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#0178『アメリカン・ギャングスター』リドリー・スコット監督 2007年アメリカ

アメリカン・ギャングスター
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リドリー・スコットという名前を聞くと、やはりちょっと映像に期待してしまう。最近、リドリー・スコットの映画は見てないけれど、でもそこはやっぱりスコットだもの。。。やってくれるでしょう・・・。

と、思ったのに意外とフツー。

スコットらしいビジュアルがナイ!映画全体は非常に丁寧な作り込みで、良質なギャング映画ですが、良く言うと正統派、ちょっと意地悪な言い方すると意外性のない映画。

実話をもとにした映画で、モデルとなっている人物は、稀代の麻薬王とNY市警に蔓延る大汚職ネットワークを壊滅した麻薬取締官という善悪双方の英雄。演じているのも、デンゼル・ワシントンとラッセル・クロウというともにオスカーを獲得した大スター。そうすると、やはりこの二人をきちんと描ききることが最優先となり、その分ビジュアルなど他の要素が控えめになってしまった。。。というようなことは、考えられるかもしれません。しかし、ではその人物描写は。。

善のヒーロー、リッチー・ロバーツ刑事(ラッセル・クロウ)には、私生活で離婚沙汰が絡んでいたり、多少下半身がゆるかったりというネガティブ要素が設定されていますが、それが刑事として正義感になんの悪影響も及ぼしていないところが淡白。

この手の刑事にも描き方はいろいろあるようで、よくあるのは正義感は人一倍ながら倫理観に欠けているために刑事として”はみ出し”でというやつ。うまく事が運ぶと『ブラックレイン』に登場したコンクリン刑事(マイケル・ダグラス)のように型破りなヒーローとしてまっとうできるが、『その男、凶暴につき』の我妻(北野武)のように業死する場合もある。映画ではありませんが、私のHNの由来になっているジャック・フロスト(”クリスマスのフロスト”などフロスト警部シリーズで有名)もそういう刑事のコメディバージョン。

また、もう少し暗いタイプでは、自らの心に深いトラウマを抱えているがために、悪に対して異常な執念を燃やし、結局はそれが諸刃の剣となって身を滅ぼす『探偵物語』のマクラウド刑事(カーク・ダグラス)などがいました。

どのような描き方にしろ、ネガティブな面も持った刑事の”人間”を描くのであれば、もう少しそのネガティブ面と刑事の本領を有機的に結びつけて描いてほしいところ。

そういうないまぜの葛藤が見えないので、リッチーと家族のエピソードや、彼が夜学に通って司法試験を目指す姿などが、どうも映画全体に位置づかなく見えてしまうのです。また、冒頭、令状を待たずにがさ入れする強引な一面を見せますが、肝心の麻薬工場摘発のクライマックスシーンでは、きちんと令状が届くのを待っていたり、”あのフリはいったいなんだったのよ?”と思わせるシーンもちらほら。実在のリッチー・ロバーツ氏の人物像を反映することが重要だったのかもしれませんが、少々面白みに欠けると観られても致し方ないと思います。

もう一方のデンゼル・ワシントン扮する黒人の麻薬王フランク・ルーカス。ニューヨーク五大マフィアのひとつ、ジェノベーゼ・ファミリーに連なる黒人カリスマギャング”バンピー”・ジョンソンのもとで、運転手やボディーガードなどを務めながら15年間ギャングとして修練を積みます。かなり汚い仕事にも手を染めた様子が冒頭に描かれていますね。バンピー亡き後はイタリア系のジェノベーゼの傘から這い出すために、麻薬ビジネスに目をつけ、新しいビジネスモデルを築き、既存のどのファミリーにも属さない麻薬王にのし上がります。

純度50%以下が当たり前の当時の麻薬ビジネスで、”倍の品質を半分の値段で”をキャッチフレーズに、”ブルー・マジック”というブランド名をつけて売りさばく。そのためには、自らタイの麻薬王のもとに飛び込んでブツを確保し、軍用機を使う独創的な密輸ルートを開発し、組織を家族親族同郷者で固め、麻薬工場のスタッフは全員女でヤクを盗まないように全裸で働かせるなど、仕入れ・製造から販売までオリジナルの一環体制を築いてしまう。しかも、自らは巨万の富を得ても決して人目を引くような行動はしない。

映画の登場人物としては、フランク・ルーカスの方が魅力的で、その分彼の決断力や行動力、思慮深さと瞬間的に爆発する残忍さを同居させている性格など、手間も時間もかけて描いています。しかし、こちらもなんかこう、しっくりきません。

麻薬の生産元と直取引するために飛び込んでいくくだりは、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(ジョン・ローン)や『ブロウ』(ジョニー・デップ)などですでに観た事があって新鮮味に欠けるし、それらと比べて描き方もあっさりしていて物事がうまく運びすぎ。そもそも、フランクの成り上がりの背景には、師と仰いだバンピーでさえもイタリア系のジェノベーゼに使われる身であったという人種的要因があるのですが、そのあたりも含めて彼が成り上がるための黒い執念とがむしゃらな行動が心に届くほどの迫力で見えてきません。

シチリアマフィアさながらの家族愛を見せるフランクは、ノースカロライナから母と弟たち呼び寄せます。しかし、麻薬ビジネスの黒幕としての正体を隠しておくために弟たちを組織化し、身内であろうと意に沿わないものは激しく痛めつけるところもあって、この家族愛が無償の愛に見えない。冷酷無比なギャングでありながら家族と仲間を命よりも大事にするドン・コルレオーネのような人間的魅力が伝わってこないのです。

身辺に細心の注意を払うフランクがリッチーに目をつけられるボクシングのシーンで、いかにもデンゼル・ワシントンに似合わない変な毛皮のコートを着ているのですが、調べてみるとあのコートは実在のフランク・ルーカスが着たものと同じデザインのようです。

さて、ここで。

この作品の人物像に漂っているなんともいえない”ちぐはぐ感”はこの変なコートに象徴されているのではないかと感じた次第です。実在のフランク・ルーカスが着たこのコートは、デンゼル・ワシントンが映画の中でかもし出している雰囲気に全くマッチしていない。

つまりは、リッチー、フランクともに実在の人物の要素を忠実に取り入れようとしたがために、映画の世界観に人物像がうまくはまらなかったんじゃないのかなと。それゆえに観客の心に迫るほど人間が描ききれていない。そういう風に見えてしまって仕方ありません。実話を基にしている限り難しい問題だとは思いますが、この作品の題材が映画としてかなり魅力的であるために、余計にそのズレが目についてしまうのかもしれません。

ということで、好き放題言い放題で今回は来ましたが、映画館でこの作品を観て、お伝えしておかなければいけない事実がもうひとつ。それは、2時間37分という長尺でありながら、退屈はしなかったということですね。まあ、いろいろと上記のような突っ込みはしながらですが。

これはひとえに役者2人の魅力だと思います。デンゼル・ワシントンのふてぶてしさにしても、ラッセル・クロウのちょと生活観のにじんだ感じにしても、全体観を別にすれば、ハッとする映像も、ハッとするセリフもたくさんありました。この二人、実はほとんどラストまで直接顔をあわせることがないのですが、初対面のシーンで、パトカーにもたれて教会から出てくるデンゼルを迎えるラッセル・クロウの映像は、それまでの長い経緯もあってちょっとぐっと来ました。リドリー・スコットお得意のビジュアルは、この二人のためにあったのかもしれません。★★★☆☆

<スタッフ&キャスト>
監督:リドリー・スコット
製作:ブライアン・グレイザー/リドリー・スコット
製作総指揮:スティーヴン・ザイリアン/マイケル・コスティガン
        ブランコ・ラスティグ/ニコラス・ピレッジ/ジム・ウィテカー
脚本:スティーヴン・ザイリアン
撮影:ハリス・サヴィデス/プロダクションデ/ザイン:アーサー・マックス
衣装デザイン:ジャンティ・イェーツ
編集:ピエトロ・スカリア
音楽:マルク・ストライテンフェルト

出演:デンゼル・ワシントン/ラッセル・クロウ/キウェテル・イジョフォー
    キューバ・グッディング・Jr/ジョシュ・ブローリン/テッド・レヴィン
    アーマンド・アサンテ/ジョン・オーティス/ジョン・ホークス
    カーラ・グギーノ/RZA/ルビー・ディー
    コモン/ライマリ・ナダル/ロジャー・グーンヴァー・スミス
    マルコム・グッドウィン/ユル・ヴァスケス/リッチー・コスター
    ワーナー・ミラー/アルバート・ジョーンズ/J・カイル・マンゼイ
    ティップ・ハリス/ジョン・ポリト/ケイディー・ストリックランド
    ロジャー・バート//リック・ヤン

<関連サイト>
フランク・ルーカス
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アメリカン・ギャングスターアメリカン・ギャングスター
(2008/08/27)
デンゼル・ワシントンラッセル・クロウ

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ジャンル : 映画

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Whitedogさん、こんにちは!

いろいろ文句言ってますけど良質な映画だと思いますので、ぜひ観て感想聞かせてください。イメチェンなんでしょうかねぇ、個人的には昔のが好きだったなぁ。

No title

観にいこうと思っているうちに劇場公開が終わってました。DVD8月なんですね。観てみます。この作品の前が「プロヴァンスの贈り物」・・・リドリー・スコットはイメチェン中なんでしょうか?必要な事なんでしょうけどね。DVD出るまで楽しみにしてます。
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