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#0130『マルタの鷹』ジョン・ヒューストン監督 1941年アメリカ

マルタの鷹
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アーチャーとサム・スペード(ハンフリー・ボガート)の探偵事務所の元に、ブリジット・オショーネシー(メアリー・アスター)と名乗る美女が訪れ、サーズビーという男から妹を取り返してほしいと依頼する。アーチャーがサーズビーに接触するが射殺されてしまい、犯人と思われるサーズビー自身もその直後に殺されてしまいます。実はブリジットの依頼は嘘で、彼女は「マルタの鷹」と呼ばれるスペイン国王の秘宝争奪に関わっています。同じくマルタの鷹を狙うカイロ(ピーター・ローレ)と名乗る男もスペードのもとに現れ、破格の報酬で鷹探しをスペードに依頼。スペードはいやおうなくマルタの鷹争奪戦に巻き込まれていきます。

1941年のジョン・ヒューストン初監督作品。原作はハードボイルドの巨匠ダシール・ハメット。原作が映画化されるのは実はこの作品で三回目で、過去二回はいずれも興行的に芳しくなかったようです。1930年代の善悪感や映画的なヒーロー/ヒロインのあり方と、原作の内容に乖離があり、中途半端な映像化となったことが失敗の原因となりました。本作では原作に忠実な映画化に徹したことにより、“フィルム・ノワール”というひとつのジャンルを確立するほどのヒット作となりました。

この作品、マルタの鷹を巡る駆け引きも面白いのですが、特にラストシーンがすごく良くて、それについてはネタバレせざるを得ないので追記に書きます。ので、こちらでは俳優さんのことをちょっと。

この作品で特に印象に残る俳優さんが二人。(ボギーは言うまでもないので書きません)

一人目は、マルタの鷹を狙う怪しさ満点のカイロ。演ずるのはピーター・ローレ。ピーター・ローレは、『カサブランカ』で主人公リックの店で逮捕されるチンピラ偽造旅券屋役で印象に残っていました。顔立ちが独特なのですがハンガリー出身の俳優さんですね。1931年のフリッツ・ラング監督作品”M”で、なぜか気弱なロリコンにという設定にされた”デュッセルドルフの怪物”を演じて評判となりました。1964年に60歳でなくなるまでに約40本の映画に出演した名脇役。ヒッチコック作品にも出演しており、『暗殺者の家』の撮影中に、こめかみに大きな傷跡のメイク(魚の皮でつくっていたらしい)をつけたまま結婚式を挙げた話は有名です。

二人目はカイロのボス、ガットマンを演じるシドニー・グリーンストリート。
作品中、おもむろに「あのデブ」といわれるほどの立派な体躯。元々は舞台俳優でジョン・ヒューストン監督が惚れこんで出演を依頼したという逸話があります。この映画がデビュー作ですが、とてもはじめてとは思えない落ち着きのある演技が記憶に残ります。特に、ラストで一度くじけたかと見せかけてすばやく立ち直って去っていくあたりがなぜか好きなんですよ。翌年には、やはり『カサブランカ』で主人公リックの商売敵であるカフェ”ブルー・パロット”のオーナーを好演しています。

翌年の『カサブランカ』でも三人そろって(似たような役柄で)出演しているところをみると、当時かなり人気があったのだろうなと思います。★★★★★



以下は完全ネタバレですので、くれぐれもご注意ください(真犯人までもろバレ・・・)。



「相棒が殺されたら、犯人は絶対に逃がさない。それが探偵ってものさ」

さて、アーチャーが殺された後、スペードは事務所の看板からあっさり相棒の名前を消してしまい、アーチャーの机もそそくさと片付けさせてしまいます。そればかりか、実はアーチャーの女房とは不倫の仲。なのに、アーチャーの死後訪れてくる奥さんには全く冷たく、おまけに秘書とも怪しげ?金に汚く、暴力的で、依頼人ブリジットともできてしまうという無軌道ぶり。マルタの鷹を狙う敵ともかけひき、挑発、暴力と目的のためには手段を選ばない非情ぶりを発揮します。こういうところは、実にフィルム・ノワール的(この作品が元なので当たり前ですが)で、それまでの”善は善、悪は悪”の勧善懲悪的ヒーロー観とは一線を画すダークなヒーローぶりが見事です。

で、記事冒頭のセリフは、最後に明らかになったアーチャー殺しの犯人に対してスペードが言うせりふ。ラストシーンでヒロインを追い詰めて警察に引き渡すなどということは、当時の映画的常識からは考えられないことであったようです。

このシーン、スペードの表情は苦渋に満ちてますね。「俺は君が好きなのかもしれない。君が警察に捕まったらさぞ夢見が悪いだろう」とまで言っています。スペードは本当にブリジットを愛してしまっていたんでしょう。当然相手の気持ちも知っています。それでも最後の最後で、相棒の敵を討つ。恋愛よりも友情と復讐を選んだということになります。非情なダークさを見せながらも、心の芯の部分では死んだ相棒を思う一本気さというか、そういうものがこのヒーローの最大の魅力なのだとおもいます。そのあたりのキャラクターがきっちりと際立ったヒューストンの演出はまさに見事の一言に尽きると思いました。

<スタッフ&キャスト>
監督:ジョン・ヒューストン
製作:ハル・B・ウォリス/ヘンリー・ブランク
原作:ダシール・ハメット
脚本:ジョン・ヒューストン
撮影:アーサー・エディソン
音楽:アドルフ・ドイッチ

出演:ハンフリー・ボガート/メアリー・アスター
ピーター・ローレ/シドニー・グリーンストリート
ウォード・ボンド/グラディス・ジョージ
エリシャ・クック・Jr/バートン・マクレーン
ジェローム・コーワン/ウォルター・ヒューストン

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(2006/12/14)
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