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#0179『居酒屋』ルネ・クレマン監督 1956年フランス

居酒屋
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ネタバレです。ご注意ください。

救いがない・・・・のかなぁ、やっぱり。

フランス自然主義文学の巨匠エミール・ゾラの同盟小説を、「禁じられた遊び」「太陽がいっぱい」のルネ・クレマン監督が忠実に映画化したと言われる本作。

自然主義文学とは、”自然の事実を観察し、「真実」を描くために、あらゆる美化を否定する。”(by Wikipedia)ということであるから、映画としてもその趣旨に則っている。

19 世紀のパリの労働者の暮らしぶりがりアルに伝わってくる。石畳とレンガの建物が息苦しい雰囲気をかもし出す町並み。アパートの部屋は狭く、家族が折り重なるように暮らしている。一生懸命働いても大して贅沢ができるわけではなく、彼らは慎ましやかに日々生活している。作品中盤で描かれる誕生日パーティーのシーンは、そんな彼らのささやかな楽しみ。たまのご馳走を楽しみながら飲み歌う姿が印象的だ。パリの労働者の生活ぶりは、どう飾られることもなく、そのようにゴロリと観客の前に投げ出される。うーん、自然主義だ。

そういうパリの下町生活を舞台として5人の人間が登場する。

・洗濯屋を営む主人公のジェルヴェーズ:真面目な働き者。
・ジェルベーズの元夫(内縁)ランチエ:自分勝手な放蕩者
・現在の夫で屋根職人のクポー:自堕落な怠け者
・彼女に思いを寄せる鍛冶職人グージェ:自尊心にあふれる潔癖な理想主義者
・過去に諍いがあったが現在は友人(のフリ)のヴィルジニー:計算高い野心家

真面目な働き者のジェルヴェーズは、毎日を生き抜くために必死に働く。ランチエと二人の子供と共に暮らしていたが、ランチエはヴィルジニーの妹と良い仲になってしまい、突然姿を消してしまう。そのことで、ヴィルジニーと大喧嘩をした彼女は一念発起してせっせと働き、クポーと出会ってささやかな家庭を築き、洗濯屋の店も持つまでになる。ちなみに公共の洗濯場でのジェルヴェーズとヴィルジニーの対決は映画史に残る大喧嘩シーン。

しかし、順風満帆にことは運ぶのかと思いきや、そうはうまくいかない。仕事中に屋根から落ちて働く意欲をなくし、酒びたりになるクポー。突然彼女の前に現れて、間借り人として住み着いてしまうランチエ。クポーとランチエが自分勝手な行いで彼女の店と生活をぼろぼろに壊してしていくさまは、見ていて痛々しいほどだ。なにかとジェルヴェーズを支えてくれたグージェは、結局彼女とランチエの仲を疑うに至り、自尊心が傷つくことに耐えられず去っていく。

これが、アメリカ映画なら、やはり”真面目な働き者”の主人公が最後の最後には幸せをつかみハッピーエンドになるだろう。しかし、フランスではそう単純にはいかないものらしい。

真面目な働き者だったジェルヴェーズは、現実に打ちのめされて酒に浸り、友達のフリをしながら虎視眈々と彼女への復讐を狙っていた野心家ヴィルジニーが、自分さえ良ければなんでもOKのランチエと手を組んで、ジェルヴェーズの店をのっとり幸せをつかむ。

現実の世の中で、このようなことが起きないかといえば、絶対無いとは言い切れない。そして誰もがこういう困難を乗り越えて、明るい将来を信じて生きていけるかというと、やはり必ずしもそうではない。この映画がそういうきびしい現実を優れた観察力で生々しく描写している秀作であるということは疑う余地はない。自然主義にのっとる作品をいくつも観たわけではないが、その分野でも優れた一本であることは間違いないと思う。

しかし、それを映画として観るとつらいなぁ。エンド・ロールのあとに劇場の明りがついて、我に返ったときにこの後味はつらすぎるよ。その後、別の本で自然主義とは、「人はなにをしても世界と自分の運命を変えることなどできないという価値観」であるという話を読んだ。現実がそうとしか思えないことが多いと思うし、誰かの人生(自分も含めて)がそのように運んでしまうことも多々あるとは思うけれど、現実にも映画にも、もう少し希望を求めたいというのが正直な感想。徹底した堕落と崩壊のメカニズムを目撃したという経験を、少なくとも何かに役立てねばなぁ。。★★★★☆

<スタッフ&キャスト>
監督:ルネ・クレマン
製作:アニー・ドルフマン
原作:エミール・ゾラ
脚本:ジャン・オーランシュ/ピエール・ボスト
撮影:ロベール・ジュイヤール
音楽:ジョルジュ・オーリック

出演:マリア・シェル
    フランソワ・ペリエ
    アルマン・メストラル
    ジャック・アルダン
    シュジー・ドレール
    ジャニー・オルト

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居酒屋居酒屋
(2003/02/25)
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テーマ : クラシック映画
ジャンル : 映画

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お!ご覧になりましたね。

確かに最近の映画でここまで境地に達しているものは少ないと思います。昔のヨーロッパ映画は、最近私が見ただけでも『嘆きの天使』とか『旅路の果て』とか、超ド急の”救いのない”映画がたくさんあります。でも、それぞれ味わい深いんですよね。ぜひ観てみてくださいね^^。
ちなみに私もこれ、再見します。

No title

観ました。洗濯場での取っ組み合い、すさまじいですね。邦画でも以前は女囚シリーズとか極妻シリーズではしばしば見かけるシーンですが、きっと当時は驚きだったのではと思います。
救いのない作品だとは思いますが、主人公の堕ちていく過程が丁寧に描かれているので、最近の救いのない作品とは少々違う感じ(理由が分かると言ったらいいでしょうか?)がしました。最近の映画の後味悪さに比べるとずっと人間らしさを感じる作品でした。おもしろかったですよ。他の作品も観てみますね。ありがとうございました。
応援です

みなさん、どうも!

オショさん、館長、そしてトムさん、たくさんコメントありがとうございます^^。

時ならぬ居酒屋論争が。。

ということで、この記事はご承知のとおりオールド・ムービー・パラダイス!からの移管記事なんですが、みなさんのコメントにお答えするために、『居酒屋』を再見することにしました。トムさんのご意見正しいと思います。でも、なんかひっかかるんですよね・・・。その辺を再見して整理しますね。

ちょうど明日大阪まで移動する予定がありますので、新幹線の中できっちり観直してコメントします。

ということでみなさんよろしく!

No title

FROSTさん、こんばんは。
この作品は、みなさん救いのない作品だとおっしゃられていますね。しかし、わたしはあえて、この作品からの未来の展望を考えてみました。
それはジェルヴェーズの生き方からです。
グージェが彼女から去った理由やヴィルジニーがが、彼女をあそこまで憎む理由を考えてみましょう。
クポーの分の経済的負担が減ったにも関わらず彼女が生きる気力を無くした理由を考えてみましょう。
ルネ・クレマンはあきらかに観る側に警告を発しています。これは自然主義リアリズムではなく、意識的なメッセージを発信している比喩的作品であると、わたしは解しています。
なにが、ジェルヴェーズをあのような姿にしたのか?!
グージェは、彼女を愛していました。しかし、信じ切ることができませんでした。もちろん双方の責任でしょう。しかしジェルベーズの責任でもあるのです。
ヴィルジニーは売春婦でした。自らが身体を張って泥まみれになって生きています。みじめで泣きたいことも多かったに決まってます。ジェルヴェーズの自立できていない「おんな」としての生き方の甘ったるさなど、恐らくクソ食らえでしょう。いつまでも、かわいこぶりっこで、生きていくなど、むしのいい話なのです。
そして、やっかいものの夫がいなくなったのです。やっと自立できるチャンスではありませんか?それがあの姿です。わたしは、そのことに憤りすら感じます。精神的支柱が男だけの女性であることが、ここにきて、はっきりと現れたのです。
きびしい結論かもしれません。しかし恐らくルネ・クレマンは、この結論が彼女の自業自得であるということを描きたかったのではないでしょうか?われわれは、そのことをしっかりと見つめるべきではないでしょうか?
本物の真実の生き方を目指すなら、それは何をもにも侵されないものになることは間違いのないことです。
では、また。

FROSTさん、これですよ

「鉄路の闘い」も「海の牙」も、観るのに気力がいります。でも、少なくとも“救いのない”理由が、私たちにちゃんとわかる映画でした。

でもこの「居酒屋」は問答無用(-_-;)。救いのなさに何の理由も見出せない。目の前で崩壊してゆく人間を、ただ見ていることしか出来ないんですから。実はBSで放映された時に録画しておいたのを(去年の話ですよ・笑)、今だに観られません。
FROSTさん、この作品も「後味の悪い」作品エントリーですかねえ。

おお?

ついにFROSTさん、この映画を“救いかない”“もう少し希望が欲しい”とおっしゃいましたね。(まるで鬼の首を取ったようだ)
やっぱりこの映画、暗いんですよね。「自然主義」というものはさっぱり分かりませんが、ラストまでどん底で突っ走る。
やっぱり私には“救いのない”映画にしか思えませんよ。

Whitedogさん、こんばんは!

お!お持ちならぜひ。いや、ほんとに救いがないですけどね。それでも、ジェルヴェーズ本人の堕落が小説ほどくっきり描かれていないので、まだましなのかもしれませんが。最近も救いのない映画多いですね。シナリオの意外性としてバッドエンドを位置づけているだけのものも結構あるような気はしますが。この映画は、原作のゾラも監督のクレマンも、持てる力すべてを注いでジェルヴェーズの転落を描いてます。自然主義によると”人は世界を変えられない”。けど、それでも何とかしようとあがくのが人間ですよね。しかし、そのあがきすらすべて否定して、物事はどんどん悪くなっていく。そこに描かれる人間ドラマってすごいものがあります。きっと忘れられない映画になると思いますよ^^

No title

救いのない映画、最近多いような奇がします。そんな時代なんでしょうか?
家にDVDあったと思うので観てみますね。
応援です
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