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■アスタ・ニールセンはかつて、金持ちの青年を誘惑するために雇われた女を演じたことがある。彼女を雇った男がカーテンの陰に隠れて、彼女を監視し、結果いかにと見守っている。

■監視されていることを知って、彼女は偽りの愛情を装う。愛の表情の全音階が彼女の顔に表れる。それにもかかわらず、われわれはそれが単なる演技であり、偽りであり、仮面に過ぎないことを知る。

■ところが、場面が進むにつれ、アスタ・ニールセンはその青年を本当に愛してしまう。彼女の顔の表情はほとんど変わらない。彼女はこれまでずっとその表情で愛を示してきた−しかもそれは、まったく真に迫っていたのだ。本当に相手を愛するようになった今、他にどんな愛情の示し方があるだろう?

■彼女の表情の変化はほとんど見分けられないほどであるが、にもかかわらず、ニュアンスの変化は誰にもすぐにわかる。そして以前には偽りだったものが、いまや本当の深い愛情の表現になったことがわかるのだ。

■その時、アスタ・ニールセンは、ふと監視されていることを思い出す。カーテンの陰の男に、もはや偽っているのではなくて本当に愛を感じているのだということを、その顔色から読み取られてはならない。そこでアスタは、再び、偽っているふうを装う。彼女の顔の上には、いまや新しい、三重の意味を持つ変化が現れる。にほんブログ村 映画ブログへ

(ベラ・バラージュ著「映画の理論」より)

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