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#0140『父ありき』小津安二郎 1942年日本

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金沢で中学教員をする周平(笠智衆)は妻をなくして息子良平と二人暮し。修学旅行のボート事故で教え子を亡くした周平は引率教員として責任を感じて辞職し、生まれ故郷の信州に戻る。そこで良平は中学生となり寄宿舎生活を送ることになるが、周平は息子の将来のために人生をやり直す決意を固め、一人東京に出て工場勤めを始める。お互いにいつかは一緒に暮らしたいと願う二人だが、良平は仙台の帝大を出て秋田で中学教員となる。成長した良平(佐野周二)が東京を訪れ、父子は温泉宿で久々に二人の時間を過ごす・・・。

今まで見た小津映画は4作品(麦秋、お茶漬の味、東京物語、彼岸花)は全部1950年代でしたが、今回はじめて40年代、戦時中の作品です。4作品に共通する”小津様式美”のような特徴とは少し趣が異なるようですが、それでも”ああ、小津映画だ”という満足感には十分浸ることが出来ます。

笠智衆が演じる父親・周平は実にすばらしい。だんだんと距離が離れていく息子に対して、実に淡々と話しかけます。妻が無くなってからずっと二人で暮らしてきた父子ですし、父の細かなしぐさから息子をどれだけ愛しているか十分読み取ることができます。その息子と離れていく時に、むやみに感情を表に出すこと無く、自分の気持ちを押さえて話す父。見事なほどに無表情ですが、無表情ゆえにかえって父の心情が痛いほど伝わってきます。

今まで見てきた作品では家族が一つ屋根の下で住んでいるためにおきる摩擦とかすれ違いとかがテーマになっていましたが、この作品には”家”がありませんね。父親と息子の2ショットは列車の中であったり、駅の食堂であったり、荒れ城の石垣の上であったりします。あるのは父と子の親子の絆だけで一緒に過ごす家はありません。東京を訪れた良平と周平が過ごすのも”家”ではなく温泉宿。再度訪れた良平がはじめて父が暮らす”家”を訪れ一週間を過ごしますが、それも息子の出征によって長くは続くことのないさだめです。

結局この二人は互いに求めながら再び家族として同じ家で一緒に暮らすことがかなわないわけですが、この映画の作られたのが戦時中の、しかもそろそろ戦局が悪化してくる1942年であることを考えると、家族が次々と引き裂かれ、家がどんどん壊れていく中で、ひたすらに家族を求める姿を反戦的に描きたかったんだろうか、などと考えてしまいます。

脇を固める役者も味わい深く、特に同僚の教師平田を演じる坂本武が良いです。無骨な風情ですがなにかこう人としてのやさしさが滲み出していますね。若き日の佐分利信も登場。あまり登場シーンは多くありませんが印象に残る演技を見せてくれます。やっぱりスピーチがうまい(笑)

この作品、DVD- BOX以外はVHSしかないのですが、VHSの画質・音質が非常に悪かったのが残念。雑音がひどくてセリフの聞き取れないところもあり、画質音質には寛容な私もさすがにちょっと閉口しました。DVDはきちんとデジタル処理されているようですね。BOX買っちゃおうかなぁ。 → その後、廉価DVD発売されました。★★★★★

<スタッフ&キャスト>
監督:小津安二郎
脚本:池田忠雄/柳井隆雄/小津安二郎
撮影:厚田雄治
美術監督:浜田辰雄
衣裳:斎藤耐三
編集:浜村義康
音楽:彩木暁一
演奏:松竹交響楽団
音響効果:斎藤六三郎
 
出演:笠智衆/佐野周二
   津田晴彦/佐分利信
   坂本武

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父ありき父ありき
(2007/08/20)
笠智衆、佐野周二 他

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テーマ : クラシック映画
ジャンル : 映画

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