
”GASLIGHT”
ネタバレですよ
質の良いサスペンス映画を見たときの満足感はホントたまらんですね。
舞台になっているロンドン/ソーントン・スクェアのセットがまずはすばらしい。重厚な建物や石畳の舗道、グレゴリーが夜毎身を潜める路地の暗がり。そして、ぼんやりとあたりを照らすガス燈。イングリッド・バーグマンの演技は若干芝居がかかる傾向がありますが、この重厚な雰囲気の中ではかえってそのほうが違和感がありません。シャルル・ボワイエの尊大な悪役ぶりもさらに映えるというものです。
その見事な舞台設定で繰り広げられるのは迫真の心理サスペンス。有名な歌手であったポーラ(バーグマン)の叔母を、宝石欲しさに殺したのは実はポーラが結婚した相手グレゴリー(シャルル・ボワイエ)なんですねぇ。まんまと叔母が残した家に住み始めたグレゴリーは、叔母殺しのときに手に入れることができなかった宝石を探しはじめます。彼は真相に近づいたポーラを始末するために、彼女を精神病に仕立て上げようとします。自分ではたしかに見えたり聞こえたりしていることを幻だと言われ、身に覚えのない盗癖を責められて彼女は徐々に追い詰められていきます。。。
正常な人間を異常者に仕立て上げていくグレゴリーの陰湿さと巧妙な手口の積み重ね。だんだんポーラの明るさが消え、表情がおびえと狂気に染まっていくのにつれて、一方のグレゴリーは正体を現し、酷薄残忍さがあらわになり始めます。
このじわじわねちねち感が、私個人的にはサスペンスの必須条件。スピーディーに次々襲い掛かられるよりは、ねちねち真綿で首を絞めるようにせめて欲しい・笑。また、当時のロンドンのガス供給システムや建物のつくりなどを利用したネタ仕込みがサスペンス映画のお手本のよう。
それに加えて、ゴシック調ねちねちサスペンスを盛り上げるスーパーアイテム”女中”がまた素晴らしい。あくまで慇懃でありながら人を蔑むあの視線。女中ナンシー役は、この作品でデビューしたアンジェラ・ランズベリー。その後、映画・舞台・テレビの世界をまたにかけた大女優となりました。『レベッカ』のダンヴァース夫人に匹敵する”名女中”ナンシーがさらにポーラを追い詰めていきます。
いかにもの雰囲気あふれる舞台セットで極上のストーリーを積み上げてきたこの作品ですが、本当の魅力はラストシーンにありました。散々、グレゴリーにいたぶられたポーラが、その状況を利用した渾身の反撃を見せます。グレゴリーがたくらんだ悪巧みのすべてが返す刀となって彼にトドメを刺します。それまでの鬱積した息苦しさを吹き飛ばすこの爽快な切れ味。ジョージ・キューカー監督、お見事でございました。★★★★★
<スタッフ&キャスト>
監督:ジョージ・キューカー
製作:アーサー・ホーンブロウ・Jr
原作:パトリック・ハミルトン
脚本:ジョン・ヴァン・ドルーテン/ウォルター・ライシュ/ジョン・L・ボルダーストン
撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
音楽:ブロニスラウ・ケイパー
出演:シャルル・ボワイエ/イングリッド・バーグマン/
ジョセフ・コットン/メイ・ウィッティ/
アンジェラ・ランズベリー/テリー・ムーア
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