スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

#0146『奇跡』カール・テオドール・ドライヤー監督 1955年デンマーク

奇跡
”ORDET” にほんブログ村 映画ブログへ

4月19日から26日まで、神田駿河台のアテネ・フランセ文化センターで、カール・ドライヤー監督特集を上映していました。日本では少なくとも当分は観れなくなるのだそうです。普段映画館にはあまり足を運ばないのですが、今回は例外。サイレントの代表作『裁かるるジャンヌ』、ドライヤーの遺作となった『ゲアトルーズ(ガートルード)』、そしてこのトーキーにおける傑作『奇跡』の三本を鑑賞しました。

ちなみに観れなかった上映作品は『吸血鬼(ヴァンパイア)』と『怒りの日』。『吸血鬼(ヴァンパイア)』はぜひ観たかったのですが、時間が合わずやむなし。自宅にDVDがあるので、改めて鑑賞してみようと思います。『怒りの日』は、しばらく観る機会はないかもしれません(悲嘆)。

映画の持つ”映像の力”を思い知らされた作品でありました。いくつもの忘れがたいシーンがありました。

なかでも、インガが死に至る一連のシーンはまさに映像の奇跡。自らをキリストと混同する狂人ヨハネスのつぶやきと、室内を照らす車のヘッドライトや響いてくるエンジン音がシンクロし、見えないはずの神の姿を、ドライヤーは部屋の中に浮かび上がらせてしまいました。間違いなくそこに神がいた。大鎌を振り上げ、インガの命を召し上げていった。今なら安易にCGで神の姿を作り出す監督もあまたいると思います。狂人のつぶやきとライトとエンジン音だけで、神の姿を造形したこのシーンはまさに映画における奇跡のシーンだと思います。

2時間強の映画の中で、すでに散々、映像の力を見せつけられた後にやってきたラストシーンはさらにすさまじく、そこには”映画の全て”が凝縮していると言っても過言ではありませんでした。

冒頭の写真からでもほんの少しだけ伝わってきますが、ラストシーンの舞台となるインガの葬儀会場の、その”空間”から伝わってくるはりつめた美しさをどう表現すればいいんでしょう。簡素にして無駄のない室内に、絶妙なシンメトリーで配置されるモノたち。真っ白な室内にゆるゆると動き漂う喪服の人々。悲しげにもれる彼らのすすり泣きと小声の会話。その場全体がぐっと圧縮されてキーンと音を発しているのでではないかという錯覚すら覚えました。

そして、その空間でやり取りされる奇跡をめぐる”意味”の交差。葬儀会場に集まった人々はインガを惜しみ、ひたすら神にすがり奇跡を望みます。最愛の妻に先立たれた憔悴の夫ミケル。わが身も滅ぶほど嘆き悲しんでも、彼の望みは神に通じません。科学の象徴たる医者と宗教の象徴たる牧師は、これまで対立の構図で描かれてきましたが、ここではすでに分かたれた存在ではありません。彼らはただ寄り添って部屋の隅に座るのみ。科学と宗教がその垣根を取り払ってさえ無力な、その姿をどう見ればよいのでしょう。隣人は慈悲の心を思い出し、異宗派であるインガの父親との間の長年の確執を捨て、2人は涙ながらに肩を抱き合います。しかし、宗派を超えた宗教的和解をもってしても神の奇跡に通じる力は生まれない。それはなぜなのか。

やがて、全ての人々が焦がれた奇跡は、それまで狂人として厄介者扱いされてきたヨハネスの手によって実現されます。そして、それを促したのはまだ分別もつかないわずか7歳の女の子でした。

この作品は、宗教に対して強烈な問いを投げかけていると言われています。それは、キリスト教に全く疎い私にも見事に伝わってきました。それだけの影響力のあるメッセージが、実物として目の前のスクリーンに写る映像から発せられてくるということに素直に感動しました。これまで、ストーリー重視で映画を観ていたのですが、映像が意味を作り出し、意味が映像を輝かせる、そういう映画の面白さに気づくことができた作品となりました。ちょっと無理して映画館に観にいって本当に良かった。私の映画人生はこの一本で間違いなく変わります。★★★★★

<スタッフ&キャスト>
監督:カール・テオドール・ドライエル
原作:カイ・ムンク
脚本:カール・テオドール・ドライエル
撮影:ヘニング・ベンツェン
音楽:ポウル・シーアベック
出演:ヘンリク・マルベルイ
    エミル・ハス・クリステンセン
    プレーベン・レーアドルフ・リュ
    ビアギッテ・フェダース

↓↓最後まで読んでいただきありがとうございました。ぜひ、ワンクリックお願いいたします^^
にほんブログ村 映画ブログへ

ブログパーツ

奇跡奇跡
(2002/02/22)
ヘンリク・マルベルイ、プレーベン・レアドフ・リュ 他

商品詳細を見る

テーマ : クラシック映画
ジャンル : 映画

コメントの投稿

非公開コメント

ドライヤー

>ぶーすかさん、TB&コメントありがとうございます。
ドライヤーは10年に一作くらいしか撮らなかった人で、長編は7本だったかな、そのくらいしかないのですよ。でも、今まで見たものはひとつ残らず素晴しい。サイレントの二本はぜひ観てください。目の玉飛び出ます・笑

>館長。。私に甲斐性があれば、新幹線グリーン席でご招待したんですけどねぇ。。。よよよ…
今まで、『裁かるるジャンヌ』が絶対と信じて疑いませんでしたが、この『奇跡』、甲乙つけがたいすよ。良かったです。

おおお…

FROSTさんが受けられた感銘が、こちらにまでひしひしと伝わってまいりましたよ。
ドライヤーの作品を大きなスクリーンで観たかった…。なんだかこれが私の遺言になりそうです(T▽T;)。
やっぱりね、家の小さな画面では見えてこないものがあるんですよ。ドライヤーの映画には。

美しくて斬新な映像でした

この監督、NHKBSの放送で見るまで全然知らなかったのですが、すごい巨匠なんですねー。無駄を極限まで剥ぎ取ったような映像がとても美しかったです。「裁かるるジャンヌ」や「ヴァンパイア」などはまだ見てないので、ぜひとも見てみたいです。
★引っ越しました!★
お越しいただいた皆様、ありがとうございます。 新しくシネマぞろ★を始めました。下のリンクよりぜひお立ち寄り下さい!
場内ご案内
はじめてご来場のお客様は
こちらから
上映作品を探す

【上映作品INDEX】
⇒タイトル別/あ行-さ行
⇒タイトル別/た行-わ行
⇒製作年別/1910年代-1940年代
⇒製作年別/1950年代-2000年代
⇒ファーストインプレッションリスト
【特集INDEX】
⇒サイレント映画特集
⇒ヒッチコック特集
⇒フィルム・ノワール特集
【500円DVD INDEX】
⇒500円DVDリスト(07/12/09更新)
 全358タイトル

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。

ブログ内検索
カスタム検索
最近の記事を読む
コメント御礼!
トラックバック感謝!
上映作品ランキング


ご来場感謝!!
Google
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

文芸座館主

Author:文芸座館主

Blogranking.net

RSSフィード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

お気に入り!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。