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#0008『散り行く花』D.W.グリフィス監督 1919年アメリカ

散り行く花

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ネタバレですよ

allcinemaの作品紹介には、時々「?」と思うものがありますが、この『散り行く花』の紹介に、よりによって”ロリコン”という言葉を使うのかとしばし愕然。う~ん・・・。まあ、とりあえずそれは置いといて。。。

先の『オペラ座の怪人』記事のグリーンベイさんへのコメントで「悲恋物語」と書きましたが、ちょっと考え直しました。ちなみにストーリーを先にご紹介しておくと。。。

中国の青年僧(リチャード・バーセルメス)が西欧社会に仏教を広げるべく宗教的使命感に燃えて渡英するが、志ならずロンドンの貧民街でむなしく商店を営む身に落ちぶれている。同じ街にはバロウズ(ドナルド・クリスプ)という粗野なボクサーとルーシー(リリアン・ギッシュ)父娘も暮らしている。バロウズは事あるごとに娘を虐待し、ルーシーはひたすら父を恐れて暮らしている。そんなルーシーを見かけた中国青年は密かに彼女に対する思いを募らせる。ある日、仔細なことから父にひどく鞭打たれたルーシーは思わず家から逃れて中国青年の店に転がり込み意識を失う。帰宅して彼女を発見した中国青年は、手厚く介護し、彼女への思いは通じたかに見えた。しかし、偶然彼女のことがバロウズに伝わり、彼は怒り来るって乗り込んでくる。。。にほんブログ村 映画ブログへ


悲恋というと、報われない愛の哀しさがメインテーマというということになりますが、この作品は、二人の絶望し救われることのない心のあり様そのものがテーマと理解しました。屁理屈のようですが、それほど二人の絶望感の描写が、大津波のような破壊力で押し寄せてきたということです。

青年の心は宗教的挫折でズタズタ。東方へ宣教の旅に立つ修道士に対して、幸あらんことをと言葉をかける彼の心中は察するに余りあります。餞別の言葉に応えて修道士がくれた本のタイトルは、あろうことか”地獄”。1秒も画面に映らない”HELL"の文字が、バーセルメスの心の地獄を百万言の言葉で語るよりも鮮明に伝えます。バーセルメスのちょっと不思議な表情も良い。切れ長の目は感情をあらわさない。阿片の煙管を持って、じっと見つめるその目のなんと言う虚しさ。

一方リリアン・ギッシュ扮するルーシーの心も、度重なる虐待でズタズタどころかすでに死んでしまっているように見えます。ぼろぼろの服を着て、背中も丸く老婆のよう。指で唇を曲げないと笑顔が作れない、それほどの心の痛みをどう推し量ればいいものか。表情のなくなってしまった顔でふらふらと歩くリリアン・ギッシュの姿は、もうそれだけで観客の胸を突き刺し言葉を失わせます。父を演じるドナルド・クリスプの名演技も彼女の悲惨を引き立てます。にほんブログ村 映画ブログへ


初めてバーセルメスがギッシュを見かけるシーン。ルーシーは父に虐められたあと、それでも父との日常生活を送るために、死んでしまった母の形見で買い物にいきます。逃れることの出来ない日常生活にすりつぶされてしまいそうな残酷なシーン。そして、店の中から彼女を覗うバーセルメスの姿。ここでも、グリフィスは煙管をもつバーセルメスの能面のような顔をジーっとスクリーンに映し出します。深く絶望した魂がすれ違う瞬間はもう言葉なんぞ要らない。説明なんて野暮なことしたくもない(しなきゃいかんのですが)。

グリフィスは、5年間で500本近い短編映画を監督し、1915年に「国民の創生」でそれまでの映画の常識を全て覆します。当時のお金で数千万ドルを稼ぎ出し、さらに大規模な「イントレランス」を製作。8時間という上映時間に関して製作会社側と衝突し、大幅に時間短縮した結果、興行的に大失敗。その後、メアリー・ピックフォードやチャップリンと「ユナイテッド・アーティスツ」社を設立して製作したのが、この『散り行く花』。大作志向の人なのかと思いきや、良くぞこれだけの繊細な映画を撮りましたね。

個人的には、『国民の創生』は、歴史的意義のある重要な作品ながら、現代の映画を見慣れた目からすると多少荒削りな、いかにも”むかしむかしの映画”という感じがしました。が、『散り行く花』は、映画的な空間として今見てもまったく違和感なくすっきりと入り込むことが出来ます。登場人物の設定、演出、演技、映像(川べりの貧民街に霧がかかる美しさ!)、画面構成などどれをとっても素晴らしい。現在まで見渡しても観客に訴えかける力においてこれを越えるものがいくつあるだろうか、と考えてしまいました。

ベッドに横たわる少女の手にすら触れず、着物のすそにそっとキスするバーセルメス。人形を抱き、血の流れる唇に指で微笑みを作ろうとするギッシュ・・・名場面名場面名場面。映画の至福はここにあり。★★★★★

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詳しい作品情報はこちら
    ⇒散り行く花@映画生活
    ⇒IMDb(英語)


監督:D・W・グリフィス
原作:トーマス・パーク
脚本:D・W・グリフィス
撮影:G・W・ビッツァー
出演:リリアン・ギッシュ
   リチャード・バーセルメス
   ドナルド・クリスプ



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それは言えてますね

グリーンベイさん、
>考えてみると映像の力を見る方も逃さず、目に焼き付けているから
これ、言われてハタと気がつきました。サイレント映画を見るときって、確かに映画に対する向かい方が違うんですよね。隅々まで目を配りながら、しっかり自分の中でストーリーを作り上げながら観ている感じ。一回観ただけでも自分なりの見方で心に染み込んでるんですよね。おっしゃるとおりだと思います。
グレタ・ガルボの『肉体と悪魔』はご多分に漏れず未見でございます。で、今amazonで注文してしまいました^^;感想は近々。。。

リリアン・ギッシュ

カカトさん、こんばんは。やはりこの映画はリリアン・ギッシュの可憐さが特筆もの。ですが、個人的には悲惨すぎてとてもかわいいと言えないんですよね。かわいいと言えば先日見た『国民の創生』のギッシュの登場シーン、猫なんか抱いてね。にこっと笑ったりちょっとフクれた顔をしてみたり、ぴょんぴょんしてみたりと、ああオヤジ殺しだなぁ。あの可憐さではつらつとした少女から薄幸の美少女まできっちり演じ分けるんだから凄いもんです(allcinemaがロリコンといいたくなるのもわからなくはない・・・)

ぐるんぐるん

回るシーンは凄かった・・。その直前のギッシュが連れ去られたことを知ったバーセルメスが、頭をガクガクするシーンと共に強烈に印象に残りましたよ。実はバーセルメス、”オールド・ムービー・パラダイス!”をはじめた頃にハワード・ホークスの『コンドル』で見てたんですよ。当時は全然そんな有名な俳優だとは知りませんでしたけど。ちなみに『コンドル』って、バーセルメスは出てるは、リタ・ヘイワースはデビューするは、結構大変な映画だったようですね。(記事こっちに移そ)

サイレント映画考・・・。

 FROSTさん・・・今日は。
うーーーん。サイレント映画には・・・現在でも評価の高い作品が沢山あることを先に述べました。仰るようにD・W・グリフイス作品には「国民の創世」(15)や「イントレランス」(16)のような大作もあれば・・・この「散り行く花」(19)・・・<胸をしめつけられるような思い・双葉十三郎氏・評>のような繊細な名作もある。
グリフイス監督に見出された名花リリアン・ギッシュ嬢のこの作品での可愛らしさ・・・故にイジメ抜かれる姿に観るもの皆涙した・・・。アメリカにも心中ものがあるんですね・・・。
映画少年自身が気が付いたことなんですが・・・所謂
名作・秀作は再見を繰り返しているが・・・サイレント映画はみんな初見で終っているんです。(笑)考えてみると映像の力を見る方も逃さず、目に焼き付けているからでしょうね・・・?。
FROSTさん・・・サイレント映画でグレタ・ガルボ嬢の「肉体と悪魔」(27)はご覧になっていましたか・・・未だでしたら機会がありましたら是非に・・・。後のガルボ嬢にはない・・・それはそれは神々しいまでの美しさ・・・この世のものとも思えぬ美しさを観られますよ・・・。

トラックバックしました~

リリアン・ギッシュはとてもかわいくて大好きです。
彼女が「サイレント映画と音楽は世界言語だ。」と言っていたのが印象に残ってます。

リチャード・バーセルメスは全然中国人に見えませんよね・・。

この映画のリリアン・ギッシュはとことん不幸な少女でしたねぇ…。
父親に「笑ってみろ!」と言われて、口の端を手であげる。
そして、もう父親から逃げたい一心でクローゼットの中に隠れますが、もうグルングルン回るシーンが印象に残っています。
リリアン・ギュシュは、リチャード・バーセルメスが共演者の中で一番美しい人だと言っていたのをなんか本で読んだなぁ…。
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