきた。今は庄屋の家に引き取られている息子源市と源十郎を引き合わせるために、あの世から帰ってきたのである。

生死を越えて夫を気遣う、宮木の健気さが哀しい。酔いつぶれて寝てしまった源十郎と子の横で、夫のぞうりを揃え、物思いに沈む様子で繕い物を始める宮木。破れ戸から徐々に日の光が差し込み朝を迎えるシーンのはかなさ。

源十郎は煩悩に取り付かれ、魔物に魅入られていたとはいえ、その代償はあまりに大きかった。朝になってすべてを察した源十郎は、宮木の墓にすがって泣き、人が変わったようにひたすら仕事に精を出すようになる。

あの世から聞こえる宮木の語り。

墓で泣く源十郎を励まし、焼き物の仕事を手伝えることを喜び、ようやく訪れた家族の幸せに安堵する宮木の語り。

  いろいろなことがありましたねえ。
  今、あなたはやっと私の思うお方になって下さった。
  と・・・、思ったとき、私はもう、この世の人ではなくなっていたのです。
  これが、世の中というものでしょうねぇ。。。

なぜ、宮木の生きている間に、源十郎はこの幸せを味あわせてやることが出来なかったか。お互いを思いやりながら、気が逸り、魔がさし、源十郎は宮木を死なせてしまった。しかし、死んでもなお宮木は・・・いかん、また泣きそうだ。。。

人ごとではなく女房は大事にしなければいけないとも思い。。。まあ、それはさておき。

しかし、日本映画は素晴らしいですねえ。しばらく、邦画でいきます。溝口健二、小津安二郎、黒澤明、やはりこのあたりから。★★★★★

<スタッフ&キャスト>
監督:溝口健二
製作:永田雅一
企画:辻久一
原作:上田秋成「雨月物語」
脚本:川口松太郎/依田義賢
撮影:宮川一夫
美術:伊藤熹朔
編集:宮田味津三
作詞:吉井勇
音楽:早坂文雄
助監督:田中徳三
出演:京マチ子/水戸光子/田中絹代/森雅之/小沢栄太郎
    青山杉作/羅門光三郎/香川良介/上田吉二郎/毛利菊枝
    南部彰三/光岡龍三郎/天野一郎/尾上栄五郎/伊達三郎
    沢村市三郎//横山文彦/玉置一恵/藤川準/福井隆次
    菊野昌代士/大美輝子/小柳圭子

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雨月物語
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グリーンベイさん

>おめでとう御座います。
ありがとうございます・笑。結婚生活も長くなると、こういう大切なことを忘れがちでいけません。
作品については、前回の『蜘蛛巣城』同様、完全に魅了されてしまいました。しかし、さらに上がありますか。。『残菊物語』もぜひ観たいと思います。

 FROSTさん・・・今日は。
うーーーん。<人事ではなく女房は大切にしなければいけないと思う>・・・最後に此の言葉に到達しましたか・・・。おめでとう御座います。
映画少年流に結論から言えば、この「雨月物語」(53)は現実世界と超自然世界の境を一部重ね合わせながら映像をあくまでも優美にそして精緻にのコントロールしている・・・しかし、この点は確かに評価されてしかるべきだが・・・実は<男女の愛とか夫婦愛>をテーマに据えているのではと思うのですが・・・。
映画少年はわが国の三大巨匠監督と云えば小津・黒澤・溝口と思っている・・・。いずれの監督作品は欧米でも高く評価されている・・・。でも溝口監督のこの「雨月物語」が彼の最高傑作とは言いにくい・・・やはり「残菊物語」(39)あたりは名作中の名作ではないかと記しておきたい。
本作品は53年度キネ旬ベスト10では第3位にランクされている・・・。
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