スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

#0002『裁かるゝジャンヌ』カール・T・ドライヤー 1928年フランス

裁かるるジャンヌ

”LA PASSION DE JEANNE D'ARC”にほんブログ村 映画ブログへ

監督:カール・テオドール・ドライヤー
脚本:ジョゼフ・デルテーユ、カール・テオドール・ドライヤー
撮影:ルドルフ・マテ
 
出演:ルイーズ・ルネ・ファルコネッティ/ウジェーヌ・シルバン/アントナン・アルトー

詳しい作品情報はこちら
allcinemaIMDb(英語)


(この記事は、昨年7月に”オールド・ムービー・パラダイス!”に掲載したものを若干加筆修正したものです。今後このような形で記事を一つ一つ移動し、ブログを一本にまとめます。)

世の中にはなんという映画を作る人がいるのだろう。

ドナルド・リチーの「映画のどこをどう読むか」でレビューを見かけて以来、どうしても観たかった映画の一本。(2006年)7月は、「イワン雷帝」「新学期・操行ゼロ」「デルス・ウザーラ」「ゲームの規則」と観たかった映画をことごとく逃し(涙)、映画の神様に見捨てられたなぁとしょぼくれていたのだけれども、最後に一本だけ願いがかなえられました。DVDだけど大満足でした。

完全なフィルムはすでに存在しないと言われていた本作ですが、1984年にノルウェーでデンマーク語字幕の完全版ポジフィルムが発見されたらしい。ことの経緯は記事左下の"open↓”以下にメモしましたので興味のある方はどうぞ。にほんブログ村 映画ブログへ

さて、作品は良く知られているジャンヌ・ダルク(ルネ・ファルコネッティ)の異端審問を1日の出来事に凝縮してリアルに描いたもの。この”リアル”さを追求するために、ドライヤーは余計なものをすべてそぎ落としてしまいます。

”余計なもの”といってもそのそぎ落とし方が尋常ではありません。サイレント映画とはいえ伴奏音楽すらない全くの無音。スポークンタイトルも最小限。舞台となるルーアンの町の全景をセットで作ったにも関わらず一度もスクリーンに見せない。異端審問のシーンでも同じく審問場のセット全体は見ることができず、どの程度の広さでどのくらいの人数がその中にいるのか観客にはわからない。ドナルド・リチーによると、登場人物の誰と誰がどんな関係にあるかがわからないように、目線まで計算されているという。その徹底ぶりの中で、画面のほとんどは登場人物の顔のクローズアップです。

”必要最低限のものしか写らない”スクリーン上でノーメイクの役者たちの表情は極めてリアルで息苦しいほどですが、その上その表情が見事に変わる。。。

人間なので表情が変わるのは当たり前ですが、審問官の表情が侮蔑から狼狽そして怒りへ、ジャンヌの表情が恐れから恍惚そして落胆へ。つなぎのないワンショットの中でぐぐぐぐーっと見事に表情が変わっていくその迫力。画面から迫ってくる迫力に思わず息を詰めて見つめてしまいます。

なんせ顔以外は写りませんから、演じる役者は表情の変化だけですべてをカバーしなければいけないのです。要求するドライヤーもすごいが、演じきるファルコネッティもまたすごい。彼女はもともと舞台俳優で、映画に出演したのは”裁かるゝジャンヌ”一本きりらしい。まさに”一本入魂”の演技は鬼気迫るなどというありきたりな言い回しではとても表現できません。にほんブログ村 映画ブログへ

徹底的に俗物として描かれる審問官の下卑た表情とたった一人で権力に立ち向かうジャンヌの敬虔さの対比は、主人公ジャンヌに対する観客の強烈な感情移入を呼び起こします。映画の中盤に差し掛かる頃には結末はわかっているものの、異端審問の行方を案じてこちらの顔も苦悩にゆがみ、手に汗握る。

そうやって限界まで感情移入した状態で迎えるクライマックスのジャンヌ処刑シーンは、もうね、これは絶対一生忘れないに違いありません。

覚悟を決めたジャンヌ。それでも死の恐れから逃れることは出来ず、思わず”せめて苦痛を与えないで下さい”と祈るその一言。最後の救いである十字架。火がつけられて焼け死んでいくジャンヌの姿はこれでもかというほど克明に描写され、1シーン1シーンごりごりと心の中に刷り込まれていきます。

こんな映画は二つとないでしょうねぇ。まさにサイレントの奇跡。というか映画の奇跡。これを観ずしてなんとする!★★★★★

【Technorati Tags】
         

裁かるゝジャンヌ クリティカル・エディション
裁かるゝジャンヌ クリティカル・エディションカール・TH・ドライヤー ルイーズ・ルネ・ファルコネッティ ウジェーヌ・シルバン

紀伊國屋書店 2005-08-27
売り上げランキング : 11896
おすすめ平均star


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


↓↓ブログランキングに参加しています。木戸銭がわりにワンクリックお願いいたします^^
にほんブログ村 映画ブログへ

ブログパーツ
以下、紀伊国屋発行クリティカル・エディション版DVDの解説書をもとに編集したオリジナルフィルムの顛末。映画本体と同じくドラマチック。

フランスで製作された本作品は、フランスで検閲を受ける前にデンマーク公開用のオリジナル版ポジ・フィルムが作成されデンマークに送られた(1928年4月)。

デンマークでは一切の修正なく検閲を通過し、いくつかの都市で上映された。

デンマークで公開されたフィルムはその後行方不明となった。ノルウェーの精神病院長が本作を観るためにこのフィルムを借り受けたが、その後返却せずオスロの病院倉庫に放置した、というのが行方不明の真相らしい。

一方フランスでは検閲時にカトリック教会からクレームがつき、パリ大司教の命令でシーンの削除・改変が行われた。

その結果、フランスでは検閲版が公開されることになり(1928年10月)、オリジナル版は試写会で上映されたのみとなった。

1928年12月、本作の編集済みオリジナル・ネガが保管されたドイツ・ウーファー社の倉庫から出火しフィルムは焼失してしまう。したがって、オリジナルフィルムはデンマーク版しかなくなってしまった。

製作元ソシエテ・ジェネラール・ドゥ・フィルム社は外国への販売用に、未使用ネガから再度作品を編集するようにドライヤーに要請する(オリジナルネガを作成した残りの未編集フィルムは83000m(オリジナルは2210m))。ドライヤーは要請に応え、結果できたのがいわゆる”第二版”ネガ・フィルムである。

アメリカ・日本・ドイツなど多くの国で第二版による公開が行われ、フランスでも第二版による再公開が行われた(1929年)。

しかし、第二版フィルムも1929年に火災にあい焼失。その上、製作元のソシエテ・ジェネラール・ドゥ・フィルム社が本作の膨大な制作費が響いて倒産し、未使用ネガも散逸してしまった。

各国で上映された第二版ポジ・プリントはその後さまざまな版によって保存される。

1940年代、映画史研究家ロ・デュカが本作のプリントの行方を調査し、倒産前にソシエテ社が保有していた未使用ネガを発見した。それを自ら編集して字幕と音楽をつけ、1952年にゴーモン社から一般公開した。この版は戦後本作の最も有名な版となった。

アメリカでは戦後、ニューヨーク近代美術館が1939年にパリのシネマテーク・フランセーズから入手した第二版35mmプリントから16mm版が作成され流通していた。その後、さまざまな場所で16mm版が違法コピーされ、1970年代にはこの海賊版が比較的手に入りやすい状態になっていた。

1960 年代半ば、デンマーク映画博物館(現デンマーク映画協会映画アーカイブ)のアーネ・クロウを責任者として本作品のプリント復元がおこなわれた。欧州各国に残されたフィルムを比較して、最良のショットを集めたもので、第二版以前のショットも含まれており最も権威のある版とされるようになった。

1984年、イタリアのヴェローナで行われたドライヤーに関する国際シンポジウム会場で行われた全作品上映会にて、突然本作品の完全オリジナル版が上映された。

その3年前の1981年に、上記ノルウェーのディケマルク病院の倉庫で本作品のデンマーク字幕版オリジナルネガを収めたフィルム缶が発見され、オスロの映画アーカイブに寄贈されていたが、その後3年間中を調べることなく放置されていた。

1984 年にアーカイブ担当者が中身を調べて本作品と確認したが、どの版かに興味を持つことはなかった。オスロ映画アーカイブは、フィルム不燃化処理のコストがかかることからデンマーク映画博物館に引取りを依頼。引き取ったデンマーク側では、オリジナル版と確認した後、イタリアのシンポジウムに出品すべく大急ぎで不燃化ネガを作成し上映に間に合わせた。

テーマ : ■■□ サイレント映画 □■■
ジャンル : 映画

コメントの投稿

非公開コメント

館長、こんにちは!

豆酢館長、人間筒状態は回復しましたか?こちらも生まれて初めて"咳喘息”なるものをわずらい、せきが止まらない状態ですが。お互い体には気をつけましょうね。
さて、この作品ですが、月並みながら感動の一言。ドライヤーの研ぎ澄まされた演出にも、ファルコネッティの奇跡のような演技にも圧倒されっぱなしでありました。
ところで館長の怒涛のレビューを読むにつけ思うのですが、映画の内容を正確に記述できるというのは大切なことですね。よかったとか悪かったとか好きだ嫌いだ言う前に、その映画が語りかけることを正しく把握することが大切だと改めて感じました。

ようやく…ようやくこの映画の感想を書き終わりました(/_;)。一体どんだけ時間がかかっとんねん!と自分で自分にツッコミたくなりますが、感想をまとめるのにこれほど苦労する作品も珍しいわけで。

言いたいことがあとからあとから溢れてくる…。そんな印象ですね。このクリティカル・エディション版は家宝であります。ドライヤー監督にはもっと多くの映画を撮って欲しかったし、ファルコネッティにはもっと多くの映画に出てもらいたかったですが、この作品を世に残してくれただけで奇跡だと思います。TBさせていただきました。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
★引っ越しました!★
お越しいただいた皆様、ありがとうございます。 新しくシネマぞろ★を始めました。下のリンクよりぜひお立ち寄り下さい!
場内ご案内
はじめてご来場のお客様は
こちらから
上映作品を探す

【上映作品INDEX】
⇒タイトル別/あ行-さ行
⇒タイトル別/た行-わ行
⇒製作年別/1910年代-1940年代
⇒製作年別/1950年代-2000年代
⇒ファーストインプレッションリスト
【特集INDEX】
⇒サイレント映画特集
⇒ヒッチコック特集
⇒フィルム・ノワール特集
【500円DVD INDEX】
⇒500円DVDリスト(07/12/09更新)
 全358タイトル

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。

ブログ内検索
カスタム検索
最近の記事を読む
コメント御礼!
トラックバック感謝!
上映作品ランキング


ご来場感謝!!
Google
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

文芸座館主

Author:文芸座館主

Blogranking.net

RSSフィード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

お気に入り!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。