
”THIEVES' HIGHWAY”
ジュールス・ダッシンが赤狩りでヨーロッパへ逃れる前の作品。実はダッシン監督の作品は始めて観るのです。『男の争い』見たいなぁ。DISCASには、監督作品ひとつしか登録されてないんですよね。そのひとつが、なんで日本未公開のこの作品なのかは謎。
ということはともかく、この作品小粒ながらなかなか面白かった。リンゴの商売をめぐる悪徳仲買人フィグリア(リー・J・コッブ)と主人公ニック(リチャード・コンテ)の闘い。ニックの父親がフィグリアに騙されて両足切断の憂き目を見ているため、この闘いは父親の復讐劇でもあります。
フィルム・ノワールって、これという定義がなかなか難しい。いろんな参考文献を読んでみても確たるジャンル定義はないようで、ややもすると”こんな感じの作品”という、漠然とした特徴論でしかくくれなくなってしまいます。
まあ、ブログを書く上で厳密なジャンル定義を試みようとしているわけではありませんから、特徴論でも構わんのですが、少なくとも自分なりに納得できる基準は持っておきたいものです。で、ひとつ尺度にしているのが”どっか狂ってる”かどうか。ストーリーにしろ映像にしろ演出にしろ、どこかで狂ってしまった人間の行いを見せてほしいのです。雰囲気ですよ、雰囲気。ああ、漠然。
そういうことから見ると、フリッツ・ラングの『復讐は俺に任せろ』はノワールっぽく出来ていますが、実は全く真っ当な内容であり対象外。説の分かれるビリー・ワイルダーの『失われた週末』なんかは犯罪には無縁でも、あの異常な閉塞感はまちがいなくフィルム・ノワール。オーソン・ウェルズの一連の作品なんかはまさにフィルム・ノワールですよ。狂いまくってる。
で、翻ってこの『深夜復讐便』。フィルム・ノワールであります。
父親の復讐というプロットはあるものの、リンゴの売買ってのはちょっとあまりに身近すぎて緊張感に欠けるなぁとはじめは思ってました。トラックでサンフランシスコまでリンゴを届けるくだりも、ニトロをつんで突っ走ったかの『恐怖の報酬』に比べればほんの子供だまし程度・・・。
ところが、ニックが市場についてからが俄然面白かった(トラック輸送をめぐるトラブルがメインではなくて、本番もここからだったのだが)。売買の駆け引きや、ワケありの女リカ(ヴァレンティナ・コルテーゼ)とのやり取りも面白く、リンゴ代金をめぐる二転三転もよく出来ている。ニックは、おいおいってくらい馬鹿正直というかひねりが無かったりするものの、ラストのフィグリアとの対決シーンでのキレぶりに狂気があってなかなか良い(表情変えずに手の骨を砕くあたりね)。
また、遅れてサンフランシスコをめざすニックの相棒エドのトラックにチンケな同業者二人組みがハイエナのようにくっついているのがおかしいが、結局事故って爆発炎上するトラックの背景で大量のリンゴが崖を転がり落ちる映像はシュールで異常で◎。
全体的に小粒で地味な作品であることは間違いないが、かなり上位のB級フィルム・ノワール。満足できる作品でした。★★★★☆
<スタッフ&キャスト>
監督:ジュールス・ダッシン
製作:ロバート・バスラー
製作総指揮:ダリル・F・ザナック
原作・脚本:A・I・ベゼリデス
撮影:ノーバート・ブロダイン
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:リチャード・コンテ/ヴァレンティナ・コルテーゼ
リー・J・コッブ/バーバラ・ローレンス
ジャック・オーキー /ミラード・ミッチェル
ジョセフ・ペヴニー/モリス・カルノフスキー
タマラ・シェイン
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