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#0017『吸血鬼ノスフェラトゥ』F・W・ムルナウ監督 1922年ドイツ

ノスフェラトウ

”NOSFERATU: EINE SYMPHONIE DES GRAUENS” にほんブログ村 映画ブログへ

監督:F・W・ムルナウ
原作:ブラム・ストーカー
脚本:ヘンリック・ガレーン
撮影:ギュンター・クランフ/フリッツ・アルノ・ヴァグナー
出演:マックス・シュレック
   アレクサンダー・グラナック
   グスタフ・フォン・ワンゲンハイム
   グレタ・シュレーダー

<作品関連情報>
    ⇒IMDb(英語)

ヴァンパイア映画の本家本元。もっとも、後の『魔人ドラキュラ』('31)などと同じくブラム・ストーカーの原作ながら、正式な映画化権に基づく製作ではなかったため、登場人物の名前などが原作とは異なっているのだそうです。また、ブラム・ストーカー未亡人からは二度訴えられて二度とも敗訴。全てのフィルムの破棄を命じられたそうですが、幸いなことにヒット作として広く世間に流通していたため事なきを得たということでした。

ストーリーは、ブレーメンで不動産を商うハーカーが新しい屋敷を探すオルロック伯爵のもとに向かうところからはじまります。ハーカーの愛妻ニーナは鋭い直感で夫の危険を察知し、自らは精神のバランスを崩して夢遊病になりながらも、空間を越えてハーカーに警告を送ります。妻の助けもあってオルロック伯爵の正体を知るハーカーですが、オルロックはハーカーを城に閉じ込め、彼の持つ写真で見初めたニーナのいるブレーメンへと向かいます。

自らの棺桶を携えて旅を急ぐオルロックが通った後は文字通り死人の山。何も知らず棺桶を積み込んだ帆船デーメーテル号では、ペストと吸血によりあっという間に船員が全滅。最後に残った船長も瀕死の状態で港に到着します。

オルロックがブレーメンに上陸すると、たちまち疫病が蔓延し次々に住民が倒れていきます。街に災いを撒き散らしながら、オルロックはハーカー家の向かいの屋敷に陣取り夜な夜な窓辺に立ちニーナの様子を監視します。

そこに、やっとの思いで城を抜け出してきたハーカーが戻りニーナと再会。愛する夫が戻った歓びもつかの間、ニーナは彼が持ち帰ったドラキュラの書を読み、向かい家のオルロックの存在に気づきます。その書には、吸血鬼を倒すには清らかな魂を持つ女性が、自らの血を捧げて夜明けまで怪物を留め置くしか手段はないと記してあるのですが・・・。

1910年代~20年代のドイツ映画と言うと必ず”表現主義”という当時の芸術的志向の影響が述べられます。映像への影響と言う面から表現主義を語ると、”人間の内面の主にマイナス面の感情を外面に現れるものとして表現する”ということのようですが、その観点からすると『吸血鬼ノスフェラトゥ』のどのあたりに表現主義の影響が見て取れるのかあまり良く把握できませんでした。

実は、同時に、かの『カリガリ博士』も入手しておりまして、まだ通しては見ていないのですが、例の有名なセットなどはまさになるほどと表現主義の影響を納得できるのです。このあたりはもう少し勉強して再度鑑賞したいと思います。。

この作品でまず目につくのは、マックス・シュレックが演じるオルロック(ドラキュラ)伯爵の造形。ひょろりとした長身に長い手足。ギョロリと丸い目、とがった耳にスキンヘッド。枯れ枝のよう変形した指と爪。純粋なモンスターデザインとしてこの造形は実に素晴らしく不気味。恐らくは影の映り方まで計算されているでしょうねぇ。誕生して80年以上が経った今でも一度見たら忘れられないほどのインパクト。当時の人々の目にどれだけ衝撃的に映ったかは推して知るべし。

ただし、その造形の素晴らしさのわりに、吸血鬼自身が発する恐怖感はさほどは感じません。そのあたりは、後にベラ・ルゴシやクリストファー・リーが演じたドラキュラ伯爵の方が圧倒的に怖いと思いますね。

現在の目で見ると作品の作り自体もいかにも昔風で、パタパタと走る馬車や、自分の棺桶を抱えて屋敷に急ぐオルロックの姿などは逆にコメディチックにすら見えます。おそらく当時の観客の目から見ても、”恐怖におののく”という類の映画ではなかったのではないかと思います。

しかし、この映画は表面に現れている吸血鬼の恐怖の、一枚下あたりのところでなんともいえない不安感を感じさせる、実に”いやな”映画です。いやな感じの源は、一つには原因不明のうちに危機が蔓延し、事態が深刻になっていく、逃げ場もなく追い詰められていく一種の閉塞感。。。そして、もう一つは誰一人として危機の真相を知らない中で、唯一それに気づいてしまう若い夫婦の救いのない立場。。。

船員が皆殺しになったデーメーテル号においても、広がる疫病に大混乱となるブレーメンの町でも、惨禍の実態についてはまったく映像に描かれません。しかし、時々現れる、例えば、町の通りを棺桶が等間隔に並んで運ばれていく様子をニーナが部屋の窓から見かける映像などは、観客の想像力をギリギリと絞り上げるような怖さがあります。そして、要所で姿を見せるオルロックの不気味な姿。この吸血鬼の姿形は、それ自身で恐怖を感じさせるためのものではなくて、彼がひき起こす惨事の悲惨さを想像させるためのものといえるかもしれません。

おそらく、観客がみなそれぞれ想像しうる限りの惨事を思い描いたでしょう。船内でハンモックに眠る船員ののどに深夜忍び寄るオルロックの姿、ブレーメンの街で、父が死に、母が倒れ、残されて食べるものもなく、泣き続ける子どもたちにもペストの兆候が現れ・・・。全て想像であります。

やはり、今回も痛切に感じたのは、サイレント映画が、観客の想像力によって成り立つ映画である、ということでした。当時の表現技術の限界からすると、描こうとしても描けないものがたくさんあった。しかも映像だけで物語を観客に理解してもらうには、観客側の想像力の助けを借りざるを得なかった。その想像力をかきたてる技術が研ぎ澄まされたものがサイレント映画の傑作であるのです。

トーキーでも、観客の想像力を喚起することが不可欠であることは変わらないと思います。しかし、今の時代はあまりに技術が発達しすぎて(また倫理的もゆるくなりすぎて)、あらゆる物事を克明に語ることが容易になりすぎました。そのために行間(画間か?)で想像力を喚起することがかえって難しくなってしまったのかもしれません。

冒頭の、小さな花束を贈り贈られして無邪気に喜んでいる若い夫婦の映像と、ラストシーンがだぶって、夫婦の運命の悲しさも痛切ですねぇ。見事でした。★★★★☆

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No title

はじめまして。
吸血鬼ノスフェラトゥのことを調べていて、川越名画座のことを知りました。
聡明で、自分の言葉で書かれている確かな感覚の記事を読ませていただきました。
コメント投稿は初めてです。

トムさん、こちらにもありがとうございます

ノスフェラトゥ=ストーカー・・大いに納得ですねぇ。この作品の吸血鬼は、それだけ観ているとなんだかコミカルに見えてくるのですが、その原因はサイレント特有の早回しに加えてストーカー的要素も大きいと思います。
映像の美しさには今回触れませんでしたが、オルロックが引っ越してきたハーカー家前の古い屋敷の造形(あの窓の多いやつ)などはとても素晴らしかったと思います。

FROSTさん、連続のコメントすみません、こちらにもTBさせていただきました。
素晴らしい作品でしたね。

>観客側の想像力の助けを借りざるを得なかった。その技術が研ぎ澄まされたものがサイレント映画の傑作・・・。
本当におっしゃられているとおりで、制約が多いことが優れた映画技術を生み、不足在る表現から観客が想像力をたくましくする。映画の素晴らしさは、そういったものでなければなりませんよね。
わたしもいつも勝手な想像で映画を楽しんでいます。
この作品の吸血鬼はニーナに惚れ込んだストーカーのように見え、何ともエロティックな感覚になってしまいました。吸血鬼の造形がベラ・ルゴシやクリストファー・リーと異なり醜悪であるが故、益々そういう変態の在りようが浮かんでしまったのかもしれません。でも、フィルムが古いにもかかわらず、映像の美しさは秀逸でしたね。
では、また。

グリーンベイさん、こんばんは。

穴、穴・・・穴探して隠れなきゃ・・。人生においては我儘子供で、かみさんには一番手間がかかるとぼやかれてばっかりで・・・。
・・などということはさておき、サイレントですが、DVDだと本当に有名どころしか手に入りませんね。500円DVDですらほとんど出てません。今13本記事にしましたけど、後10本前後で弾切れになりそうかな。他は図書館のVHSに期待。ルネ・クレール『幕間』『眠るパリ』とか 阪妻の『雄呂血』とかマニアックなのが置いてあるのは見覚えてます。近々行って調べて来ます。
テーマを決めて見た方が、より多く映画のことを学べるかなと思ってるんですが、今のところこのやり方気に入ってるんですよ。しばらくはこんな感じで続きますのでよろしくお願いします^^。

「吸血鬼ノスフエラドウ」・・・。

 FROSTさん・・・今晩は。
うーーーん。サイレント映画の名作を次々とアップされていますが・・・舌を巻いています。映画にしてこの通りですから・・・人生においても拘りの人なんでしょうね。尊敬しています。。前に「麦秋」で、原節子嬢が北鎌倉のホームでの立ち姿にハットした旨お聞きして・・・今でも強い印象を持っています・・・その感性の鋭さに感じ入っていました。そんなFROSTさんが次に目を付けるサイレント映画は何だろうと楽しみにしている・・・。(笑)
うーーーん。この「吸血鬼ノスフエラドウ」(22)は、この種の映画でも傑作として評価が高い作品ですね。映像が筋立てを語るサイレント映画に原作の構成が又これがハマッテいること、そしてこの作品が「光と影」をテーマにしていることもサイレント映画として十分相乗効果が発揮されている・・・これは画期的な作品であることに異論の無い所でしょう・・・。
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