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お茶漬けの味

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前回、「しばらく邦画でいく!」と宣言してしまいましたので、オールド・ムービー・パラダイス!に放置してある邦画の記事を移しておこうと思います。あんまり妖しくありません。

しかし、前に書いたやつって恥ずかしくて読めたもんじゃない。なかなかこちらに持って来れなくて困ります。本当は、この機会にもう一度見直せばいいんですが。

以下、転載文。

佐竹茂吉(佐分利信)と妙子(木暮実千代)夫婦は見合い結婚して7〜8年、女中を雇う裕福な暮らし。取り立てて不仲というわけではないものの、微妙なすれ違いをお互い感じながら過ごしている。資産家の娘で物事にはっきりし、行動も洗練された妙子から見ると田舎育ちののんびりした茂吉の鈍感さが気に入らないらしい。ある日、姪の節子(津島恵子)に見合い話が持ち上がるが、二人の夫婦仲を間近に見ている節子は見合い結婚に夢を持つことができず、当日見合いをすっぽかしてしまう。このことがきっかけで、佐竹夫婦の感情のすれ違いが表面化し、妙子は家を出てしまうのだが、その間に茂吉の海外赴任の話が持ち上がり・・・。

「週に一本小津安二郎」、三本目は『お茶漬の味』。前回レビューした『東京物語(1953)』”『麦秋(1951)』の間に入ってくる1952年の作品で、音楽以外同じスタッフですね。今回の”微妙な不協和音”は夫婦のすれ違い。相手のやることなすことどうも気に入らないという例のあれですね。

生まれ育ちも生活環境も全く異なる他人が結婚して一緒に暮らしていればこういう不満があるほうが当たり前ではあります。が、やっぱり人間は都合良くできているもので、自分のやり方や考え方を相手にも求めてしまうわけで、そこに不幸と言えば不幸な状態が生じてしまうことになります。

本作の主人公佐竹茂吉のキャラクターが絶品ですね。会社では社長の覚えもめでたい有能な管理職ですが、長野出身の朴訥でのんびりとした性格で、万事につけ”気にしない”タイプ。佐分利信のとぼけた演技に加えて、こちらもかなりのんびり屋の岡田(鶴田浩二)とのちょっと間の抜けた掛け合いも調子よく、そのあたりの性格付けが良く伝わってきます。

こういう性格が、妻妙子から見ると”鈍感”と写ってしまうのですが、実は妙子がうそをついて出かけた友人との修善寺旅行なども、茂吉はちゃんと見抜いている。気がついていないのではなく、気がついているけれどそのことで相手に何かを求めない、そういうタイプのようです。

上流階級出身の妙子は、友人雨宮アヤ(淡島千景)が称して、”何からなにまで自分の思い通りに行かないと我慢できない”ということなので、この夫婦は「突っ込む妻と受ける(受け流す)夫」という構図になります。

序盤我儘ぶりが目立つ妙子ですが、ラストシーンを見ると本来愛情豊かな女性なのではないかと、も思います。茂吉はパチンコを評して「一人になれるのがいい」と言っていますが、人間関係の中にも一人の時間を求める少し壁のあるタイプなのかもしれません。その裏返しが相手にも何も求めないということなのか。とすると妙子はそんな夫への不満もあるのでしょうね。もっとこっちを向かせたいというか、自分にもっと愛情をそそいで欲しいというか、そういう思いが事細かな突っ込みになってしまうのかもしれません。

ともあれ、そんな二人が茂吉の海外赴任を機に理解しあうわけですが、普段女中任せで勝手のわからない台所で二人してお茶漬けを作るシーン。紆余曲折の末ようやくたどり着いた相互理解の世界で、お互いを気遣いながらなれない炊事をする場面には思わず涙ぐんでしまいました。

『東京物語』の妻との死別と子供夫婦との関係、『麦秋』の娘の結婚と家族の別れ、そして今回の『お茶漬の味』で、夫婦のすれ違いと相互理解と、小津作品を三本観てきたわけですが、個人的には本作が一番実感できるテーマでした。その分作品のいろんな部分で実生活と照らし合わせて考えさせられ、「なんかいい映画の見方してるなぁ」なんて一人満足しているのでした(笑)★★★★★

おまけ1
この作品でも結構若々しい笠智衆ですが、今回は戦争中の茂吉の部下で、現在はパチンコ店経営者という脇役での出演。シンガポールのことを思い出して、しきりに「よかったよかった」としつこいほど繰り返すくだりがほのぼのとしていてとってもいいです。

おまけ2
この映画気に入っているのは店の名前。とんかつ屋「カロリー軒」とパチンコ屋「甘辛人生教室」。ネーミング最高です。

<スタッフ&キャスト>
監督: 小津安二郎 / 製作: 山本武
脚本: 野田高梧、小津安二郎 / 撮影: 厚田雄春
美術: 浜田辰雄 / 衣裳: 斎藤耐三
編集: 浜村義康 / 音楽: 斎藤一郎
出演: 佐分利信/木暮実千代/鶴田浩二/
    笠智衆/淡島千景/津島恵子/
    三宅邦子/小園蓉子

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