
”MEET JOHN DOE”
合理化を進める新聞社からクビを言い渡されたアン(バーバラ・スタンウィック)は、最後の担当コラムに一発逆転を賭け、命懸けで政府に抗議する架空の男”JOHN DOE”をでっち上げる。クリスマスの夜に市庁舎屋上から飛び降り自殺すると宣言するJOHN DOEに対し、読者の反響が殺到、編集長コネルはアンの解雇を撤回して記事の続行を決定。元野球選手のホームレス、ウィロビー(ゲイリー・クーパー)を雇ってJOHN DOEに仕立て上げる。わずか50ドルの現金に目がくらんで、でっち上げに協力したウィロビーだが、彼の記事が掲載されるごとに新聞の売上げは大幅に伸び、JOHN DOEは大衆のヒーローとなっていく。隣人への愛を訴えかけたラジオスピーチがきっかけとなり、JOHN DOEを中心とした市民運動が全米に広がり、ウィロビーもヒーローとして振舞い始めるのだが。。。。
フランク・キャプラらしいコメディチックな演出が随所に見られ(ゲイリー・クーパーとウォルター・ブレナンの野球ごっこは必見)るだけに、後半のシリアスな展開が引き立ちますね。クライマックスの全米集会で、ウィロビーが権力に破れて退場していくシーンは、偽者の仮面がバリバリとはがれていく音まで聞こえるような迫真の名場面。一度動き出したらとまらない大衆の力とそれを操る権力者の憎憎しさ、なすすべもなく破れぼろぼろになっていく主人公の哀れさ。異様な迫力でした。偽者の予期せぬ大活躍とそれに起因する矛盾を丁寧に積み上げて、絶頂に至ったこの場面でこれでもかというほど見事に破壊する。この崩壊の切れ味にフランク・キャプラの手腕をくっきりと観てとることが出来ます。
1930年前後のゲイリー・クーパーの美貌(といっていいと思いますが)とプレイボーイぶりは確かにすばらしいのですが、個人的にはどうも中年クーパーに惹かれるようです。この作品のときゲイリー・クーパーは40歳ですが、『真昼の決闘』で見せた例の憂いを帯びたよう目つきがすでに見られます。40代後半時の浮気や出演作の不振、病気などで人生の苦難を味わった結果身についた憂愁の表情かと思っていたのですが一概にそれだけではなかったようです。
権力者に負けない大衆の力、利用するものと利用されるものの駆け引きの末に気づく本当の愛など明確なメッセージが伝わってくる作品ですが、個人的にはゲイリー・クーパー扮する JOHN DOEが戦い敗れてから最後に再び希望の光を見つけるまでのくだり、ここにこそこの映画のすばらしさが凝縮されていると思いました。絶望の底で希望の光を見つけ、ついに一人の人間が偽者から本物へと変わっていく時に、彼の見せる憂愁の表情は実に印象的で、ゲイリー・クーパーという役者を強烈に記憶に焼き付けてくれました。
★★★★★
<スタッフ&キャスト>
監督:フランク・キャプラ
製作:フランク・キャプラ
原作:リチャード・コネル/ロバート・プレスネル
脚本:ロバート・リスキン
撮影:ジョージ・バーンズ
音楽:ディミトリ・ティオムキン
音楽監督:レオ・F・フォーブステイン
出演:ゲイリー・クーパー/バーバラ・スタンウィック
ウォルター・ブレナン/エドワード・アーノルド
スプリング・バイイントン/ジェームズ・グリーソン
ジーン・ロックハート
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