
”DOUBLE INDEMNITY”
ネタバレですよ
フィルム・ノワールの名作『深夜の告白』。ビリー・ワイルダーはやっぱりすごかった。
今までに見た『サンセット大通り』『失われた週末』を上回る凄みのある作品でした。『アスファルト・ジャングル』のレビューでも書きましたが、この作品も最初の一瞬から釘付け。白いバックに松葉杖をついた男のシルエット。男が杖をつきながらこちらに歩いてくる映像にのせてオープニングクレジット・・・ゾクっときました。
深夜のオフィスで瀕死の重症を負いながら主人公ネフ(フレッド・マクマレイ)が真相を告白する、回想形式のストーリー展開。見事なファム・ファタールぶりを見せるバーバラ・スタンウィックの魅力。緻密な犯行が成功したかと見えたところから一転してたどる破滅のプロセス。そして、何よりフレッド・マクマレイとスタンウィックに名優エドワード・G・ロビンソンが絡んだ3人をめぐって途切れることのないサスペンス。これが、フィルム・ノワールの真骨頂かと目を見張る一本でした。
中でも記憶に残るのは、保険犯罪を絶対に見逃さない凄腕調査員キーズ(ロビンソン)がはじめて疑いを持つシーン。
フィリスの誘いに乗ってフィリスの夫を殺したネフは、切れ者キーズの疑いをかわせたと思い有頂天でアパートに戻ると、彼女からの電話で会いたいと言ってきます。危険を承知でネフは彼女をアパートに招じます。しかし、電話を切った直後にドアベルが鳴る。不安がよぎり一瞬ドアを見つめるネフ。現れたのはあろうことかキーズその人。ネフはやっとの思いでいつもの通り「ハロー、キーズ」と声をかけます。キーズは事故について誰も気づかないほどわずかな矛盾を嗅ぎつけてフィリスを疑い始めており、それをネフに話にきたのです。フィリスと鉢合わせになればそれですべて一巻の終わり。ネフのことは全く疑わず不可解な点を話すキーズ。そこにやってきたフィリスはかろうじてドアの外で二人の話し声を聞きつけ様子を伺います。帰ろうとするキーズ。ドアを開ける。とっさにフィリスはドアの後ろに身を隠す。廊下を歩み去るキーズ。ドアを背に見送るネフ。ドアの後ろに立つフィリスがそっとドアノブを引く。彼女に気づくネフ。その時、キーズは振り返る。必ずフィリスを白状させてやると宣言する。いつものように葉巻をくわえマッチを探しながら二人の方に戻ってくるキーズ。ネフはキーズの葉巻に火をつけてやり、キーズは帰っていきます。
気がつくときちんと座りなおして観てました。肩にパンパンに力が入っていて、思わず「ほぉぉぉ〜」っと声が漏れましたね。文章が巧くないんでこれを読んでもらっても1%も伝わらないと思いますが(いや、どんなにうまく書いても文字では伝わらないに違いない)。
ロビンソン演じるキーズもいいんですよ。ネフとキーズが会う時はかならず”Hello、Keyes”からはじまって、いつも火を持っていないキーズにネフがマッチで火をつけてやって終わる。実はそれは伏線になっていて、ラストシーンでは逆にキーズがネフに火をつけてやるんですね。その行為と最後の二人の会話からキーズの心情が痛いほど伝わってくるんですね。キーズは最後の最後までネフを信じていた。
この作品を観る前はバーバラ・スタンウィックに注目していたのですが、すっかりエドワード・G・ロビンソンに魅せられてしまいました。ロビンソンはオーソン・ウェルズの『ストレンジャー』でもナチスの残党を追い詰める役をやっていましたが、こういう人を追う役で特に凄みをきかせますね。あの目と表情のせいかな。
スタンウィックも良かったんですよ。いや、十分にすばらしかった。全体に表情を押さえた演技でしたが、それが逆にフィリスの悪女ぶりをよく語っていましたねぇ。最後に見せる涙も引き立ちました。★★★★★
<スタッフ&キャスト>
監督:ビリー・ワイルダー
製作総指揮:バディ・G・デシルヴァ
原作:ジェームズ・M・ケイン
脚本:ビリー・ワイルダー/レイモンド・チャンドラー
撮影:ジョン・サイツ
音楽:ミクロス・ローザ
出演:フレッド・マクマレイ/バーバラ・スタンウィック
エドワード・G・ロビンソン/ポーター・ホール
ジーン・ヘザー/トム・パワーズ
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