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#0115『蜘蛛女のキス』ヘクトール・バベンコ監督 1985年ブラジル/アメリカ

蜘蛛女のキス
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お願い:完全ネタバレです。作品内容を知りたくない方は読まないでください。

ブエノスアイレスの刑務所で同じ房に収監されているバレンティン(ラウル・ジュリア)とモリーナ(ウィリアム・ハート)。バレンティンは筋金入りの革命闘士、モリーナは街で未成年者を誘惑して収監されたホモ。まったく接点のない二人が次第に心を通わせていく様を描く。原作はマヌエル・プイグ。

二人の間で、ある映画の話が頻繁に語られる。ナチの将校を愛してしまうレジスタンスの歌手レニ(ソニア・ブラガ)の物語。モリーナは、映画を隅々まで再現するように緻密に、陶酔しつつ語る。彼(彼女)にとって、それは純愛の物語である。しかし、革命しか頭にないバレンティンにとっては、祖国を売った裏切り者の物語以外の何ものでもない。しかも、彼にとって映画などは忌むべき無駄な娯楽にすぎない。バレンティンは、モリーナに背を向け、彼(彼女)の話を鼻で笑う。一方、モリーナも囚人というつらい現実から映画の世界に逃避しているにすぎない。

まったく接点のない二人の関係に変化が現れるのは、モリーナが所長に呼び出されてから。母の容態が悪化しているのに保釈の可能性はないと告げられ悲しむモリーナだが、実はバレンティンを探るスパイになることを強要されていた。

バレンティンから情報を聞き出すために、食事に薬が盛られる。バレンティンが食べるはずの皿をモリーナが食べたため一度目は失敗。二度目にバレンティンが薬入りの皿を取る。この一連の出来事が二人の関係を急速に縮めることになる。反発しあいながらも互いの容態を心配し看病することで、今まで閉ざされていた互いの心の底を垣間見る。

モリーナは“本物の男”への愛にのみ生きることに憧れ、身も心も女になりきっているように振舞っていた。しかし、実は自分が本物の女ではないと言うことに身を切るような絶望感を抱いている。彼女は“本物の男“を心から求めるのだが、”本物の男“が愛するのは”本物の女“である。一方のバレンティンもまた、楽しみも喜びもすべてを捨てて革命に殉じると公言していた。しかし、実は恋人マルタに対する思いを捨てきれない。そして、同時にそんな自分を責めているのである。

バレンティンとモリーナ。対極の二人に見えたが、本当は、理想とする自分に対して、どうしてもそうなりきれない自分がいて、そのことに対して深い悲しみを感じ、苦しんでいる同類であったのだ。にほんブログ村 映画ブログへ

モリーナの心情は、彼(彼女)が何度か心のうちを吐露するため把握しやすいが、バレンティンは鉄の闘志で外面を固めているため、めったなことでは本音を口にしない。そんなバレンティンが心のうちをさらけ出したのはモリーナの行いによってである。

腹痛に倒れたバレンティンは、ひどい下痢に襲われパンツの中に脱糞してしまう。ここでのモリーナの振る舞いは素晴しい。「ひどい臭いね・・・」と一言だけ言うものの、その後はいやな顔ひとつせず、「情けない・・」と消沈するバレンティンをなぐさめながら、ズボンを脱がせ、パンツを脱がせ、シャツを脱がせる。自分のタオルできれいに身体を拭いてやり、自分のバスタオルで彼をくるんで、ベッドに寝かせる。ここまでのいたわりと献身を示すことができるのは母親をおいてほかにはいない。母のごとき無償の愛情を示されて、ついにバレンティンは隠していた心情を語る。

モリーナはバレンティンを愛し始めるのだが、一方所長からはたびたび呼び出されて情報収集の成果を問われる。この立場を利用して、豪華な食料品やタバコをせしめるモリーナの生活力はいかにもおかしいが、彼女をめぐる板ばさみの事態は徐々に切羽詰ってくる。モリーナは出所をきっかけにバレンティンから情報を聞き出すことを約束し、ついに二人は別れることとなる。

翌日保釈されることをバレンティンに告げ、モリーナは蜘蛛女の映画の話をする。しかし、これは映画ではなく、モリーナが自分の切ない心情をこめた作り話である。蜘蛛女は間違いなくモリーナ本人。蜘蛛女は、自分の身体から出した蜘蛛の糸に束縛され一人無人島で暮らしている。その束縛はモリーナの“本物の女”になれないという根源的な苦しみから来ているのだろうが、バレンティンを愛してしまった今となっては、所長に抱きこまれて裏切り行為を働いていることも大きな束縛となっているに違いない。

無人島にまったくそぐわない真っ黒なラメのドレスを着込み、一人で暮らす蜘蛛女のもとに流れ着いた男はバレンティンである。蜘蛛女は、食べ物を与え、傷の手当てをし、愛を注いで彼を生き返らせる。モリーナが刑務所の中でバレンティンにしてきたことそのものだ。そして、気がついたバレンティンに蜘蛛女は涙を流す。

「なぜ泣く・・?」というバレンティンの質問に、モリーナは答えることができない。答えられるはずがない。「なぜ、いつも説明させるの・・?私だって疲れて苦しんでるのに・・・」そう答えるのが精一杯のモリーナの心情が悲しい。しかし、彼女はついに愛を告げ、思いはバレンティンに届く。最後の夜に二人は結ばれる。にほんブログ村 映画ブログへ

翌朝、モリーナは任務の失敗を所長に告げるが、所長は以外にもあっさりと彼女の言葉を受け入れ、司法大臣からの保釈許可証を手渡す。バレンティンの元に戻ると彼は同志リディアの電話番号と伝言を告げようとする。頑なに拒否するモリーナ。もうバレンティンを裏切る必要はない。いったんはあきらめるバレンティンだが、彼の最後の言葉がモリーナの決心を変える。「外に出たら、二度と踏みつけにされるな、誰にもそんな権利はない」。自分のうつろな人生を悔いて生きてきたモリーナはついにその伝言を聞いた。そして二人は最後のキスをする。

出所したモリーナは、母の元に戻り、昔の仲間たちとも再会する。しかし、彼女"本物の男”への愛を得たモリーナの心はうつろである。ついに公衆電話からリディアに連絡をとり、会うことを約束する。しかし、彼女には公安警察の監視がついていた。

眠っている母に別れを告げ、目印の赤いスカーフを身につけて約束の場に向かうモリーナ。公安警察にレジスタンス組織との接触の現場を襲われる。そして、助けを求めたリディアに、口封じのために射殺される。彼女は愛するバレンティンのために、危険を承知でリディアに会った。それは、自分の空ろだった人生へのけじめでもあった。

モリーナの遺体が、公安警察の手によって廃材置き場にうち捨てられた頃、バレンティンは激しい拷問を受け、虫の息で刑務所のベッドに横たわっている。死の瞬間、彼の元に現れたのはマルタ。彼の魂は、現世での革命という鎖から解き放たれて、マルタと二人、監獄から抜け出し、穏やかな海にボートで漕ぎ出していく。。。

モリーナの切なる想い。遂げられたかに見えたバレンティンへの想いは、しかし、今際の際のバレンティンには届かなかった。バレンティンはやはり"本物の女”マルタを愛していた。。。

モリーナの心情があまりにもやるせなく、行き場がない。★★★★★

<スタッフ&キャスト>
監督:ヘクトール・バベンコ
製作:デヴィッド・ワイズマン
原作:マヌエル・プイグ
脚本:レナード・シュレイダー
撮影:ロドルフォ・サヴチェス
音楽:ジョン・ネシュリング

出演:ウィリアム・ハート
    ラウル・ジュリア
    ソニア・ブラガ
    ホセ・リュウゴイ
    ヌーノ・レアル・マイア
    デニス・デュモント

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オショさん、こんばんは。
ラウル・ジュリアも良かったですね。とても『アダムス・ファミリー』と同じ人とは思えませんけど。初見だったものでウィリアム・ハートでもういっぱいいっぱいになってしまって、ラウル・ジュリアまで余裕がありませんでしたよ・笑。
今、この作品、VHSは廃盤でDVDはないようですから、観ることができてラッキーでした。ブルーレイで蘇って欲しいものです。

この映画は懐かしいですねぇ…。
ウィリアム・ハートがアカデミー主演男優賞を取った名作ですね。
ウィリアム・ハートも切なかったけど、この映画で初めて見たラウル・ジュリアに心奪われましたね、わたくしは。
とても良い俳優さん(コメディも達者にこなしていたし)でしたけど、早死にしてしまいましたね。
つくづく残念…。
スティーヴン・ブシュミが何となく彼に似てるのね。
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