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ビリー・ワイルダーの傑作コメディとして有名な作品。残念なことに開巻から一度も笑えなかったので自分にはコメディセンスがないのかといささか心配になりました。が、ワイルダー自身はこの作品をコメディではないと言っているらしく一安心。

主人公のバクスター(ジャック・レモン)はあまりにもプライドがないため、どうしても見ていて痛々しさを感じてしまうのです。フランとの恋愛を通して、そこから人間として立ち直る姿がこの映画の核心であり、情の部分でもあるということは重々承知してるんですよ。してるんですけどねぇ。自分の部屋を複数の上司の情事に提供しながら、その見返りを昇進という形で期待している、そのあたりがなにかこう、ピリっと顔に痙攣が走ってしまうんですよ。

部長が”顧客”になったとたんにそれまで部屋を利用していた4人の課長たちには手のひらを返したように冷たくなります。いそいそと部長のために部屋の段取りをとる姿は、あまりに小組織人で、せこましくて、いじましくて、ちょっとぐったり。バクスターが係長になったときのあの帽子を、本人は”エグゼクティブの帽子”と言っていますがどう見ても道化の帽子にしか見えません。面白くない人間だなぁ(自分が)と、書いてても思いますよ。ええ、思いますとも。でもねぇ。

隣の医者がバクスターにいみじくも「人間らしくなれ」と言います。医者は「人でなしの女たらしをやめてまっとうになれ」という意味で忠告するのですが、観客が受け取るのは”自分をせこく切り売りしてわずかな昇進を喜ぶようなむなしいことはやめろ”というメッセージであり、一つのメッセージに二重の意味を持たせているところは面白いですね。

かたやフラン(シャーリー・マクレーン)の方も、自分勝手でその場限りの部長に遊ばれているとわかっていながら離れられない、そのあたりの優柔不断さが全くじれったい。シャーリー・マクレーン独特のあの表情が余計にじれったさを掻き立てます。彼女がバクスターに「今まで何人と付き合ってきたのか?」と聞かれて「3人」と答えたときに、指は4本立ってますが、現在の部長との交際を無意識に拒否したいが、それでも別れることができない、どうしようもない気持ちが現れているのかもしれません。ああ、腹立たしい。

そういう風に見るとこの映画、どんよりとした曇り空のように実に不愉快。物語のラスト5分までその不愉快さがつきまといますが、バクスターへの気持ちに正直になったフランが、満面に喜びをたたえて駆けていくあの姿。あのシーンで一気にさーっと雲が晴れました。そこにのぞいた青空はあまりに気持ちよくて、それまでの不愉快さが吹き飛んでしまいました。ああやっぱりビリー・ワイルダーはうまいなと感心することしきりでありました。★★★★☆

<スタッフ&キャスト>
監督:ビリー・ワイルダー
製作:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド
脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド
撮影:ジョセフ・ラシェル
音楽:アドルフ・ドイッチ
出演:ジャック・レモン
   シャーリー・マクレーン/フレッド・マクマレイ
   レイ・ウォルストン/デヴィッド・ルイス
   ジャック・クラスチェン

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(2008/08/02)
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