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#0022『群衆』キング・ヴィダー監督 1928年アメリカ

gunnsyuu

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監督・製作・原案:キング・ヴィダー
脚本:キング・ヴィダー/ジョン・V・A・ウィーヴァー/ハリー・ベーン
撮影:ヘンリー・シャープ
出演:エレノア・ボードマン/ジェームズ・マーレイ
    バート・ローチ/エステル・クラーク
    ダニエル・G・トムリンソン/デル・ヘンダーソン
    ルーシー・ボーモント/フレディ・バーク・フレデリック
    アリス・ミルドレッド・ピューター

<作品関連情報>
    ⇒IMDb(英語)

ネタバレしていますのでご注意!

さて、いざコメディへ!と言うことでしたが、まだ見るべき作品が手元に一つ残っていました。キング・ヴィダー監督の『群衆』。

映画にはいろいろなテーマがありますが、結局は普通の人間が余り経験しないようなことを体験させてくれるもの。しかし、特に才能もない普通の人間が平凡な人生を送っていくことにすら四苦八苦する姿は極めて現実的。しかもこの作品のメッセージは本当に明るい肯定的なものなのだろうかという疑問が残ります。

少年時代に父を亡くしたジョニー・シムズ(ジェームズ・マーレイ)は立身出世を夢見てニューヨークにやってきて、保険会社の事務員として仕事を始めます。彼がやってきたニューヨークのシーンで、キング・ヴィダー監督はかなりの時間と手間ひまをかけて”群衆”を映像化しています。空撮を交えたハイ・アングルで映し出す人々、車、船、そして立ち並ぶビル。特撮でビルの壁をカメラがなめるようにのぼり、ある部屋の窓から内部に侵入すると、そこにはたくさんの机を並べて仕事をする人・人・人(冒頭写真)。二段構え三段構えでしつこく“群衆”を描いており、その意味するところは世の中の大多数と同じ変わり映えのしない平凡な人生。ジョニーはそんな群衆に冷たい目を向け馬鹿にしながら、自分だけはそうならないと信じています。上司だか同僚だかが、「群衆に捕まらないためには才能がいる」とつぶやきます。にほんブログ村 映画ブログへ

彼は、同僚の紹介で出会ったメアリー(エレノア・ボードマン)と早々に結婚し家庭を築きますが、彼女の兄たちとは折り合いが悪く気まずい雰囲気。ちなみに、ジョニーとメアリーが初デートで遊ぶ遊園地の光景は、登場するアトラクションから俳優のアクションまで、以前アップした『あれ』(‘27)と同じ。クララ・ボウとアントニオ・モレノがまったく同じシーンを演じていました。パクッたのでなければシーンを買ったということでしょうか。そんなことがよくあったのかな?それはさておき、ジョニーが自宅でウクレレを弾いて暇をつぶしている姿が出てきます(後にもう一度同様のシーンあり)が、努力をせずにお気楽に生きている姿を暗示しているように見えます。ジョニーは、根拠のないエリート意識が旺盛なものの、プライドと繊細さが邪魔をして妻の家族とも打ち解けることができず、地道な努力もあまりしない人間。そう描かれているようですね。

これで、ジョニーの先行きは大体読めますね。周りの人間をバカにしながらウクレレを弾いて適当に毎日を生きているうちに、彼の人生はどんどん先細りになっていきます。自分には才能があるのだ、いつか出世して群衆から抜け出すのだと言い続けながら、すでに同僚にも出世競争で水を開けられているジョニー。

それでも自分の人生に先がなくなってきていることの自覚はなかなかできない。実際こういうシチュエーションは何かのきっかけで一気に状況が悪化するもの。彼の場合は不幸な事故とそれにより退職したことがきっかけでした。出世しないとはいえ安定していた職を捨てた彼の人生は、一気に下り坂。

それ以降仕事についても長続きせず、収入もなくなりメアリーは洋裁の内職を始めます。義理の兄たちがメアリーのために彼に仕事を世話しようとしますが、「くだらない仕事は出来ない、もうすぐ全てうまくいく・・・」といってそれを断るジョニー。ついにメアリーも彼を見捨てて出て行くことになり、彼は全てを失って自殺を図ろうとします。しかし、最後まで彼を信じてくれたのは愛する息子でした。幼い息子に勇気付けられ、ついに地道に毎日を努力して生きていくことの大切さに目覚めたジョニー。彼は日雇いのサンドイッチマンの仕事を全力で勤め、日当の小銭を握り締めてメアリーのもとに戻ります。にほんブログ村 映画ブログへ

さて、ここまで感動的で我が身につまされることも多々あり、ハリウッドの初期ゴールデンエイジを象徴する道徳的で素晴らしいストーリーでした。しかし、ラストシーンを見てすごく引っかかるんですよね。ラストでは、メアリーとよりを戻したジョニーが家族一緒に喜劇芝居を見に劇場に来ています。貧乏ではあるものの大切なことに気づいたジョニーと、そんな彼をもう一度受け入れたメアリーは底抜けに楽しそう。ジョニーのとなりには義理の兄も同席しており、彼ともわだかまりなく大笑いしあうジョニー。彼ら家族をアップで捉えていたカメラがずーっと引いていくと・・・。

そこには同じようなスーツを着て同じように笑い転げている人々の姿が延々と続き、ジョニーたちはその中に埋もれて、ついには見えなくなってしまいます。

まっとうに考えれば、「群集の一人としてまじめに生きることはで尊い事なのだぞ」という善良なメッセージの絵だと思います。が、あまりにこの劇場の群衆が同質かつ大量なんですよね。ずーっと見渡す限りおんなじような人間。その中に完全に埋没していく主人公たち。力を持っているように見えた義理の兄ですら結局その大群衆の中に埋もれていきます。特殊撮影しているようですが、善良なメッセージを伝えるためにここまで徹底的に群集を描く必要があったのでしょうか。映し方見せ方に、どうしようもなく監督の悪意を感じてしまうんですよね。「どうせさぁ、抜きん出ようとがんばっても無駄なんだからさ、大人しく群衆の中で幸せを見つけろ。けっこういいもんだぞ・・・」という悪意。

真意はわかりませんが、最期の10秒でものすごく不安にさせられた映画でした。監督が悪意を意図していたとすると完璧すぎるほどインパクトのあるラストシーンで、それもひょっとしたら良いかなと思えてきたのでした。★★★★☆

ちなみに、主人公を演じたジェームズ・マーレイはこの作品で評価されスターになった、”群衆から抜け出した”ものの、スターのプレッシャーに勝てず酒に浸り、35歳で身元不明死体としてハドソン川から引き揚げられたそうです。なんともはや・・。

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大変遅くなりました!

グリーンベイさん、コメントいただいてたのにすみません。
この映画のラストはハッピーエンドなんでしょうか?結局いろいろ考えているとそこに行き着くんですよね。グリーンベイさんのおっしゃるとおり、若い人たちと話すと「自分は他とは違う」という”気”を感じることが多い。かくいう自分もやはり若い時はそうでしたね。「将来はサラリーマンになりたい」と言う子供を見かけないところをみると、それは人間の本能的なものなのかもしれません。
この映画から学んだこと・・・。実はこのジョンのものの考え方は自分に近いところがあるのですよ。日々いましている自分ですが。一番大事なのはどんな方向にしろきちんと積み上げることですね。経験、知識、技術、人間関係、家族関係などなど。積み上がっていない人生は悲惨です(戒め戒め)。
この主人公も、最後にピエロの姿になって、きちんと積み上げることの大切さを学んだんだと思います。仕事も妻子との関係も。しかし、そう思うためになおさらラストシーンが良くわからなくなるんですね。人生で一番重要なことを学んだ主人公が、海のような群衆の中に紛れて見えなくなってしまうラストシーン。確かに怖い映画です。

「群衆」・・・。

 FROSTさん・・・今晩は。
うーーーん。キング・ヴイダー監督作品「群衆」(28)ですか・・・うーーーん、唸っちゃいます。
FROSTさんの解説を読んで・・・監督の訴えたかったテーマは何だったんだ・・・と考えるうちに・・・この作品は哲学と云うか、群衆として生きる人間のあり様を諭していると考えるようになっている・・・。
人間、ひとり一人は総てオレは出来る人間だと密かに思っている・・・群衆よりましな将来を約束されている人間だと思い込んでいる節がある。(笑)ある哲学者は「人間の言動の根源は・・・突き詰めるとマグマのような<嫉妬心>に行き着く」と・・・。現在、FROSTさんは企業戦士としてご活躍でしょうが・・・この映画から何かヒントを学ばなかったでしょうか・・・。淀長先生は良く「映画に人生の多くを学んだ」と云っていたが・・・。
映画少年は、こんな平板なストーリーを作品として仕上げたキング・ヴイダー監督の演出の冴えに感服するばかりである。ジョンとメアリーというありきたりな名前をもつありきたりな夫婦が映画館に向かう・・・同じような夫婦が同じように向かう・・・それが群衆となって同じように群衆の中に埋没していく・・・。現代にも通じる真理を突きつけている怖い映画ですね・・・。
メアリー役のエレノア・ボードマン嬢は監督の奥さんですね・・・ジョン役は名のジェームス・マーレイですが10年後、自ら命を絶ったとある・・・。
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