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#0169『知りすぎていた男』アルフレッド・ヒッチコック監督 1956年アメリカ

知りすぎていた男
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マラケシュでの休暇にむかうバスの中で、マッケナ医師夫妻(ジェームズ・スチュワート/ドリス・デイ)はルイ・ベルナール(ダニエル・ジェラン)という男と知り合う。夫妻はルイとディナーの約束をするが、直前でルイにキャンセルされてしまい二人でレストランに向かう。そこで、ドレイトン夫妻と知り合って意気投合し翌日一緒に市内観光に出かける。市場を見学している最中に突然騒ぎが起こり、一行は現地人と思しき男がナイフで背中を刺される現場を目撃。刺された男は現地人に偽装したルイ・ベルナール。実は情報局員であったルイは、死ぬ間際マッケナに大物政治家暗殺の情報を託す。ドレイトン婦人に一人息子のハンクを預け、目撃者として警察に行くマッケナ。警察署内で証言中に何者かから電話があり、ハンクを誘拐した言う・・・・・。

1934年の『暗殺者の家』をヒッチコック自身がリメイクした50年代ヒッチコック映画の傑作。主演にジェームズ・スチュアートを配してキメにきてますねぇ。相手役はドリス・デイ。この二人は本当に絵になります。ジェームズ・スチュアートは言わずもがなのヒッチコック映画の顔。ケイリー・グラントと並ぶ二枚看板ですね。ヒッチコックは、豊かな感情表現がポイントのときはジェームズ・スチュアート、軽快なユーモアがポイントのときはケイリー・グラントと使い分けていたのだそうです。

ジェームズ・スチュアートについては言うまでもありませんが、この作品で輝いているのはなんといってもドリス・デイですね。私はジャズが好き(ちなみにジャズも4・50年代しか聴きませんが)なものですから、ドリス・デイは女優としてよりもセンチメンタル・ジャーニーに代表されるジャズシンガーとしてしかインプットされていませんでした。しかし、この作品では、誘拐されたわが子を思う気持ちがぐっと切実に表現されて、すばらしい演技。俳優としても一流であることを知りました。教会の前やアルバート・ホールで、心配のあまり居ても立ってもいられなくてウロウロするシーンが印象に残ります。役柄でも観察が鋭く頭脳明晰でしかも元人気歌手ということで、ちょっとのんきなマッケナ医師との夫婦関係は妻優位という感じでしたが、演技の面でもジェームズ・スチュアートと渡り合って遜色ありませんでした。

さて、今回オリジナルとリメイクを続けてみた『The Man Who Knew Too Much(原題)』ですが、ドラマとしては、リメイク版の『知りすぎていた男』の方が面白かったと思います。巻き込まれるまでの経緯や夫婦の人物描写、アルバート・ホールのシーンの描きこみ度合いなど、ドラマを作る手練手管に圧倒的な違いがありますよね。しかも、本作にはカラー画面の圧倒的な美しさが加わります。ルイ・ベルナールが死ぬ場面の、黒いドーランの下から白い肌がのぞく場面もカラー作品ならではの演出。ハッと息をのむようなインパクトがありました。

ヒッチコック本人も「”暗殺者の家”は何がしかの才能のあるアマチュアが作った映画、”知りすぎていた男”はプロが作った映画」と言っていますが、確かにそれだけの完成度のちがいはありそうです。さすがに 22年の年月は伊達じゃありません。

ただし、ピーター・ローレファンの私としては、『知りすぎていた男』にピーター・ローレに匹敵する悪役がいなかったのが少し残念でした。悪事を引き起こして主人公を巻き込み、追いつ追われつを演じて、最後には”立派な”最後を遂げる「一本筋の通った悪役」としてピーター・ローレは非常に魅力的でした。それに比べて、『知りすぎていた男』の悪役で一番前面に出ている男は実は人に使われている身で今ひとつ”悪役の貫禄”に欠けるし、本当の黒幕は少ししか出てこず"立派な最後”も遂げません。そういう意味ではヒッチコックには珍しく、「キャラの立った悪役が見当たらない。でも面白かった映画」という感じでしょうか。

ともあれ、この作品良いです。文句なし。★★★★★

<スタッフ&キャスト>
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:アルフレッド・ヒッチコック
原案:チャールズ・ベネット/D・B・ウィンダム=リュイス
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ/アンガス・マクファイル
撮影:ロバート・バークス
作詞作曲:レイ・エヴァンス/ジェイ・リヴィングストーン
音楽: バーナード・ハーマン
出演: ジェームズ・スチュワート/ドリス・デイ
    ラルフ・トルーマン/ダニエル・ジェラン
    クリス・オルセン/ブレンダ・デ・バンジー
    キャロリン・ジョーンズ

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